大切なことはわりと中田義塾が教えてくれた

 私が学生時代やってたバイトが意外と世の中で役に立つな、と思ったのでそれについて。

 私は大学時代、サークル以外の居場所がなく、他の集団で居場所を見つけることを半ば諦めていた。奥手なので接客業は大変そうだし、学習塾での集団授業は生意気なキッズが多そうだな...など、バイトをはじめることに対して一歩踏み出せずにいた。そんなある時サークルの先輩が代々引き継いできた個人塾、中田義塾を紹介され、勤務しはじめた。陰キャ東大生がお勉強教えるって逃げかよwと自虐的なツッコミをいれながらも、根はびびりなので緊張しながらバイトを始めた。

 しかし、やはり人間というのは、自分が思春期に本気で打ち込んできたことを他者に伝えることはやはり気持ちいいのだろう。あまりやる気の無さそうだなと思った子の光る部分を見つけて、自分なりに噛み砕いて説明した内容をうまくわかってくれそうな様子を見ると正直この上ない喜びを感じた。一方子供たちから学んだことも多い。先生大学どこですか?や、ここわかんない!と元気に聞いてくれる子達を見て、このように年上だからというだけで自分ほど臆することなく、笑顔で人に話を聞けるコミュニケーション能力は、大学生の自分より遥かに上だな、と学び、非常に感心した。一方で、自分がいくら噛み砕いたつもりでも伝わらなかったり、それならまだ自分も力不足と認められるが、宿題も全くやらなかったりされると、絶対ダメだとわかっていてもすこしイライラした様子を生徒に見せたこともあり、あー、またこの子を勉強嫌いにしてしまったと思う生徒もいて、その点はいつまでたっても反省している。

 何も大したことをした意識がなかったので、就活でも個別指導のバイトをしていることはほとんどアピールする機会がなかった。そして、就活が終わり暇な期間が訪れたとき、ゼミも卒論もない自分を埋め合わせるためにもうサークルの先輩もいない、昔の教えてた子達もいない塾でみじめだな...と初めて塾講師を始めた時よりも低い意識でバイトをはじめた。久しぶりにキッズと接することに懐かしさを覚える一方で、もうすぐ学生終わりなのに何も残せなかったのかもしれないという不安から、就活前に教えていた以上にやる気のない生徒にイライラしてしまうことも多く、なにやってんだおれは...と自責の念にしばしばかられていました。しかしそんなとき、大学時代を通じてはじめてというくらい低年齢層の子達を多く受け持つことになりました。そしたら、やはり昔と同じように子供たちにコミュニケーション能力の高さに感服したり、逆に問題集の教科書的な解答より遥かに筋のとおった素直な思考に触れ、感動したりした。なぜこんなに面白いのだろうと考えたら、小学生の頃の自分を勝手にモデルとして、子供は大体そんな感じだろうと実は勝手に生徒たちに生徒像を押し付けていた自分がいて、その子達がその想定を遥かに上回ってくれたからだと気づいた。その発見をしてから、まず自分なりにその子の年だった頃の自分を思い出すのはもちろん、そこから生きた言葉でお話をするくらいのテンションで行くと自分もコミュニケーション能力を磨けた気がしたし、職場の同期とも、抵抗感がなくいわゆる「普通」の会話を出きるようになった目的のためにあえて考えないようにする、という感覚がバイトの経験を通じて下りてきたような気がしたのだ。

現在私は、組織のなかで上限関係が厳しいと言われる部署で、まあ藤本は少しわからないとこはあるけど、何も特に言うことはないよ笑、という集団に少し慣れ始めたとき毎度周りに言われている言葉をかけられている。意外とイヤイヤやっている営みにも、もしかしたら教訓が込められているかもしれない!と考えることは大事かもしれない。