図書館業務について

図書館で働いていたのは何年か前になるので、ちょっと情報が古いかも知れませんが、月に二回程度でも図書館に通ってもらえるといいかなと思って書いてみます。

図書館という施設について

図書館というのは、各市町村が独自に設置しているもので、図書館を全国的につなぐものは基本的にはありません。
そんな中で、利用者の利便性を高めるために、国立国会図書館や都道府県立図書館、近隣の市町村の図書館と相互貸借(図書館同士での本の貸し借り)が出来るように仕組み作りをします。

市町村が設置しているので、図書館にさかれる予算はそれぞれの自治体の財政や、市長などの思惑が大きく影響します。
当然ニーズがないものに税金を割くのは自治体としての判断能力が問われますので、利用率が低ければ、予算が削られるのは自然な流れだと思います。

図書館で働くために

僕が働いていたところは、市が設置している正規職員は司書資格を持っておらず、実務は非正規に任せきり。人件費が削り倒されていたので、普通外注に転換すれば安くなるはずの人件費が、外注の方が高上がりという有り様でした。

一人当たりの年収が予算として決められており、自活できるほどの給料はもらえませんでした。司書資格持ってても、資格手当てもなかったし。

図書館で働いているのは、わずかな正規職員と多数の非正規職員で、まともなところだと正規職員が司書資格を持っていて、非正規で雇われている人も資格持ち多数という場合もあります。ただ、図書館で働いている誰か一人でも司書資格を持っていればよいことになっているので、非正規一人だけが資格持ちというケースも発生しうる状態です。

それで、市町村で設置しているレベルの図書館であれば、定期的に募集をかけている非正規については比較的簡単に就業することができます。難しいのは正規雇用です。市町村では主に市役所職員が配置されますが、農林課や総務課と同じ理屈で配置されるので、自治体によるとは思いますが、異動もあるし安定して図書館にいられる訳ではありません。資格が用意される専門職として理解されていない様に思います。
国立国会図書館、都道府県立図書館、大学図書館などは専門職員をおいていますが、倍率、人材の質ともにえげつない水準なので、出来れば大学選びから、少なくとも司書課程の履修し始めには、就職を意識した情報収集が必要かもしれません。そもそも好きでその仕事につく人ばかりな上に席が少ないので、採用自体もほとんど行われず、2、3人の席を百人単位で奪い合う形になります。僕はダメでした。
あとは外注の司書募集で、人材派遣会社と契約して、各図書館に配属される流れもあります。

司書資格と司書が出来ること

司書資格は大学で2年程度のカリキュラムをクリアすることで取得することができます。司書業務を研究している学部もありますが、そうでない大学でも資格取得の課程をおいてある場合があり、僕の通っていたところでは、併設している短大生も資格を取得していました。

司書資格では生涯学習や、図書館が主張する資料収集の自由、児童サービス論と言った図書館が目指すべき理想から、分類やレファレンス(資料検索業務)と言った実務上要求される技能を習得します。
分類については現在はデータベースを使用した電子的な管理が主流ですが、カードを用いた分類も学びます。

サービスとして図書館を考えたとき、対象となる児童が手が届く高さの棚を設置するなどさまざまな配慮を学びます。

資料検索についても、利用者が求める情報を明確化するための聞き取り方法から、検索のためのツールを使いこなすための訓練を行います。
データベースの検索から、本のタイトルをまとめた本など、電子・物理問わずさまざまなツールを駆使して、利用者が求める情報にたどり着くお手伝いをします。

司書不要論なるものを口にした方がいるらしく、反発が上がっていますが、資料のデータベース化について現状を把握していなさすぎると僕も思います。
新しい本で全国流通しているものは、民間事業者が書誌データとセットで販売してくれるので楽に納入できますが、本というものは大手出版社だけが発行するものではなくて、自治体や研究機関、大学、はたまた個人が発行するものもあります。それらは発行部数も流通も規格化されているものではありません。非売品の郷土資料が寄贈されるなんてしょっちゅうあります。当然データベース作成ができなければ司書はつとまりません。
また、資料の全文がデータベース化されているわけではないので、内容について検索をかけられる訳ではありません。仮に全ページ印刷して、それをソフトウェアでテキストデータなどに変換して、ネット上で検索出来るようにするとして、誰がその費用を捻出するのでしょう?
国立国会図書館では古い資料を優先的に電子化する取り組みを行っていますが、司書が不要で全てソフトウェアで賄おうという考えの人は、今までに出版された何千万冊全て電子化するつもりなのでしょうか?
僕には現実的でないように思えます。

とは言え、図書館の司書配置状況は芳しいとは言えず、利用者として十分なレファレンスを望むのであれば、都道府県立水準の図書館か、大学図書館を利用するのが現状妥当です。
レファレンス技術は多岐に渡るツールを把握していないと、不適切なツールを選択してしまいかねないため、資格をとったから即座に完全にできるという類いのものではありません。

レファレンスもそうですが、図書館サービスを充実させるために、司書としてキャリアを積むには熟練者のもとで5年10年と仕事をする環境が好ましいと思います。

図書館にいこう

冒頭でも述べたように自治体の意向によりますが、図書館は利用されなければ、予算が削られます。
知る権利があるので、完全に閉館になることは滅多なことでは起こらないと思いますが、予算がなければ本が買えず、司書を継続的に雇うことが出来ないので、技術継承も停滞することになるでしょう。
あとはボランティアで物好きが助けてくれるのを期待するくらいしかなくなってしまいます。
なので権利を守るためにも図書館を使って欲しいと思います。

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