タイヤ考察
何か大層なタイトルを掲げていますが、あくまで自分が感じた事をまとめただけであって、タイヤの専門家でも無いですし、履いたタイヤの数や種類も大した事ないです。タイヤ論戦が始まると宗教戦争が起きてしまいますので、違うだろって思う人もいるかもしれませんが宜しくお願いしますw
過去には空気圧について書いたけど、今回はタイヤそのものについてです。
ブロック間隔
広いと、土に刺さりやすく泥詰まりが少ないが、ブロックの接地面積が少ないので固い路面に弱い。タイヤ全体に対するブロックの数が少ない為、撚れやすく摩耗による耐久性が低い。
狭いと、土に刺さりにくく泥詰まりしやすいので弱いが、ブロックの接地面積が多いので固い路面に強い。タイヤ全体に対するブロックの数が多い為、撚れにくく摩耗による耐久性が高い。
ブロック硬度
固いと、ソフト路面やサンドで刺さりやすく、パワーが逃げづらいので推進力が高い。刺さらない固い路面(ハードパック、岩盤、アスファルト)だと角が引っ掛からず、コンパウンドでグリップさせられないので滑りやすい。摩耗で減りづらいが、角が無くなると途端にグリップしなくなるので美味しい時期は短い。
柔らかいと、ソフト路面やサンドで刺さりにくく、パワーが逃げやすいので推進力が低い。刺さらない固い路面(ハードパック、岩盤、アスファルト)だと角ではなく面で捉え、コンパウンドでグリップさせられるので滑りにくい。摩耗で減りやすいが、角が無くなってもコンパウンドでグリップするので見た目よりも長く使える。
ただ、固すぎると角が刺さってから地面を捉えた後に、すぐにブロックが戻ろうとして逃げたり、地面が崩れたりする為、グリップせずに空転する場合も考えられる。
ブロックハイト
高いと、刺さる路面であれば土を掻く量が多いので推進力が高い。刺さらない固い路面だと掻く意味をなさないか、ブロックの剛性(サイズや硬度)が低いと撚れやすい。摩耗で減っても高い分使える期間が長い。
低いと、刺さる路面であれば土を掻く量が少ないので推進力が低い。刺さらない固い路面だとブロックの剛性(サイズや硬度)が低くても撚れにくい。摩耗で減ると低い分使える期間が短い。
ブロックサイズ
大きいと、パワーを掛けた時にチカラが逃げづらく推進力が高いが、固めの路面で刺さりづらい。サイズが大きいと路面を包み込みづらいので岩や根っこに弱い。摩耗に対して耐久性が高い。
小さいと、パワーを掛けた時にチカラが逃げやすく推進力が低いが、固めの路面で刺さりやすい。サイズが小さいと路面を包み込みやすいので岩や根っこに強い。摩耗に対して耐久性が低い。
ブロックパターン
MX系パターンの場合(iX-09W GEKKOTAやJX8 GEKKOTA、525X)、センター部分は横1列、サイドに段違いのブロック配置。(|)状のパターンが路面を掴むように捉え、サイドは間隔狭めでハイスピードでのコーナーリングでも撚れにくい作り。刺さりやすく撚れないようにブロックサイズも小さめが多い。そうしたMXタイヤのブロックの特徴に加えて、ハードエンデューロ向けにTR系のブロックコンパウンドやトレッド、サイドウォールの柔らかさを合わせた所謂ガミータイヤ。滑る根っこやガレ場、沢など色々な状況下での性能が高い。角が丸くなったり山が減って見た目的に終わっててもドライであれば喰うので練習程度なら長く使えるが、美味しい期間を考えると短期決戦なレース向け。
XC系パターンの場合、センター部分は横一列等間隔で前に進む推進力とターンでのスライドコントロールがしやすいが、悪く言えば横滑りしやすいのでキャンバーが苦手な印象。横一列配置が固めの路面では刺さりづらいので、カチパンマディーだと掻けないので弱い。逆に、ドライコンディションや沢、ガレ場であれば、歯抜けのTRタイヤ的なパターンなので接地面積も広いのでグリップ性能は高いし、耐久性もMX系のパターンよりも高い。フカフカでフラットコーナーが多いハイスピードなゲレンデ、ドライコンディションでのレース、沢やガレ場の多いコース向け。
ED(FIM)系パターンの場合、ブロックが全体的に独立して配置されている為、どんな路面でも可もなく不可もないニュートラルなグリップ感。MX系みたいにブロック配置で泥を掴むというより、ブロックのエッジで搔く&トレッドの接地面積でグリップする感じ。排土性は良いがハイトが低いので、ある程度空転させながら泥を飛ばしてグリップさせる乗り方が必要。ブロックが小さめなのでハイスピードでもコントローラブル。エアボリュームがあるので衝撃を吸収してくれる。ガレ場だとどこかしらのブロックが引っ掛かって進んでくれる(良くも悪くも荷重が抜けた状態ではガツンと喰わない)。FIMの規制がある大会向け。コンパウンドが柔らかいエクストリーム仕様は世界のトップ選手も使用。
