見出し画像

打合せ中の大惨事

あちらサイド3人

◯ ◯ ◯
ー ー ー
◯ ● ◯

こちらサイド3人  (●=私)

新規の案件で打合せ中、皆が飲み物に口をつけたタイミングで、凝りに凝っていた両肩を何気にぐるぐる回した。
少しは楽になれ〜と軽く運動していたらなんだか急に軽くなった。肩に乗っかっていた重圧感や締め付けられたり引っ張られたりする感じがスッと消えた。肩を回しただけで急にこんな楽になる?と思いながら、目の前の飲み物を飲もうとしたそのとき‼︎

こ、これはマズイ…

一世一代とはこういうことか…
前代未聞というほうが相応しいのか…
とにかく未曾有の大惨事だ。


ブラジャーが外れている。

マズイ。非常にマズイ。
こんな日に限って白いブラウスだし、目をキョロキョロさせながら明らかに挙動不審。あちらサイドが話しているときに中座するわけにもいかず気持ちだけが焦って変な汗が出てきた。

ここは一旦落ち着こう。
そもそもなぜだ?原因を探る。
電車の中でホックを外そうとする痴漢にでも遭ったのか?
いや、電車はガラガラだった。
昨夜慌ててつけたのか?
寝ぼけてつけたのか?
何も覚えていない。
ホック2つタイプのブラジャーなのだが1つしか引っかかってなくて、その1つも甘くて両肩を回した勢いで外れてしまったのか?そんな簡単に外れるか?いや、人生そこそこ生きてきたけどこんなこと初だぞ?

とにかく締め付けから解放されて、お胸がスカスカだ。この日は気温30℃、湿度93%という地獄のような暑さで、室内のエアコンの効きも悪かったせいか、やたらお胸だけ涼しい。いや、そんなこと言ってる場合ではない。
打合せ中であるこの場では絶対にブラジャーのホックをはめ直すことはできない。当たり前だ。両腕を後ろに回そうもんならいかにも「お胸にちゅーもーく!」のアピールになってしまう。休憩時、そそくさに御手洗いへ向かうしかない。それまでは腕を組んだりして誤魔化そう。

ぴたっとはめていたブラジャーが外れたもんだからブラウスの下でブラジャーのカップがバカになっている。半袖ブラウスだったので下手に動くと袖からブラ紐が落ちてくる。なので動きがもうペッパーくんになっていた。気になって気になって打合せの内容が全然入ってこない。たいしてたわわなお胸でもないのだが万が一、白ブラウスから私の透明感が出てしまったら、それを見た人たちからセクシャルハラスメントなどと言われ兼ねない。これは事故なのにそんなことを言われたらハラスメントハラスメントで訴えたらいいのか。もう訳がわからない。

今はどうにもできないとわかると今度は開き直りに変わる。こうなったら二度と訪れないかもしれない貴重なこの瞬間を楽しもう!などと、変態モードに切り替える。
ドキドキそわそわしながらも真顔で受け答えする自分が可笑しくて可笑しくて打合せの内容が全然入ってこない。

待てよ、目の前のノートパソコンを開いて盾にすればいい。これで身を(お胸を)守るのだ。
いや、パソコンの時間はついさっき終わったばかりだ。それが終わって一段落ついたから皆一斉に飲み物を飲み始めたんじゃないか。今開けると不自然だ。逆に注目される。今はプリントに目をやる時間。机に置かれているプリントを手に取って縦に持ってみてはどうか。A4プリントの幅と私のお胸の幅は比例しないが多少なりともガードにはなるだろう。A4プリントを横に持ったらギリ賄えるかも。そんなことばかり考えていたので打合せの内容が全然入ってこないままお昼休憩に入った。暑苦しくも一部分だけ涼しい2時間が終わった。

先方3人が退室し、「疲れたね〜」などとなんにもなかったフリをして私が最後に部屋を出る。お胸にバッグを抱きながらそのまま無事トイレに直行。こんな日に限ってボタンが後ろについているタイプのブラウス。脱ぐのも面倒くさい。トイレの個室で上半身裸になるなんて、今、火事になったら私はこのまま飛び出して、まわりの人たちは火事でキャーより上半身裸で逃げている私にキャーだろうなとかどうでもいい想像をしながらブラジャーのホックをしっかり二つ引っ掛け、何事もなかったかのように意気揚々とトイレをあとにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?