【統計準1級】7.極限定理・漸近理論:中心極定理の定義の様々な表し方


中心極限定理の言葉による定義

中心極限定理とは、標本数が増えるにつれて、標本平均の分布は正規分布に収束する、ということを述べています。もう少し言うと
・母集団がどのような分布を持っていようとも、
・その母集団からの独立な標本に関して、
・標本数が十分に大きい場合、
・標本平均は正規分布に近づく
ということを意味しています。

数式による定義

中心極限定理の数式等による定義に関しては、書籍やネット情報等で様々な表現方法で定義されているのを目にします。初心者にとっては、目眩がしそうなほどです。
そこで、こうした様々な定義の表現方法について、自分なりに整理してみました。慣れないうちは、却って混乱するかもしれませんが、とりあえず定義1だけ覚えておくのが良いと思います。

確率変数の収束先による定義

定義1~定義3については、次の前提条件は同じです。
互いに独立な確率変数$${X_1,X_2,\dots,X_n}$$が平均$${\mu}$$、分散$${\sigma^2}$$の同一確率分布に従うとする。 また$${\bar{X}=\dfrac{1}{n}(X_1+X_2+\dots+X_n)}$$とおく。
定義1:標準化された確率変数Zの場合

 $${Z=\dfrac{\bar{X}-\mu}{\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}}}$$は、$${n\to\infty}$$で標準正規分布$${N(0,1)}$$に収束する。

定義2:平均がゼロとなるようにした確率変数Yの場合   

$${Y=\sqrt{n}(\bar{X}-\mu)}$$は、$${n\to\infty}$$で正規分布$${N(0,\sigma^2)}$$に収束する。

定義3:標本平均$${\bar{X}}$$の場合

 標本平均$${\bar{X}}$$は、$${n\to\infty}$$で正規分布$${N(\mu,\sigma^2)}$$に収束する。

以上は標本平均での定義でしたが、標本和での定義という方法もあります。
定義4:標本和$${S_n}$$の場合
 互いに独立な確率変数$${X_1,X_2,\dots,X_n}$$が平均$${\mu}$$、分散$${\sigma^2}$$の同一確率分布に従うとする。また$${S_n=X_1+X_2+\dots+X_n}$$とおく。

 標本和$${S_n}$$は、$${n\to\infty}$$で正規分布$${N(n\mu,n\sigma^2)}$$に収束する。 

累積分布関数・密度関数を用いた定義

次からは累積分布関数や密度関数による定義です。
定義5:標準化された標本平均$${\bar{X}}$$について、累積分布関数を用いて、 

  $${\lim_{n\to\infty}P(\dfrac{\sqrt{n}(\bar{X}-\mu)}{\sigma}\leq x)=\large{\int_{-\infty}^x}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{t^2}{2}}dt=\Phi(x)}$$

定義6:標準化された標本平均$${\bar{X}}$$について、確率密度の数式を用いて

 $${\lim_{n\to\infty}P(a\leq\dfrac{\bar{X}-\mu}{\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}}\leq b)=\large{\int_a^b}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{x^2}{2}}dx}$$

定義7:標本和$${S_n=X_1+X_2+\dots+X_n}$$ について、確率密度の数式を用いて

$${\lim_{n\to\infty}P(a\leq\dfrac{S_n-n\mu}{\sigma\sqrt{n}}\leq b)=\large{\int_a^b}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{t^2}{2}}dt}$$



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