TR系パターンの場合(TR011ツーリスト)、碁盤の目のような配置で垂直状態でのグリップを重視している為、サイドブロック部分も上を向いてるのでターンで滑りやすい。ブロック間隔が密なので泥を掻き出す必要があるヘビーマッドには弱いが、上に乗った泥が少ないが滑り易いカチパンマディーや岩盤、根っこには強い。耐久性も高い。コンパウンドも柔らかいので空気パンパンでもグリップするが、エアボリュームがあるので潰して乗ると真価を発揮する。海外では、TR系パターンだがEDバイク向けに作ったタイヤ(Kenda EquilibriumやMotoz Mountain Hybridなど)も出ている。公道やトレッキング、ガレ場や岩盤のあるコース向け。
サカタイヤの場合(MX12やM5B)、パドル形状のブロックや高いブロックハイトでヘビーマッドでも泥を掻き出して推進力が高い。パターンも広めなので泥詰まりもしづらい。固めのブロックなのでカチパンマディーでも引っ掻きながら前に進められる。根っこには弱いので手前の土部分で加速して勢いで越えるテクニックは必要。岩盤は当然弱いが、ガレ場だとブロックが引っ掛かりやすいのか意外と喰う。サイドウォールが固めなので空気圧を0.1前後にして潰す事。雨の土系コース向け。
ハイブリッドの場合(540DCや520DC)、センターが柔らかいガミー、サイドが固めのブロックなので雨の時でも土やガレ場でもグリップする。ただし、パターンが広く柔らかいので、固い路面で撚れやすく、サイド部分まで接地してない状況だと推進力が低い。サイドウォールがかなり固いので0.1~大気圧位にしないと撓まないので注意。天気や路面コンディションが読みづらい時向け。
VE-33の場合、80年年代から現在まで生き残っているタイヤ。コンパウンドを柔らかくしたVE-33s GEKKOTAも近年発売された。ただ、長寿なタイヤ故にブロックパターンが古いので、間隔が狭めでブロックが大きい。サイドウォールが柔らかいのでハイスピードでのリム打ちによるパンクのリスクがある。しかし、そのデメリットも逆に、耐久性がありオールラウンド(VE-33無印は固い&狭いでガレ場や岩盤が弱いけど)に使える。空気圧を減らせばべったり潰れるのでマディーでのグリップが良い。パターンに癖が無いので回転方向を逆にして履いてもあまり影響が無い。VE-33s GEKKOTAは今後も需要はあると思うが、VE-33はM5Bが出たので使い所が微妙な気がする…。ちなみにフロントタイヤのVE-35はブロックが大き過ぎて刺さらないのでコースで使用するには不向きなので、リアタイヤがVE-33だからといって同じ銘柄で合わせる必要は無し。
自分がレース始めた頃はガミータイヤとか無く、MXタイヤかVE33、そしてミシュランのS12 XCを履いている人が多かったかと思います。とにかく、ブロックが高くて、離れていて、尖っているタイヤが強そうというイメージで自分は選んでいましたが、空気圧も良く知らない昔の事なので良く覚えていませんw 排土性と刺さり重視で掻いて進む感じですかね。
トレッドとサイドウォール
柔らかい程撓みやすいので接地面が増えてグリップするが、撓み過ぎるとハイスピードで走った時に撚れたり、石とリムがヒットしやすくなりパンクやリムが曲がるリスクがある。最近ではそのリスクを減らす為に、サイドウォールだけ固く、トレッドだけ柔らかいタイヤも出てきている。全体的に撓む方が低荷重、低速時でも良く潰れるのでグリップしやすいが、体重がある人やハイスピードで走る人はサイドウォールが固い方が安心。キャンバーやコーナーリングでもサイドウォールに腰があった方がタイヤ全体が撚れない。
110/100とか、140/80とかタイヤには色々とサイズがあるけど、幅が広い方が接地面積が広い。ただ、同じ銘柄の110と120を比べるとブロックのサイズも大きくなる場合が多く、大きい分ブロック間隔が狭くなる物もある。また、幅が広くてブロックが大きいと路面との抵抗も大きいので、パワーが無いバイクなら120よりも110の方が良いし、パワーがあるなら120の方が向いている。
540DCを例にすると、110は120に比べて、ブロックサイズが小さく、トレッドの幅も狭い事が分かる。540DCのセンターブロックはかなり柔らかく、しかもブロック間隔も他のタイヤと比べてかなり広いので撚れやすく、110は各ブロックが小さいのでそれが顕著に表れる。トレッド面はそこそこ撓むのだが、サイドウォールがかなり固くて空気圧を減らしても所謂ガミータイヤのようにべったりと潰して乗るのが体重が少ない人には難しい。体重がある人でパワーがあるレーサーに120を履くのが正解かと。ドライコンディションであれば520DCの方がオールマイティーに使えそう。その際、525Xと迷う所だけど、ハイスピード系なら520DC、難所系なら525Xといった感じか。
