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【蹴りたい親の背中】してあげたかったことは何もできなかった

男の子が欲しかった。
ちょっと大きくなったらキャッチボールしたくて。
念願通り、男の子が生まれた。
ちいちゃい時は球を投げても全然届かず
キャッチボールにはまだまだだねぇ、と思っていたら
下の子が生まれキャッチボールなんかするヒマがなくなった。
ようやくそんな時間ができて「よーしこい!」と
グローブはめて構えたら怖くてよけてしまいそうな速球が飛んできた。
下の子につきっきりになっている間に
私では相手にならないくらいになっていた。
男の子は中学生になってテニスを始めた。
スポーツに全然興味がなく何もしていなかったのに
男の子はテニスが大好きになった。
休みの日には一緒にテニスしよう、と思ったら
下の子も一緒にしたがるのであまりちゃんと教える事はできなかった。
そのうちいつもついてくるのを疎ましがるから
旦那がテニスに連れて行き
私は下の子をどこかに遊びに連れて行くようになった。
久しぶりに時間ができてやっと一緒にテニスをしてみたら
以前ネットにひっかかってばかりだったボールは
ネットすれすれにとんでもない早さで飛んできて
私が振ったラケットを通り抜けて後方へすっ飛んでいった。
私ではもう相手にならなくなっていた。
だからもう時間が空いても学校のテニスの仲間や
旦那の知り合いの上手な人たちとしかやらなくなっていた。
今日たまたま二人になって
学校の仲間も今受験勉強で大変だし
何もできないよりは、と
私とテニスをしてくれた。
日頃何も運動していないけどがんばった。
球を返すのがやっとだった。
力なく変な方向に飛んでゆく球。
ラケットに当てるのがやっとで
とんでもなく高くへろへろとあがる球。
楽しそうに容赦なくエアKでするどい球を返す中学生。
近づいて来て言われた。
「ママ……か弱い。」
二年前はろくに球返せなくて全然ラリー続かなくて
私がイライラしてたのにな…。
スキーだって年に一度や二度しか行かないのに
私がスキー場の下のほうで下の子と遊んであげている間に
いつの間にか一人でゴンドラで頂上まで行って
何度も何度も滑り降りてくるようになっていた。
一緒に滑るのが夢だったのだが
やっと一緒に滑れるようになった時は
男の子は滑り方を忘れた私のずっと先を
すいすいと楽しそうに滑降していた。
もうお前に教えることは何もないな、フッ…
…て  何も教えてないな…orz

 これは6年前他県の高校に長男が旅立つ春休みに
 つらつらとぼんやりしながら書いたもの。
 今も旅に出たまま遠方の地でのびのびと大学生活を楽しんでます。
 旅のカエルさんなので気まぐれにふらっと帰っては
 かーさんをびっくりさせて一瞬で帰って行きます。

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