#拾弐 寝ぼけの極み

その日は大学の2限に出るため、遅くても朝9時には起きる_はずだった。

目が覚めたときには赤みがかった空が1日の終わりを物語っており、私は生きる価値が無いことを悟った。それも束の間、私には夕方5時からアルバイトという生きる価値があるのを思い出し、恐る恐る時計に手を伸ばす。6時3分。

ああ、何故こんな日に限ってスマホの電源を切って寝てしまったのだろうか。上司から鬼電がかかってきているに違いない。もう電源をいれたくない。本気で自(規制)を検討した。

このように私は完全にパニックに陥っており、台所で食事の支度中の母を見つけるなり泣きついた。これが最後の晩餐となるであろう。
「母さん、寝すぎて5時からのバイトに1時間も遅れちゃった。どうしよう」
すると母が
「え?5時から働きに出ることなんか今まであった?」
と訝しんだので私は悲しくなった。今までにだって、4時半くらいにチャリに乗って出勤していたじゃないか。母は思った以上に私のことを見てくれていないらしい。やはり(規制)するしかない。
しかし私は次の瞬間、居間で茶漬けを食べていた父の一言に救われることになる。

「今、朝やで」

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