扁平率も110/90と110/100と120/90とあった場合、110/90と110/100なら100の方が大きいのは当然だけど、110/100と120/90ならどうかというと、120の方が幅は広いがエアボリュームが少ない。ハードエンデューロ的に空気を減らして走る事を考えるなら110/100が正解。また、メーカーやタイヤの銘柄によって同じ110/100でも幅が違うのでそこら辺にも注目すると良いかと。
トレッドが柔らかいと、石や根っこがあった時に包む込むように各ブロックが内側に向かい、言葉通り掴むようにグリップする。ただ、空気圧を減らした時に潰れ過ぎてフラットな路面でブロックが刺さりづらくなる事もあるので、路面状況やタイヤの種類で考える必要がある。
トレッド断面を見るとMX系は丸くなっているが、TR系や一部のガミータイヤは平坦な形状をしている。これはコーナーリングに関係していて、カーブでスピードを出すか、それとも縦方向でのトラクションを重視するかの違い。なので、TR系はサイドのブロックも縦方向に向いている。
比較として
左から
SHINKO 540DC 110/100-18
IRC VE-33s Gekkota 110/100-18
SHINKO 525X 110/100-18
SHINKO MX216 140/80-18
となります。
540DCはブロックの張り出しはありますが、トレッド面の幅は他の110と比べると少し狭い事が分かります。エアボリュームが少なく、サイドウォールも固いので潰れません。その分、ダイレクトに押し付けるチカラはありますが、ブロックに依存する感じで。サイズが小さく柔らかいので撚れやすく、耐久性が低い印象。
逆に525Xは110ながらVE-33s Gekkotaよりか幅が広く、トレッドの断面形状が平らに見えます。エアボリュームが多く、トレッドやサイドウォールもVE-33s Gekkotaよりか柔らかく、ブロックのサイズやパターンもMX系なので喰いそう。比較対象とするならVE-33s Gekkotaではなく、iX-09W GEKKOTAかJX8 GEKKOTAになるかなと。525Xの120だとブロックサイズも大きく、ブロック間隔も狭く、VE-33s Gekkotaと見た感じは似ているので比べて見ても良いかなと。VE-33s GekkotaはVE-33無印に比べれば柔らかいけどそこまでガミー感はないので(良くも悪くもだろうけど)
MX216は他と比べても段違いにボリューム感があります。その割には重さは軽めで、トレッドはそこそこ柔らかく、サイドウォールは固すぎないけどしっかり感はある感じ。ブロック自体はMXタイヤみたいにカチカチではなく、適度に柔らかさがあります。けど、ブロックハイトが低いので指で捩じっても撚れたりはしないです。グッと進むダイレクトなグリップ感は無いけど、ドライでもマディーでも何となく進んでいるという不思議なグリップ感です。根っこやガレ場でもエアボリュームや接地面積が優位に働くのか影響を感じづらい印象。同じ銘柄のソフトコンパウンド版のSX216というのもあり、ガミータイヤの元祖と言われるGoldenTyre GT216Xと同じ(SHINKOがGoldenTyreのOEM生産していた為)なので、沢メインのレースとかなら選んで見ても良いかと。
押したり、摘まんだりした動画も参考にどうぞ。
タイヤ選び
では、結局どのタイヤが良いのかという事になるが、ドライかマディーか、土もフカフカの黒土か、ツルツルの赤土か、ガレ場や沢はあるか、またコース全体での比率や一番の難所となる場所はどんな路面か、などその時々に合わせてという事になるので、これさえ履いておけば全部OKという訳ではなく、コンディションに合わせる必要がある。
大雑把に現在の自分ならコレを選ぶかなというので挙げてみたけど、コースの中でどこが一番の難所になるか、越えられないと終わるとか、テクニカルでハマると時間が掛かりそうな場所、そこに合わせたタイヤ選びをする感じですね。まあ、ヒルクライムや沢は当然ですが、意外と難所化するのが何も無かったはずのウッズの中かなと。キャンバーや掘れて現れる根っこ、水が流れたり湧いてヤチっていたり。
ドライならガミータイヤの方が恩恵が得られますが、雨でヘビーマッドが確定なコースならガミータイヤだと終わりますのでサカタイヤを選びます。根っこやガレは手前の土部分で喰わせて勢いで越える乗り方は必要(ドライであっても基本ではありますが)ですが、ブロック間隔が広いので意外と沢やガレ場の石は引っかかって進みます。ただ、白井みたいに沢や岩盤がメインで、ヘビーマッドが無くカチパン系ならトラタイヤもアリ。
