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個展「西成」までの手記 その1
8月1日。個展が決まるとソワソワして居ても立ってもいられない。そういうときはやっぱり写真を撮るに限る。西成に向かった。
実は最後に西成に行ってからしばらく経ってしまっていて、慣らしも兼ねてのんびり歩く。
夏。暑い。西成では上裸で歩いてる人、寝っ転がってる人も少なくない。誰に迷惑をかけてるわけでもない、そんな自由さも魅力のひとつだと思う。
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公園で休憩してるとおじさんが寄ってきて、この辺トイレないか?と聞いてくる。そこにありますよ~と答えるが、どうもそのトイレにトラウマがあるようで行きたくないらしい。そんなにトイレ事情に詳しいわけではないので流してたら、なぜか立ションに誘われる始末。とりあえず一緒に来てくれと頼まれるので着いていく。
聞くところによると、神戸からチャリでやってきて飛田のあたりを歩いてきたらしい。あそこはすごいナァと熱心に語ってきて、立ション中(…なぜか知らないおじさんの立ションを見守るハメになってしまった…)は、俺のチンチンデカいか?と何度も確認された。僕のはそんなデカくないですよ~と適当な相づちを打ってたら、別れ際にジュースを奢ってもらった。おかげで熱中症にならずに済みました。感謝。
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日も落ちかけてきた頃、公園の近くで猫にエサをあげてるおじさんがいたので覗きに行く。誰にも彼にも話しかけにいけるような性分ではなくて、なんとなくニコニコして隣に行く感じ。
若い人と会うと昔の話をしたくなるんだろうか、昔は酷かった、みんな歳老いてしまった、誰も元気ないよ、にしても暑いナァ、…もうあの頃がピークやといろいろ話を聞いた。
今の西成には猫がいっぱいいて、あいつはオスや、お母さんは今日はおらへんな、あいつらは仲いいんや、猫同士にも相性があるんやな、そういや昔は犬もぎょうさんおったけど今はおらん、一匹だけたまにおっちゃんが連れてくるけどな、それだけや、猫もな保護団体とかあるやろ、あれが連れていきよんねん、しかもキレイな猫ばっか連れていきよんや、猫が生き甲斐みたいなおばちゃんもいはるからな、やから俺言うたったわ、そしたらそれからは全く来んようになったわ…と猫事情も聞けたりした。
そういえば俺のじいさんは大の猫嫌いで、お手製のパチンコで金属玉をぶつけてたっけな。
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また別のおじさんには、おう兄ちゃん、ここでそれはあかんで、とカメラを指摘された。そういうときは素直に謝るしかない。特に撮ってたわけでもなく、それでまたしばらく立ち話をした。
このおじさんは長崎から来たそうで、あ、僕、地元佐賀ですよ、え、佐賀のどこ?お寺かなんかないか?あー、やっぱ長崎のことは分かるけど、佐賀は分からんなぁなどと盛り上がった。すれ違って挨拶してたおじさんは沖縄から来たそうで、けっこういろいろな出身の人がいる。
15,6でこっちに来て、それから東京の山谷や横浜の寿町も渡り歩いてきたらしい。でもやっぱり西成が落ち着くそうで、どうも心開いて話せるような人が向こうにはいなかったんだそう。別れ際に、お盆にここで夏祭りやってるからまた来てな、と声をかけてもらった。ちょうど行こうと思ってたところ、顔覚えときますね~と答えて帰路についた。
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西成をどう思うかは人それぞれだろうし、いろんな印象を持つ人がいるだろう。自分にとっては馴染みのある場所ではないけども、しかし西成の空気感はどこかぼーっとできる雰囲気があって、つかの間の自由を感じたりする。
むやみやたらに絡む必要はない距離感で、もちろんよそ者ではあるから冷たい視線をもらうこともある。でもちょっと話してみるとお喋り好きなおじさんもいて、その言葉から人生を垣間見たりするのは楽しかったりする。
自分がどこから来て、ここがどこであるか、それを忘れずにいた上で対等に接していくこと。これが自分なりの西成との向き合い方なのかなと再確認したりした。
「個展『西成』までの手記」は、展示に向けて思ったこと、展示の進捗状況などを書いていく予定です。次回は個展を開催するに至る気持ちなんかを書けたらと思ってます。となると「その0」になるのか…?まぁまた次回。では。
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鷲﨑雄一写真展「西成」展示情報
会期:9/16,17
会場:アートギャラリー ヒルズワン (大阪府豊中市本町6-1-1 2F)
※入場無料
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