最初からそれ出せよ問題

ハリウッド映画やヒーローアニメで、戦いの後になればなるほど強い兵器が隠し球のように順番に出てくる、というのは良くある。白兵戦から始まった戦いは主人公一味が優勢で進むが、途中から空飛ぶやつとかクモみたいなロボとか謎のギザギザつきの車輪とかが出てきて、どんどんピンチになっていく。

武器が後から出てくる理由がちゃんと説明されている脚本もあるが、そうじゃないものもたくさんある。最初からその凄そうなビームかましたったらよかったやん、と突っ込みたくなる。

なぜ最初から凄い武器を使わないのか。ボスがフリーザ様のように出し惜しみをして楽しむサディストでないと仮定すると、結論は1つしかない。予算である。

悪の組織にだって予算はある。予算は常に抑えなくてはならない。恐らく莫大な開発費や輸送費がかかっている凄い兵器は、使用すれば通常兵器よりも高いガス代がかかるだろうし、敵に破壊されれば修理費も他の兵器よりかさむ。

白兵戦で失われた兵隊の命よりも、兵器の修理費を重視するのだ。何だか悪の組織っぽくて良い感じだ。

また、悪の組織にもクライアントがいる可能性がある。アベンジャーズだって、ロキの後ろにはサノスがいたわけだし、全ての兵器が自社開発/自社運用であるとは限らない。

とすればだ。ある程度の予算しか与えられていない場合、最初から全力の兵器を投入すると、あれれ〜この予算でそんなことまで出来るんだ〜、とクライアントに思われてしまう可能性がある。これはまずい。こうなると次からも同じ予算で同じクオリティの物を求められてしまう。消耗戦だ。その必殺兵器を開発できるまで、細かい下積み仕事があったはずなのに。

なので戦略として出し惜しみする。白兵戦の予算で案件が完了できるのであればそれに越したことは無い。ようやくピンチになって、クライアントもこれはまずいんじゃないか、となったところで、こんなこともあろうかと準備はしています、追加予算があれば使えるのですが、と必殺兵器を見せれば、クライアントも首を縦に振るだろう。

こういう話をすると、次のように意見する人がいると思う。

お前は金のために仕事をしているのか?いつでも全力投球で兵器を使うべきじゃないか?好きで選んだ悪の組織だろう?

こういう意見は無視しなければいけない。現実では要件に足りてないラインとオーバーキルになるラインが必ずある。その間のちょうど良いラインを常に見極めて仕事をしなければ、悪の組織の運営と持続は成り立たない。

また、大抵の悪の組織は1000年くらい続いているのが普通なので、それほど続いた経営に対し、素人がクソリプを飛ばすべきではないのである。

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