映画感想:マイ・ブロークン・マリコ

たまたま情報を得て、公開当時から気になっていた映画「マイ・ブロークン・マリコ」を、先日アマプラで視聴しました。
公開時は気持ち的にまだコロナへの警戒感がなくなってなかったので、遅れての視聴です。

あらすじとしては、主人公のブラック勤めOL・シイノが毒親育ちの親友・マリコの訃報を知り、マリコの遺骨が毒親の手に渡っていることを知り、遺骨を奪い去るために行動を起こすところから始まります。
どうにかマリコの遺骨を奪い去ったシイノは、マリコとの思い出・追憶と共に遺骨を連れて海を目指すロードムービーです。

テーマ的には重いですし小綺麗な描かれ方もしてなくて個人的にはしっかり心を寄せて観ることができる作品でしたが、見終わった後に残るのは陰鬱とした重さではなかったです。
しっかりと生易しくない描き方なので、毒親・毒家族に覚えがある私は、見ているときに心が重くなったり怒りややるせなさ・諦めなど色々な感情を思い出しました。
ですが、ラストにシイノが日常に戻っていく描写は、これはこれでとてもしっくりきました。


もしもこの映画を見たのが、まだ今のパートナーとお付き合いをしていない・実家へ戻っている時期だったなら感じ方は全然違った気がします。
マリコ側の、「ふと死に心が揺れる感覚」の方に共鳴していたと思うのです。

ですが、今はパートナーとのやりとりを通して、毒親・毒家族の呪いを落とし過去に捕らわれた状態を脱して、自分の意志で自分の人生を生きる楽しさと強さを自覚して持てているので、シイノが日常に戻っていく姿から「誰に何があっても、地球は回るし日常は過ぎていくし、人は生きてくんだよな」みたいな、ほどよく心の重さから脱皮した感覚の方に共鳴しました。
他人にとって(それはパートナーですら)私の過去まで知らないし、私が死のうが生きようが知ったことではない。そしてそれはお互い様。
でも、人によっては、人生の中で、思い出や生き死にが心に刻まれてしまう存在もありうる。それがシイノにとってのマリコだし、私にとってはパートナーだし。
だけど、パートナーが死んだとして悲しみに捕らわれたり遺骨がその家族に渡ることに忌々しい気持ちにはなるのですが(パートナーも毒親・毒家族に覚えがある人なので)、私の命が終わるわけでもないし、日常は個人の事情なんか関係なく過ぎていくから、働いてご飯食べて寝て起きる必要がある。
それが今ならわかるというか、今なら「あー・・・今日も起きるか。働くか」といった方に思えそうな気がします。

作品自体は約90分ほどで、上述の通りテーマの重さ的な見応えもありつつ、見終わった時の感覚は重すぎないので、もしご興味があれば観てください。
個人的にはとてもおすすめです。

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