【統計準1級】8.統計的推定の基礎:モーメント法によるパラメータ推定


モーメント法とは

モーメント法とは、母集団のモーメントと標本モーメントを一致させることで未知のパラメータを推定する手法のことです。

モーメント法によるパラメータ推定手順

1.母集団モーメントの確認

 母集団のk次モーメント$${m_k}$$は$${m_k=E[X^k]}$$として定義されます。

  • 1次のモーメント:$${m_1=E[X]=\mu}$$

  • 2次のモーメント:$${m_2=E[X^2]=\sigma^2 + \mu^2}$$

ここで$${\mu}$$は母集団の平均、$${\sigma^2}$$は分散を表しています。

2.標本モーメント(原点回り)の計算

 原点回りの標本k次モーメント$${\hat{m_k}}$$は標本データ$${X_1,X_2,\dots X_n}$$のk次の平均として定義されます。:$${\hat{m_k}=\dfrac{1}{n}\Sigma_{i=1}^nX_i^k}$$

  • 1次の標本モーメント:$${\hat{m_1}=\dfrac{1}{n}\Sigma_{i=1}^n X_i}$$ ・・・・ 標本平均

  • 2次の標本モーメント:$${\hat{m_2}=\dfrac{1}{n}\Sigma_{i=1}^n X_i^2}$$

3.標本モーメント(中心回り)の計算

 中心回りの標本k次モーメントは中心からの偏差の平均として定義されます。:$${\hat{\mu_k}=\dfrac{1}{n}\Sigma_{i=1}^n(X_i-\bar{X})^k}$$

  • 1次の中心モーメント:$${\hat{u_1}=\dfrac{1}{n}\Sigma_{i=1}^n(X_i-\bar{X})}$$

  • 2次の中心モーメント:$${\hat{u_2}=\dfrac{1}{n}\Sigma_{i=1}^n(X_i-\bar{X})^2}$$ ・・・・ 標本分散

なお、2次の中心モーメントの計算時には$${n-1}$$で割って不偏分散を利用することもあります。

4.パラメータの推定

  • $${m_1=\hat{m_1},m_2=\hat{m_2}}$$と仮定、或いは$${m_1=\hat{m_1},m_2=\hat{u_2}+\hat{m_1}^2}$$と仮定し、方程式を解いてパラメータを求めます。

例題

問題:ガンマ分布のパラメータ推定

母集団がガンマ分布$${Ga(\alpha, \beta)}$$に従うとする。この母集団から無作為に抽出した5個の標本から次の標本データ:2.0, 3.0, 0.5, 3.5, 2.5を得たとする。モーメント法で母集団のパラメータを推定せよ。

解答1:標本平均と標本分散を用いた推定

解答2:1次標本モーメントと2次標本モーメントを用いた推定


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