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フレネ教育―南フランスの片田舎ヴァンス発祥の教育法-

 南フランスで生まれた、フレネ教育という教育法を御存じでしょうか。

フレネ教育とは、フランスの教育者セレスタン・フレネ氏の、「子供も社会の一員として尊重され、責任を果たしながら自分のなすべきことに向かって生活をつくっていく」という理念に基き、子どもの主体性を伸ばすことに重きを置いた教育法です。

 フレネ教育は、日本で行われている伝統的な詰込み教育とは大きく異なり、子供が一人ひとり「考えて行動する」ことを最も大切にしています。そのため、教師による一斉指導、一律の教材や時間割といったものは存在しません。子どもたちは、自ら学習計画表を作成し、自分で目標を立て、それに従って自分のリズムで勉強を進めていきます。教師は、それらの活動を見守り、必要に応じて手助けします。子供の興味、関心からはじまる自然な学びや表現、計画表や率直な意見交換など、日本とは大きく異なる具体的な実践が子供の主体的な生活をつくる基盤となっているのです。そして、教師は子供の興味や関心からはじまる学習が自然に展開できるよう、環境を整える役割を担っているのです。

 また、フレネ学校は、1935年に南フランスの片田舎ヴァンスに建てられました。このフレネ学校は、豊かな自然の中に立地しておりますが、その自然も、子供たちのために、フレネ自身の手によって、念入りな配慮のもと調えられた自然です。子どもたちは、木に登ったり、起伏のある林の小径を歩いたりすることによって、自然やその変化を感じとり、それらに対応することにより、様々な経験を得ていくのです。

 フレネ学校の全体活動の一つとしては、自由作文が挙げられます。一人一人が日々の出来事の中から気づいたことを発表し、クラス全員で、作品を一つ選び出します。その後、選ばれた作品を基に、全員で、文章を推敲し、より魅力的なものへと仕上げていく活動です。この活動により、子どもたちは表現力を伸ばし、異なった考えを持つ他者の存在を意識する機会を得ます。こうして出来上がった作品は、印刷され、地域や他の学校との交流に用いられています。

 この他にも、自然観察や、「コンフェランス」と呼ばれる研究発表や、「アトリエ」で行われる「手仕事」と呼ばれる創作・表現活動等、子どもが主体的に学ぶ場がいくつも用意されています。

 更に、フレネ学校では、「集会」と呼ばれるものがあり、この「集会」も子どもたちが主導し、教師は必要に応じて介入するにとどまります。ここで、子どもたちは議題について、自由に発言し、議論をすることにより、集団生活のなかでの在り方や責任も学ぶことができます。

 フレネ教育では、知識のインプットだけでなく、アウトプットにも重点を置き、子どもの興味・関心に寄り添うことで、常に学びの主体は子どもにあります。そして、教師の仕事は、主に子どもが学びに専念することができるための環境づくりをすることに力点が置かれている点も大きな特徴の一つです。

 けやの森学園では、こうしたフランスのフレネ学校との交流を通して、様々な教育のヒントを得てきました。次回の記事では、けやの森学園が、どのようにフレネ教育の理念を理解し、取り入れ、実践しているのかについて、お伝えしていきたいと思います。

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