東京にきて2週間が経ちましたが

「東京の街に出て来ました あい変わらずわけの解らない事言ってます」

と歌うくるりの曲に実家のような安心感を覚えるが、それは固定概念に縛られているだけで、僕は親とのいざこざに嫌気がさして、実家から逃げ出してきたのだった。

隣のおっさんが時々放つ奇声にビビりながら、確実にC6の席に座っている。僕の右腕の毛の上をカーテンの隙間から漏れるオレンジの光が高速バスよりも速いスピードで走っていく。

家に到着するまでは、妙な高揚感が身体中を覆っていたけれど、家に着いて台所に蜘蛛の巣が張っているのを見た時、それが一気に剥がれ落ち自分が何者か分からなくなった。

5.5畳とロフト・ユニットバス付き家賃3.5万という貧乏エピソードとして話すにしては弱い部屋に住むことになった。ここにおれのプライドとズルさの全てが詰まっているような気がする。

散歩に出かける。東京といっても僕が来たのは23区外の端っこで、周りはスナックや食堂で溢れていた。でもこっちの方が好きかもしれない。

1週間くらい金を使いまくった。ソファーやラグ、洗濯機や冷蔵庫や安い方と迷って結局選んだちょっと高いかっこいい自転車。無職にしては使いすぎている。

あれ?おれってここに何しにきたんやっけ?

取ってつけたような関西弁で誤魔化す。


焦って制作を始めるが、部屋の湿気が凄すぎて次の日の朝、完成した作品全てがヨレヨレになっていた。まるで将来の自分を見ているみたいで嫌な気持ちになった。

2週間が経って、少し生活が落ち着いてきた。そろそろアルバイトを決めないといけない。

家から5分くらいのホームセンターに応募した。時給1070円。地元から比べたらかなり高い気がするが受かるか不安だ。

夜、また散歩に出かける。誰かと話したくなるけど、もうおれ以外全員眠ってて欲しい気がしている。ここにおれのユニークと優しさの全てが詰まっているような気がする。

とにかく、パスタを茹でながら毎日を友達たちに助けられて、それなりに楽しく過ごしている。IHだとお湯が沸くまでにかなりの時間がかかるので、『風の歌を聴け』を3周も読んでしまった。

「本なんてスパゲティーをゆでる間の時間つぶしにでも片手で読むもんさ」

山本へ ノルウェイの森 早く返せ

雲へ 流れすぎ

川へ 流れすぎ

日産へ やっちゃえ

東京にきて2週間が経ちましたが、こんな感じです。
また報告します。


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