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『星座巡礼』の好きな一節
古本屋で買って、ずいぶん長く手元にある本です。
昔の言葉の美しさに圧倒されます。わたしは星のことというよりは、言葉を楽しんで繰り返し読んでいます。
かうして北半球の冬の魅惑は実に夜の星空にある。下界がプロメトイスの如く「冬」の鉄鎖に縛られてゐる間に、星は寧ろ放縦と思はれるほどに其の豪華に奢つている。
『雲無き夜にオリオンが空高く燦(きらめ)くを見ざる者は、全天の隈々に目を投ぐるも更に美しき眺めを漁り得ざるべし』と言った詩人があるが、そのオリオン座を初め、馭者・牡牛・雙子・大犬・小犬・アルゴー等、星座の偉大なるものが空の大半を支配して、人間の窺ひ得ぬ天上の会議を空想せしめる。殊に新雪の降りしいた夜、野末に真黒な杉林が参差(しんし)と連なつてゐる所などで、その空一面に、夥しい大きな星がプリズム光を放つてゐるのを仰ぐと、暫くは人界から一切の興味を忘れてしまふほどである。
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本の情報
星座巡礼 野尻抱影
大正14年11月20日 初版
昭和6年11月20日 七版発行
発行所 研究社
定価 1円50銭
(非売品)
2024/04/06
古本 天栖土食虫 あますみかつちはむむし
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