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ポートレート写真について(2024.4)

こんちは。大阪で写真を撮ってる鷲﨑です。
今回は最近撮ってるポートレートについて。


はじめに

ポートレートという言葉について、「あらかじめ連絡を取り、撮ることを合意した人と撮った写真」としたい。
僕の写真を見てもらった方に「ポートレートじゃない」、「人が背景になってる」などの感想をもらったことがあるけど、ここでは何がポートレートなのか?という話はしないつもり。(正直わからん

おおざっぱにまとめると「ただ『写真』が撮りたい」、ということを書いてます。今思ってることなので、これが正しいわけでもなく、今後変わっていくかもしれませんので、そこんとこよろしく。

ポートレートを撮る経緯

写真を始めたころはスナップだけ。写真のいいところのひとつとして、ひとりで完結するというのがある。気が向いたときにカメラを持って出掛けりゃ何かしら撮れるし、しばらくはそれで満足していた。
ただ、特に写真を撮る人との繋がりも無く独りでふらふらしてるのもなんとなく寂しくなってきたところで、PiXCypher(以下PXC)というオフラインコミュニティに入ってみた。

PXCでは撮影企画もやっていて、僕が初めて被写体を撮ったのは「ヌード撮ってみよう」という企画(最近はお休みしてるみたい)。そこでヌードはエロいもんじゃないし、人の形の面白さなんかを撮ればいいってことを知った。
※被写体…大坂あいさん、ディレクション…高野ぴえろさん
(真面目に書いてるけど、初めてでかなりキョドっててみんなから笑われちゃったわよ)

2021.6

他に、今も年3~4回は開催してる「煙ZINE」というファッションスナップの企画も面白い。抄煙さんという服好きのメンバーが、募集で集まった被写体を自前の服でコーディネートして、それをカメラマンが撮るという企画。
ここでは被写体自身を撮る必要はなくて、服を撮ることがメイン。これも新しい発見だった。

2021.8

こういった経験を重ねつつも、根が怠惰にできてる人間なので、積極的に被写体を探すこともせず、ふらふらとスナップに出向く日々。
たまにポートレートの機会に恵まれたりすることもあったけど、撮りたいテーマがあるわけでもなく、スナップの方が圧倒的に楽しかった。

そんな感じで2023年9月に西成のスナップ写真をまとめた個展を開催。2024年2月には100冊限定のブック「釜の道」を完売。ここで気分的にも一区切りがついた。何かを始めるには何かを終わらせないといけない、みたいなことはよく言うけど、まさにそんな感じ。
西成写真も続いてるわけだけど、新しいことをやるにはちょうどいいタイミングで、これまでそんなに撮ってなかったポートレートを自分なりにちゃんとやってみようというところ。

撮るときに意識していること

まずはテクニック的な面を2つ。

①構図

被写体の方と撮るときは、スナップと違って構図を考える時間があるからそれを大事にしてる。周辺に何があるかを観察してパズルのように当てはめていく。

特に意識してるのは引いて撮ること。
寄りの写真の方がインパクトはあるけど、どうしても一辺倒になってしまうことが多い。写真は記録としての側面もあったりするし、いろんな情報を絡めながら撮れたらさらに面白くなるはず。

主に指示するのは立ち位置で、「もうちょい右、あー行き過ぎ…すみません、あと半歩左で…」みたいなことはよく言ってる。カメラのレンズと被写体の目は違うものを見てるからなかなか伝えづらい部分もあり、多くの人を困らせてる自覚はある。しかも「ここはちょっと違いましたね」「ここはムズかったすね」と場所のせいにして諦めることも多かったり…(反省)。

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そういえば、以前PXCの企画でmanimaniumさんの写真をセレクトしてZINEを作る企画があった。その際、僕が作ったものを本人に見てもらうと「漢字やな」と言われたことがある。ニュアンスや感覚で組むというより(これは「ひらがな」)、写真の要素を抜き出して言葉で説明がつくような組み方をしていた。

ポートレートだと写真単体でも「漢字」感はあって、「へん」やら「つくり」やらで構成されてる気がする。そういった部首が被写体であるか、周辺情報であるかはまだこれから分析していきたいところ。

