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希望の国


見えない戦争――
ただ、大切なものを守りたいだけ。
東日本大震災から数年後の日本のとある町。
小野家と鈴木家は隣り合い、つつましくも幸せに暮らしていた。 
ある日、大震災が発生、それにつづく原発事故が、生活を一変させる。
原発から半径20キロ圏内が警戒区域に指定され、強制的に家を追われる鈴木家と、道路ひとつ隔てただけで避難区域外となる小野家。
そんな中、小野家の息子・洋一の妻・いずみが妊娠、子を守りたい一心から、放射能への恐怖を募らせていく。


震災から2年が経とうという今日、ずっと観たかったこの映画を観た。
園子温監督が東日本大震災後の福島県の状況をベースに作り上げた作品、『希望の国』。

震災によって平穏な日々が突如として崩れ去った、世代の違う3組の男女を中心として描かれる話である。
その3組の男女の中でも、夏八木勲と大谷直子演じる夫婦の生き様は色々と感じるものがあった。
息子夫婦のみを避難させ、自分と妻は育った土地に残る決断をした夏八木勲演じる小野泰彦。
息子夫婦が去ったその後も、大谷直子演じる認知症を患う妻・智恵子と穏やかな生活を続ける。
しかし、避難区域の拡大により、強制避難を余儀なくされる泰彦夫婦。
妻と息子を愛し続けた泰彦が、避難を余儀なくされてとった最後の決断に胸を打たれた。

タイトルは『希望の国』であるが、最後まで明確な「希望」は描かれていないと思う。
描かれているのは、自分の力では逃れられない不条理な現実を突き付けられ、それでも前に突き進もうとする人間の意志である。
前に進んだ先に光があるとは到底思えない状況。それでも人間は歩みを進めることができるはずだということを描きたかったのでないかと思う。
その人間の底力とでもいうべきものを指して、「希望」という言葉を使用したのではないだろうか。
この映画に込めたメッセージこそが、園監督自身が人間に抱いている「希望」ではないかと感じた。

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