見出し画像

【小説】5年後… #1

「ラーメン銀龍」
あっさりとした豚骨醬油ラーメン。豚骨のクセもなく、何杯も食べられそう!細麺というのも私好み!ちゃっかり替え玉もいただきました。そして、一口餃子も美味!

「よし、できた」
 私はSNSに、不規則だが、お昼ご飯の投稿をしている。
30代後半の主婦のお昼ご飯に、誰が興味を持つんだろうと思いつつも、自分の記録用にと始めたSNS。投稿を始めて約半年でフォロワーさんが150人を超えた。
勤め先の周辺の定食屋さんがほとんどだが、休みの日は、自宅近くの店や旅行先の食事についても載せている。半年も続けると、携帯で撮る写真の腕も上がってきている気がして、だんだん楽しくなってきた。

そして私の横では、中学3年生になる娘のミサキが、ソファに座ってテレビを観ながら、声を出して笑っている。最近人気のお笑い芸人が出演しているバラエティー番組で、ミサキが好きな芸人さんも出ているようだ。面食いのミサキだから、ビジュアル重視だと思い込んでいたが、なかなか面白い。私も番組が終わるまで、30分ほど一緒に観ながら笑っていた。
 番組が終わっても、スマホでゲームを始めてソファから動こうとしないミサキに、口癖かのように言った。
「宿題は終わったの?」
「今、やろうと思ったの」
そう言って、ミサキは面倒くさそうに立ち上がり、自分の部屋へと向かった。

ケイタは21時ごろ野球部の部活から帰ってきて、お風呂に入っている。ユニフォームの頑固な泥汚れは、洗濯機で回してもきれいに取れないので、体を洗うついでに、浴室で一度、手洗いをしてくれる。裸でユニフォームをゴシゴシと石鹸で洗う姿を想像したら滑稽だが、黒土は汚れが落ちにくく、手洗いも力がいるので助かっている。
小学3年生から始めた野球は、高校生になってもやめることなく続けており、高校2年生になってようやく背番号をもらうことができた。勉強と部活の両立は大変そうだが、今が一番キラキラして見える。
「あ~はらへった~」
お風呂から上がったケイタは、相当お腹が空いているようで、覇気がない。急いでケイタの分の晩御飯の準備をして、手洗いしてくれたユニフォームを洗濯する。そして、洗い物をして、片付けして…結局、眠りにつくのは24時を回る。
 これがいつもの日常だ。

 今日もそんないつもと変わらない日常を終えようと思っていた。お布団にごろんと寝ころんだ時、携帯に通知が鳴ったので確認してみると、先ほど投稿した、ラーメンのコメントが書き込まれたようだった。
 最近はちょこちょこコメントも増えてきた。“美味しそうですね”とか“行ってみたいです”といった、シンプルなコメントだが、反応してもらえるのが嬉しかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?