くぐはらひろ

デザイナー/イラストレーター。ネコと和解せよ。

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最近の記事

絵はこころの欠片

 誰かに自分の本棚を見られるのが恥ずかしい、という人は多いらしく、わたしもその中のひとりだ。  例えば読んでいる本のジャンルが恥ずかしいとか、マンガばかりだからとかそういうことではない。  わたしの本棚にはどちらかといえば純文学が多いし、デザインや美術系の本も多い。別に誰に見せても後ろめたいものはない。  だけれど恥ずかしいのだ。  読む本には自分の好みが反映される。  それがたとえ書店でなんとなく買った本であれ、わざわざ取り寄せてもらった本であれ、そこには自覚のあるなしに

    • 女の身体をどう使うかは女自身が決める

       2年ほど前に、友人からアフターピル(緊急避妊薬)を病院で処方してもらったときの話を聞いた。  彼女は恋人と寝たあと、コンドームが破れていたのではないかという不安が払拭できず、翌日になって産婦人科を受診したそうだ。  お酒を飲みながらそんな話をしていたので、彼女は冗談まじりに、そしてわたしはときどき茶々を入れたりしながら、その話を聞いていた。  アフターピルを処方してもらうまでの経緯を聞いたわたしの率直な感想は、「恥ずかしいし、わずらわしい」というものだった。  現在、アフ

      • 猫とめぐる季節

         まもなく、うちの猫と迎える8回目の冬が来る。  「猫はこたつで丸くなる」という歌のとおり、寒くなれば猫は丸くなり、暑くなればへそ天でとけている。  ひとつあの歌に異を唱えるとすれば、こたつの中はあたたかいので、「こたつで丸くなる」という表現は適切ではないということだ。正確には「こたつで伸びている」、あるいは「こたつを占領する」が正しいのではないかと、経験的には思ったりする。  ともかく、猫は気温に敏感だ。  そして猫は快適な場所を見つける名人でもある。  うちの猫の場合、

        • あの日の感情を保存する

           「この世界のすべてに感謝♡」といったことをわざわざSNSで発信するタイプのひとは信用していないのだけど、それでも感謝をすることは大切だ。  ありがとうと言われて悪い気はしないし、口先だけでもないよりはましだと思う。  あくまで「すべてに感謝♡」と公言するひとが苦手なだけであって、すべてに感謝をすることはとても難しく、だからこそ本当に感謝できるひとはすばらしい。  たとえばある日わたしが嫌だな、迷惑だな、と思ったひとも、きっとどこかで感謝をしたり、感謝されたりしているのだ。そ

        絵はこころの欠片

          英雄になんかならなくていい

           「ヒーロー」という言葉が苦手だ。  その言葉の中心にはいつもごく主観的な「正義」がある。正義はときに残酷で、そして凶暴だ。定義も流動的である。  だからわたしは、ヒーローものの映画やドラマがあまり好きではない。  その漠然とした苦手意識の理由をはっきりと理解したのは、サム・メンデス監督の『007 スカイフォール』を観ていたときだった。  映画の冒頭のほうに、ジェームズ・ボンドがバイクに乗って中東の街を駆けまわるシーンがある。  露店や屋台がところ狭しと並ぶなか、間一髪のと

          英雄になんかならなくていい

          ポルノグラフィティはわたしの青春だった

           誰しも鮮明に覚えている瞬間というのはあると思うけれど、わたしは初めてポルノグラフィティを見たときの衝撃を、はっきりと覚えている。  17年前のミュージックステーション。  高層ビルの屋上で、彼らは夜を切り裂くように「メリッサ」を演奏していた。  テレビ画面に釘付けになった。  それからわたしは生まれて初めてひとりでCDショップに行き、そこで『メリッサ』のシングル盤を買った。メリッサ、月飼い、見えない世界の3曲が収録されていた。  わたしはその3曲を繰り返し聴いた。当時のわた

          ポルノグラフィティはわたしの青春だった

          恐竜のぬいぐるみと怪獣とジェンダー

           母から聞いた話によると、わたしが初めて買ってもらったぬいぐるみは恐竜だったらしい。  その恐竜のぬいぐるみはいまでも実家にあって、わたしたち親子はそれを「恐竜ちゃん」と呼んでいる。思い返してみればたしかに、小さなわたしはどこへ行くにも恐竜ちゃんと一緒だった。旅行やキャンプへ行ったときの写真にもしっかりと写っている。だけどその恐竜ちゃんが、生まれて初めて買ってもらったぬいぐるみだったことまでは覚えていなかった。なのでわたしは少し驚いた。  だって恐竜だ。  深緑色で、背中には

          恐竜のぬいぐるみと怪獣とジェンダー

          「夜の街」で生きる女の子たちのこと

           わたしはいわゆる「夜の街」で働いていたことがある。  ガールズバーで2回。それぞれ半年ほどずつ。キャバクラでも働いたことがあるけれど、このときは3ヶ月くらいで、ほとんど出勤していなかったのであまり覚えていない。いずれもお金が必要になって、昼間のアルバイトと掛け持ちのダブルワークだった。  ガールズバーやキャバクラで働く女の子たちは、みんな、どこにでもいるような女の子ばかりだった。  彼女たちが夜の街で働く理由はいろいろある。  お酒が好きだからとか、夢のためだとか、転職活

          「夜の街」で生きる女の子たちのこと

          大切なことはうちの猫が教えてくれた

           わたしはひとり暮らしで、猫と暮らしている。  子猫のときに譲渡会でもらってきたサバ白のオス。今年の4月で7歳になった。  甘えん坊で、ちょっとバカ。そしていつでも尻尾がぴんと立っている。これは上機嫌のサインらしい。つまり、うちの猫は能天気なのだと思う。  顔が小さく、体が妙に長い。なんだかとぼけた顔をしている。「にゃー」と鳴かずに「んわー」と鳴く。そのためうちの母からは「ヤギ」と呼ばれている。お世辞にも美猫ではないけれど、うちの猫は世界で1番かわいい猫だ。  少なくともわた

          大切なことはうちの猫が教えてくれた