「ひらがな」で撮れる人を羨ましく思ったりもするんだけど、ひらがなというのは漢字を崩して出来たものだし、まぁ「漢字」で撮れたら「ひらがな」でも撮れるだろうと思ってる。(…何の話をしてんだか…)

②光と影

日中の屋外でポートレートを撮るとき、晴れた日(直射日光がある日)しか撮りたくない。
晴れてると光と影がくっきりしていて、被写体がどこに立てばいいか正解(…とまではいかなくても少なくとも不正解)が分かる。光や影を利用することで明確に被写体に目が行くような写真が撮れるから、どう撮ればいいのか困ることがない。
ある時は順光で、ある時は影の中に入り、ある時は光と影の境い目だったり逆光だったり。

逆に、曇りの日や屋内の窓から入ってくる直射日光ではないやんわりとした自然光は苦手で今後の課題。克服したいところ。


次にマインド的なことを2つ。

③被写体自身を撮ろうとしない

ここでは被写体=「モデルとして活動する人個人」としたい。

被写体撮ってるじゃんという意見はごもっとも。
ただ、できるだけ「写真」に留まろうとしている。抽象的なことだけど、撮りたいのは「写真」であって、被写体ではない。
「被写体を撮る」ではなく「被写体と一緒に、僕の写真を撮る」と表現すると分かりやすいかな。

スナップでできないことがポートレートではできる。
・人がいて欲しい場所に立ってもらえること。
・通行人にはできないポーズをとってもらえること。
そうやってひたすらに面白い写真を撮っていきたい。

面白い写真をとるためにこだわってるのは、場所選び。
被写体だけに注目しないためにも周りの環境を活かしたい。ひたすらスナップをしてきた経験があるから、あの場所に人がいたら面白いだろうなーという候補はいくつかあるし、その場で出会った場所も最大限に活かしたい。
(被写体の方から教えてもらうこともあったり)
様々な場所×様々な被写体で撮ることで、写真にバリエーションが増えるし、自分が撮ってて飽きないというのもある。

あと思ってるのは人間という形が面白いということ。
自分の体について考えてみてほしい。
頭がある、頭にはなんか知らんが切れ込みがあって目とか鼻とか口とか耳がある、で、首で繋がった胴体がある、胴体からは手足が2本ずつにょきっと伸びてて、さらに5本ずつ指がある。それがわりと自由に動かせるらしいし、そこらじゅうから毛まで生えてる。
なんかもぞもぞしてこない?俺だけか?…という感じで、人体そのものも撮っていきたい。

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以下読み飛ばしてOK(「被写体を撮る」って?みたいな話)

被写体を撮ろうとするなら容姿や人間性を撮ることになるんだろうけど、いまいちモチベが湧かない。ぶっちゃけそこまで興味がないってのが大きいし、他人のプライベートにズカズカ入っていくのも気が引ける。(ものは言い様で、どんな人でも写ってもらえたらありがたいし、写真の中では容姿性格関係なく肯定できる、みたいに言うこともできたり…?

それに人間性を撮るなら、もっと深い関係の人が撮った方がいい。人-人が築く関係の中で得られる写真はすべて祝福されるべきもので、他人の評価はそれほど重要じゃない気がしてる。そこからさらに写真表現に昇華されているものは見ていて面白いけど、お互いの人生を表現に落とし込むのは勇気が要ることで、僕にはそれができない。
あくまでカメラマン-被写体の関係の中で方向性をすり合わせながら、写真という目的に向かう方が性に合ってる。

あと容姿だけを好んで撮って公開するのはダサいってのもある。プライド、大事よ。自分の叶わぬ性癖をおおぴっらにして何が楽しいんやろ、みたいな写真は見る側も恥ずかしくなっちゃうし。

面白い生き方をしている人や何かをしている人(職人、アーティスト、スポーツ選手などなど)だったら興味も湧いてくるんだけど、被写体活動をしていてそれを表に出す人は少ない印象。被写体本人にステートメント(強いバックボーン、表現したいテーマ)があるといろんな人に撮られるのが難しくなったり、逆にいろんなカメラマンに撮られていろんな自分の側面を見つけたいって人もいるのかなーとか。完全に想像。

