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【シャニマス】黛冬優子のWING敗退コミュに対して感じたもの

(もし今まで冬優子の敗退コミュに出会ったことがないという方がいましたら、このままブラウザバックしていただき、今後一切冬優子がWINGで敗退することのないようあなたのプロデュースに幸運が差し続けることをお祈りいたしますことが当記事の要旨となります。)


表題通り黛冬優子のWING敗退コミュについての簡単に感じたことをまとめておきたくなった次第なのですが、私が初めて当該コミュを目にすることになったとき、負けた悔しさや冬優子の無念さを痛感する以上にアイドルマスターにおけるパラレルワールドという観念に対して強烈な反論をぶつけられたようでひどく衝撃を受けました。


例えるなら人造人間とセルを倒した後の未来トランクスのようだなといったら一気におかしな話になりそうだけれど。

でもタイムリープものとしてみた時のドラゴンボールって、それぞれに独立したパラレルワールドが存在していて、例えタイムマシンを使って時間遡行したとしても、それは分岐の一つが生まれるきっかけになりえるだけであり、元いた未来は変わらない、という少年漫画にして万事ハッピーには全くならないその考え方にビックリしませんでしたか!?
トランクスは過去の世界の悟空の心臓病を治して人造人間にも勝つ力をつけたけど、元の荒廃した世界では戦いに明け暮れブルマと二人だけで生きていくんだっていう事実を避けられず未来に帰っていく姿には子供心ながらに寂しさを感じたことを覚えていますが。

じゃあ冬優子の敗退を受けて悔しくて悔しくて何としても優勝させてやりたいって思ったP(プレイヤー)はあのコミュを受けてどうするかっていうと、何が悪かったのか自省した後、全力で優勝コミュを見に行くと思うんですよ。

確かに人生をやり直し世界を上手くいくように(あるいはわざと敗退するような望む結果を見たさに)、導き操作する力を実は持っている。持っているけれど、でもそこで優勝させた冬優子は「あの」冬優子ではなくて。
「あの」冬優子はこれからどんなストーリーを辿ろうが一生WINGを優勝した時の気持ちとは縁のないまま生きていくことになるんですよね。

いや別にWINGなんてただの新人の登竜門的なアイドルコンテストなんで、これに負けるとアイドル人生が閉じられるわけでもなしに、摩美々の言うとおりこの挫折をバネにしてこれから頑張っていけばいいんですよ。

でも「あの」冬優子はWING優勝の景色を知らないまま生きていくんですよね。

他ならぬ本人がその残酷さを口にしてしまったのだから。
そしてこのコミュはそのままそれ以上の慰めも救いもなく、ぶつと途切れたかのように終わります。


そんなもの、成功するアイドル、失敗したアイドルがいること、エンディングが分岐するなんてこと、アーケードから箱、DS、2、そしてシャイニーカラーズに至るまで時限式のプロデュースを標榜するアイドルマスターでは世の常だったじゃないか。何を今更一つのコミュを取り上げて。

全くその通り、アイドルマスターはアイドル活動の成功具合に応じてランク分けがなされ悲喜交交のマルチエンディングを基軸としていたことは広く知られているように思います。
特にパラレルワールドであることが公式から明言された2nd Vision以降は、(ゼノや.KRといった一本道のストーリーを見せる映像作品を除けば)、アイドルマスターの中に似ているようで違う様々な世界があるらしいことはゲーム、漫画、アニメ、媒体・コンテンツを問わず、一見地続きの作品であっても、自由な展開を可能とすると余地となり、結果としてユーザ間の自由な解釈を広げる風土となりました。
それぞれのプロデューサーにそれぞれの隣に立つアイドルがいてそれぞれのアイドルストーリーを繰り広げるというキャラクターコンテンツとしての豊かさと懐の広さは、私にとってもアイドルマスターという作品を好んでいる大きな要因の一つであり、魅力だと考えています。


そういったパラレル性そのものをひっくり返すようなものではないかもしれないですが。
…なんて表現すればいいのか、今までのアイドルマスターって「強くてニューゲーム」が出来るものだと思っていて。


例え望まぬ結果があったとしてと、やり直せるのが、夢を掴めるのがアイドルマスターだって。


敗退してしまったとしても事務所を大きくしてハリウッドに1年の研修に行って強いサポートカードを引いてレベルを上げて、あるいはリアルのプレイヤースキルを上げて、効果的なレッスンや仕事を持って来れるのが敏腕プロデューサー。
美味しい結果はつまみ食いできるんだって観念で過ごしていたので、事務所で伊織と悪態つきあってる天海春香と劇場の頼れる先輩天海春香とドームライブでこっぴどくフラれる天海春香は共存できるものだと思っていたんです。


でも自分のアイドルの夢を叶えたあの日あの場面でずっと一緒にいて欲しい、それが自然に湧いて出たものだと話す天海春香の気持ちは「トップアイドルとして走り切り、ドームをラストコンサートに据えて大成功を収めた」天海春香にしかわからない究極の気持ちなんですよね。

そして、シャイニーカラーズの怖いところは、これが拡張性のあるブラウザゲームであり、少なくとも今これを書いている2020年6月現在ではそれぞれのアイドルはゴールを迎えておらず、ストーリーとアイドル活動とはこの先も展開し続けるということです。


他のアイドルが結ばれ天海春香がフラれるのはドームライブのTrueENDでしたが、杜野凛世がプロデューサーと結ばれるないし袂を分かつ結果となるのはシャイニーカラーズが終了することを意味しており、少なくともそれは今ではなく、凛世や283プロのアイドルのプロデュースは続いています。


「あの」冬優子の見えなかった景色がこれ以上なく残酷なもののように自分に突き刺さるのは、そんなシャイニーカラーズの世界にあって、それが『ふゆにはもう、わかんない』ままになってしまったと。


やり直せるのはあくまで神の視点を持つプロデューサー(=プレイヤー)です。
BAD ENDを迎えたこのふゆには、巻き戻せない明日が、朝起きて負けから始まる明日がやってくるのかもしれない、と直感的に思わされてしまう強烈な印象を植え付けられます。

ゲームをやり直すことは出来ても、プレイヤーが生きる時間の流れはシンプレックスである以上、アイドルと共有した時間はなかったことにはならない事実にはっとさせられ、そしてそれは冬優子に限らず、あらゆるパラレルワールドを生き続けるアイドルマスターのアイドルについて同じことが言えるのかもしれません。
決して個性はバイキングのように良いとこどりすることは出来ず、プロデュースの中で起きてしまった全ての事象があなたの中だけにいる、あなたのアイドル像を形作る何某かの積み重ねになっているのではないでしょうか。


『W.I.N.G』編の後に追加されたプロデュースモード『ファン感謝祭』編ではアイドル活動にも熟れてきたその後の姿が描かれ、283プロダクションのユニットはWING優勝ないし、それに準じるぐらいの実力を持った上で各々の活躍を見せています。

ファン感謝祭でユニット内格差に悩みながら答えを出す冬優子は、ユニット「ストレイライト」としてWINGに優勝した上で、人気が爆発するあさひに置いて行かれることに一時冷めて現実的な道を取ってしまったのでしょうか。
あるいはユニット「ストレイライト」としてはWINGに敗退してしまったにもかかわらず、尚トップアイドルを駆け抜け真横で輝き続ける存在の眩しさに挫けかけてしまったのかもしれません。

今となってはどちらも全て合わせ呑むしかない以上、『GRAD』編が来たらそれだけでお腹いっぱいになってしまうなあと思う夜でした。


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