映画『99.9-刑事専門弁護士』を観たぞ。※超ネタバレ注意

https://movies.shochiku.co.jp/999movie/

年の初めの映画鑑賞。元々ドラマが好きで映画めちゃくちゃ楽しみで年末スペシャルドラマもきっちり録画して視聴済み、万全の状態でレイトショーに行った。結論から申し上げると大満足、期待通り面白かった。このドラマの良さは、脚本と演出に役者の演技がガッチリとハマった絶妙なバランスにあると思っている。松潤を中心としたキャストの掛け合い、ふざけた場面をどんな風に見せるか、ツッコミのリズムが独特で私は好き。榮倉奈々、木村文乃の歴代ヒロイン(この表現が正しいかは不明w)のキャラ設定が面白かったので杉咲花がどうくるのか興味津々だったけど、流石というしかないね。いいね!パー子師匠みたいな笑い方(笑)。当たり前だけど、そこには恋です!のユキコさんの影すら見えない。そんな訳で大満足(二回も言っちゃったw)な今作、オススメです。

つまり、私がこの99.9の魅力をエンターテインメント的なバランスの良さに感じているのであって、物語の深いところには見出していない。それが悪いとも思っていない。

しかし今回の事件と結末について、どうしても心に引っかかるものがあり、どこかに吐き出す必要があるのだよ、個人的にね。

ここからネタバレ

15年前に起きた天華村毒物ワイン事件というのがこの映画の主たる案件。実際にあった出来事として名張毒ぶどう酒事件を想起されるが、時代的に和歌山毒物カレー事件も念頭にあるように思う。というか、私はそっちの方をすぐ思い起こした。何故なら(直接関係がないのだが)それなりに身近な出来事であるから。事件関係者を知っているという人が身近に多く、被害者家族にも知人がいる。20年以上経った今でも、軽率に考えを述べられている事件ではない。

映画の話に戻る。祭りで振る舞われたワインに毒物が混入、4人の死者を出したこの事件の犯人とされた男性は他所から家族で移住してきた所謂よそ者。無実を訴えていたが状況証拠だけで死刑判決、妻は心労で体調を崩し死亡、男性も控訴中に獄中死してしまい残された幼い娘を西島秀俊演じる南雲が育てていたという話。結局犯人は地元の男児二人の悪気のない行いだったわけで、子供たちの将来を心配してという理由で村人総出で男性に罪をなすりつけたという話。

薬品を持ち出した男児の父親は言う「私が悪いんです。子供たちに薬について詳しく説明せず、ワインを美味しくするものだとしか話していなかったから」

その通りだよ、悪いのは大人。それを子供のためにと言っている時点で罪を免れようとしている。4人も死んでるんだ。罪を着せられた人物に死刑判決が出ることくらい容易に理解出来る。よそ者であること、後からワイン造りを始めたのに誰よりも成果をあげる男性への嫉妬心。そんな感情が影響していないとは言い切れまい。身内を守るためなら細かいことには目をつむる、言いたくはないけど村社会の悪いところだと思う。

事件の真相がやるせないものだとしても、真実を明らかにすることの重要性(ここでは理由もなく家族を奪われ世間の非難にさらされる娘のため)が説かれていると思う。でも、ひとつスルーされてるよね?事件で亡くなった人の遺族の感情。その人たちはこの誤魔化しに加担していた?それともその人たちにも隠していた?隠せた?当時の大人たち、かなりの人数が知っている事実。思わぬ事故で失った家族、悲しみは深いはず。なのに真相が明らかにされないどころか村八分的な陰謀のネタにすり替えられたなんて。嘘は誰も救わない、これに尽きる。

ここまで見て、カレー事件ことを考えて、ちょっと心配になったのは「あの事件もこういうことだったんじゃないの?」と軽率に思われてしまうのではないかということ。映画は映画、事実は事実。実際の事件も獄中の彼女は一貫して否認しているので思うところはあるけれど、勝手な想像を膨らませたくない。情けない話だけど、私にはこれ以上考えられない。

映画の最後、無実の罪を着せられたまま亡くなった男性の墓の前で遺児である娘と出くわした青年(当時の男児)は頭を下げるだけで名乗ることも出来なかった。安い脚本なら泣きながら謝罪させただろう。でも実際はこんなところだろうなと凄く納得した。彼はこれからも重いものを背負いながら生きていかなくてはいけないだろう。

と、ここまでいろいろ書いたけど、やっぱり映画は面白かったのでまたドラマでも映画でもやって欲しいもんだなと思った次第。

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