ただ、何者かである人を撮ったとき、それは「僕の写真」ではなくなる気がする。あくまで「(僕が撮った)相手の写真」でしかない。相手に貢献する気持ちがあれば喜んで撮るし、そういう意味で撮りたい人はたくさんいる。

もっとラッパー撮りたい

④感情的なものをできるだけ排除する

たとえば「ショーシャンクの空に」で脱獄後雨の中喜びを噛み締めるシーンがある。雨の中で人が立ってると、どちらかというと悲しいのかな?と思ったりするけど、写ってる人はかなり喜んでて、こいつは喜んでるんだな、というのが分かる。
「MAD MAX Fury Road」では、フュリオサが悲しみに暮れるシーンで砂漠に風が舞うシーンがある。
どちらも表情に浮かぶ感情をより印象的にするために背景描写があるわけだけど、どんな環境にいても表情がそのシーンの印象を決定づけてしまう感じがする。

僕はどちらかというと逆で、環境をメインしながら被写体のあり方を探ってる。
感情をメインにしないのは、これまでいろんな写真を見てきた中で、感情を揺さぶられたことがほとんど無かったからかもしれない。
それに、いろんな人を撮ってて一体誰の感情をピックアップすればいいのかわからないし(そもそも知らないし)、僕自身は撮ってる最中は写真おもしれぇ~って気分なのでわりとテンションは高い。

表情はあまりに雄弁で、どうしても顔に目がいってしまう。スナップでもそうだけど、他にもっと見て欲しい細部があるし、作られた表情よりも案外無表情の方が複雑な情報を写す場合もある。

テーマ

テーマはまだ決まってない。
西成の写真も2年近くは何も考えずに撮り続けて、撮りたまった写真群を見て方向性が見えてきた。

撮り続けることで浮かび上がってくるテーマがあるはずだし、そこから取捨選択していっても遅くないだろう。
逆にテーマを先に決めると、「撮りたい」ではなく「撮らなければならない」ものになる。効率はいいかもしれないけど、バリエーションが減ってしまったり、義務化してしまって面白い写真が撮れないこともある。

ちなみに現時点で面白いかなーと思ってるのは都市化された街と人との組み合わせ。写真を撮るのも楽しいし、感情的なものも必要ない。きちんと言語化するところまではいってないけど、とりあえずメモ書きとして。

テーマができてきたら、ポートレートに限る必要もなく、他のスナップと組み合わせていくのも楽しいはず。
いろんな被写体を撮ってるからこれといった主人公はいないし、そもそも物語にする必要もない、でも何かを表現することはできるだろうからテーマに関しては今後の大きな課題かな。

今後のポートレートに関する活動予定

3月にコンビニのコピー機から印刷できるZINEを作った。
これを毎月やって、年末くらいに販売用のブックを作る予定。

コンビニZINEはコストもかからないし、小さくテーマを決めて手数を増やしていきたいと思ってる。
今のところ
・屋外撮り回(3月)
・部屋撮り回
・カメラマンとのコラボ回
・街での声かけスナップ回
・2人以上での撮影回
・セルフ(最終手段…)
あたりを予定してる。

カメラマンとのコラボ回は、シンプルに写真を出し合うか、なにか縛りをつけて同じ被写体にするとか、もっと言うなら同じ場所で撮ってみるとか、まだ具体的なことは決まってない。対談記事を載せるのも面白いかなーとかも思ったり。
他のカメラマンがどうやって撮影してるのか知らない部分が多いから、勉強するという意味でも相手が撮ってるその場にいたい。一緒にやって頂ける方がいましたら、ぜひお声がけください。

街での声かけスナップポートレートも全然やってないから頑張りたい。頑張ってどうにかなるのか知らんけど、ZINEができてページが少なかったら察してください()。

あと、シンプルに撮影に協力していただける被写体の方も募集してます。性別、経験は問いません。お気軽にDMまで。

ではでは。また次のZINEでお会いしましょう。

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こちらからも写真をご覧いただけます。



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