XCで難所が無いというのであればハイスピードでも撚れずに推進力があり、スライドコントロールがし易い、耐久性もある物が良いでしょう。
フロントタイヤに関しては、基本的にはMXタイヤのインターミディエート(iX-09wや07、MX33)を履けばOKだと思ってましたが、マディーの場合は刺さる系のMX12Fや、ガミータイヤのiX-09w Gekkota、ガミーで更にタイヤ自体が太いFatタイヤと呼ばれるジャンルのMX216 Cheaterにすると効果があります。
MX12Fは見た目からも分かる通り、ブロックがトゲのように尖っており、マディーでも刺さる為、雨の日の下りでも安心感があります。ただ、ドライのカチパンやアスファルトとかかなり撚れます。
マディーでガミータイヤはリアタイヤの場合、喰わないというのが定説ですが、フロントタイヤの場合は適度に撚れながらも粘る特性のせいか、滑るけど固いブロックみたいに一気に滑らず意外と止まってくれます。ドライの場合は、固いブロックみたいなダイレクト感が無く、グネグネしてコーナーとか気持ち悪いですがグリップしてくれます。コンパウンドがグリップするのでカチパンやアスファルトではMXタイヤよりも安心感があります(飛ばした場合は分からないですが)。
フロントガミーの場合、本来の主目的としてはヒルクライム途中の根っこなどでフロントが弾かれずにトレースしてくれるという部分にありますが、MX216 Cheaterはサイドウォールも高く、トレッドも広いのでエアボリュームがあり、もう一つのサスペンションといった感じで衝撃を吸収してくれるのでかなり良いです。デメリットとしては太く、重くなるのでハンドリングに少し影響が出るといった感じでしょうか。メリットの方が際立つので気にならないですが。
とりあえず、こんな感じがお勧めという感じで挙げたけど、それ以外に何が良いかを判断する材料としては、
サイドウォールとトレッドの固さ(固いと耐パンク性も高くハイスピード向け。柔らかいと撓むので接地面積が増えてグリップさせやすく難所向け)
ブロックの固さとパターン(固いと地面に刺さり易く、角で引っ掻いて進む柔らかい路面向け。柔らかいと地面に密着して、面で押さえつけてグリップする固い路面向け。パターンが密だと接地面積が広く、コンパウンドでグリップさせるタイプ。パターンが疎だと泥が詰まりづらく、角で引っ掻きやすいタイプ。)
ブロックの高さとサイズ、間隔(ブロックの高さがあってサイズも大きく間隔が広いと泥を掻き出す量が多いので推進力が高い(所謂サカタイヤ)高さがあってもサイズが小さいと撚れやすい。サイズが大きくても高さが無いと掻き出せない。高さとサイズが合っても間隔が狭いと泥が詰まって刺さらず掻けない。しかし、全く真逆のトライアルタイヤは、ブロックの高さが無く、サイズも小さく間隔が狭いけど、接地面積の広さとコンパウンド、トレッドやサイドウォールの柔らかさで、路面を掻くのではなく捉える事でグリップを生み出している)
ここから考えられる選び方としては、
マディー向け(サイドウォールは固め、トレッドは柔らかめで接地面は広げたいが、各ブロックへの圧が逃げないよう潰れ過ぎない剛性感があるタイプ。ブロックは高め、大きめ、間隔広めで、しっかりと泥を掻き出して、地面を引っ掛ける強さと排土性。ブロックは固めだけど、MXみたいにカチカチではなくほんのり撓んで角が残る感じ)
ドライ向け(飛ばすならサイドウォールは固め、難所系なら柔らかめ。トレッドは柔らかめで潰して面でグリップさせるタイプ。ブロックサイズは小さめの方が喰いつきが良い感じ。大きいと持ちが良く、撚れづらいのでパワーがあるバイク向け。間隔は広い方が当然排土性が高いが撚れやすく、接地面積も減るので路面次第。土系なら広く、沢とかガレなら狭いタイヤ。ブロックは柔らかめのガミーを。固めだと柔らかい路面は良いが、根っこやガレで苦戦する可能性あり)
沢や岩盤、ステアケース向け(サイドウォールもトレッドも柔らかめで、タイヤ全体で包み込んでグリップさせるタイプ。ブロックサイズは小さめ、間隔狭めのトライアルタイヤか、それに近いパターンのAT81-EXが接地面積やパターン的に強い)
以上でタイヤ考察は終わりです。ここまで書いておきながらまだJX8を履いてないので、今の手持ちのSHINKOを履き終わったらIRCにまた改宗しようかな…。
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