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「なぁぜなぁぜ」

 TikTokで現在「トレンド」となっている「なぁぜなぁぜ」。この流行りがTikTokというフォーマットで生まれたことを考えていきたい。

「なぁぜなぁぜ」とは

 ピンマイクを手に持ち、世の不条理や矛盾から日頃の疑問に思っていることなどを「なぁぜなぁぜ」の言葉で3つほど問いかける動画。今年の春頃から徐々に発生し、現在流行中。アプリで検索してみると「トレンド」に指定されている。

2023.6.14 12:30スクリーンショット


TikTokのヒットとは

 先頃、2023年上半期のTikTokチャートがビルボードにおいて発表された。

 個々の楽曲についての解説は別の機会に回すとして、TikTokを軸にしたブレイクの事例は数多くみられるようになり(ランキングに登場する有華も昨年「Partner」のTikTok経由のヒットで日本コロムビアからメジャーデビュー)、既存のアーティストの参入も増加するようになってきた。
 TikTok経由のヒットと書いたが、もちろん他媒体と「ヒットの方法」は異なる。レコードやCDなら売上、ラジオなら流れた回数、音楽配信ならダウンロード数、ストリーミングなら再生数と決まった指標があるが、TikTokの場合ならどうなるか。ビルボードのTikTokチャートの集計方法について、公式ではこのように紹介されている。

ショートムービープラットフォーム「TikTok」上における楽曲人気を測るチャート。動画において楽曲がどのように使われ、視聴されているのかを数値化したデータをTikTokから受領し、ビルボードジャパンが独自開発した係数を乗じて上位20曲までのランキングを生成します。

About Charts |  Billboard JAPAN

 この記述によれば、TikTok側が数値を提供していると読み取れる。となれば、TikTokで表面的に表示される数値がヒットを示す数値として何らかの形で利用されているはずである。
 現在TikTokのアプリユーザーがヒットを確認できる指標としては、前述した「トレンド」表示、そして「ハッシュタグ」表示、楽曲であれば「楽曲」の使用動画数表示(数が多ければ「人気」表示がつく)などがある。このうち「トレンド」表示はアプリ側が付与するものなのだが、後者2つは違う。
 「楽曲」の使用動画数表示は、楽曲が動画に紐づけられた合計数を計測するものである。「ハッシュタグ」表示は動画に添付されたコメントのハッシュタグ数の合計を計測するものである。また同じ「楽曲」「ハッシュタグ」なら類似のフォーマットにのっとった動画となることが多い(後者の場合は特に)ため、数値が大きい=ヒットは「そのフォーマットがどれだけ真似されたか」を示す指標となっているわけである。

「なぁぜなぁぜ」の「本家」とは

 TikTokのヒットが「どれだけ真似されたか」の指標であるならば、「バズらせる」ことは「どれだけ真似させるか」を意味するわけで、クリエイター自身が「本家」になりたい、ということを意味することになる。そのため、真似する側は自分の動画が見られるためのフックとして「ハッシュタグ」をつけるのはもちろん、「本家」をメンションして「本家」にも言及することがある。またユーザーも「本家」を知りにいくことがある(サンプリングされた楽曲の元ネタを掘ったり、パロディ元を確認したりするようなもの)。
 「なぁぜなぁぜ」でいえば、「本家」問題が表面化したのを知ったのはこの投稿がきっかけである。

@momoarisa_tik

ちょっとふざけて撮ってみた【なぁぜなぁぜ】が広まってて嬉しい❣️櫻井優衣様まで届けっ#ももらんどの日常#ファブリックセブン

♬ オリジナル楽曲 - 桃園ありさ🍑 - 桃園ありさ🍑

 徐々に広まってきたのに、「本家」以上のバズが周辺で生まれたことに動画で触れている。

 クリエイター・桃園ありさが「本家」投稿をしたのち、毎日のように「なぁぜなぁぜ」投稿をし、「なぁぜなぁぜ本家が通りますよ💃」「本家なのでもっとバズらせてください」などアピールを続け、見事再生数を伸ばした(最初の「本家」投稿を含め、本人にとって初の100万回再生を3つ達成)。また、勘違いからかコメントで「本家では?」と指摘された経験もあるあいさ、あるある投稿の多い古森もぐなども続いてバズを記録した(それぞれ100万回以上再生を記録)。もちろんフォロワー数や知名度数に違いがあるため再生数で一概に比較はできないが、真似しやすく広がりやすいという点を踏まえてヒットコンテンツと呼んで差し支えないだろう。

@aisa__tiktok

そういうことならあいさも本家で行こうかな❤️嘘です❤️IB@momoarisa_tik #あいさの日常#あいさ#渋女

♬ オリジナル楽曲 - あいさの日常 - あいさの日常

 ただ、本家問題で混乱のもとになったのが、流行を受けて発信された次の投稿である。

 この動画の中で、「なぁぜなぁぜ」は「なぁになぁに」の進化版であるという言及があり、個人的にも衝撃だった。確かにそういう歌詞はあるが、似ているだけではないのか、さらに本家という人の存在もあるしという感想を持っていた。それがあっての今回の記事である。
 この動画には、メンバーの櫻井優衣のコメントも寄せられていた。

2023.6.14 12:30スクリーンショット

 また、本人の公式TikTokアカウントからも発信があった。

2023.6.14 12:30スクリーンショット

 この歌詞が登場するFRUITS ZIPPER「ハピチョコ」は、一部ライブで「ライブ映像を撮影可能」という指示が出され、TikTokでのバズを念頭に置いたプロモーションが行われた。決まった振付を設定し、運営側が押し出していたのはこちらのパターンの動画。

 この曲は2023年の2月リリースで、バレンタインデー・ホワイトデーを見据えた楽曲。実際にTikTokチャートにも入ったが、以下のような動画がつくられ、予期していないバズりを生んだことになる。

@re121519

奇跡の一瞬で好きになれ💚☺️🏹 2023.02.10 女性限定ライブ FRUITSZIPPER ミントグリーン担当 櫻井優衣ちゃん 最前推しカメラ ねぇ〜 呼び出しなんて なぁになぁに?♡ #櫻井優衣 #FRUITSZIPPER #ふるっぱー #teamyui #ハピチョコ #アイドル #推しカメラ #チッケム #なあになあに #idol #ファンサ #ファンサービス

♬ ハピチョコ - FRUITS ZIPPER

 これを踏まえて桃園ありさの投稿を振り返ってみると、確かに櫻井優衣からの影響が感じられる。

 3月13日の投稿。「ハピチョコ」のリリースから1か月ほど経過している。この中で「なぁぜなぁぜ」が生まれ、これが時間をかけて波及していったというのが流れといえるのだろう。「なぁぜなぁぜ」の本家としては桃園ありさ、その元ネタは「なぁになぁに」の櫻井優衣、といった感じか。
 ただ個人的には、箱崎愛華の投稿も一連の流れに直接関与はしていないもののユーザーに影響を与えていると思う。3月15日からしばしばやっている流れの中に「なーになーに」が登場する。

おわりに

 「なぁぜなぁぜ」はダンススキルも楽器の能も必要なく、内容さえ思いつけばすぐ真似できるフォーマットとなっている。おそらく今後1か月は流行を続けるだろう。そして早くも3つ目のバズりを生んだFRUITS ZIPPERの勢いには感服するばかりである。
「なぁぜなぁぜ」が更なる流行に「なぁれなぁれ」!!


引用等

FRUITS ZIPPER 公式Twitter (@FRUITS_ZIPPER)
                         公式YouTubeグループ公式YouTube
       公式TikTok
Billboard JAPAN 公式Twitterの記事
Billboard JAPAN About Chart
Billboard JAPAN TikTok Weekly Top 20
日本コロムビア 有華:プロフィール

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桃園ありさ🍑 
箱崎愛華
ヌーベルスタイルグループNSG21
まこつ@中古車屋さん
あいさの日常
古森もぐ
れい☺️🏹💚
松本かれん( まつかれ )
櫻井優衣(☺️)


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