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TikTokヒットの新常識? リリース前から盛り上がった3つの事例

 TikTokから様々なヒット曲が生まれ、ミーム化する例が増えている。その中でも最近目にする機会の多い3つの曲の共通点について紹介していきたい。


TikTokのヒット曲

 先日、Billboard JAPANがとりまとめた『TikTok Weekly Top 20』が発表された。猫ミーム(7位)、世界規模でのヒット曲(1位)、振り経由でヒットが大きくなった曲(2・3・4・6・10位)など流行の一部を垣間見ることができる。

 その中で別の共通する要素があるのが2位と4位の曲である。リリース前に既に盛り上がりをみせたという点である。今回はこの2曲、そして昨年ヒットしたある1曲の計3曲のリリース前の動きを見ていきたい。

例1:乃紫「全方向美少女」

 2024年1月にリリースされた乃紫(ノア)の楽曲。"正面で見ても横から見ても下から見てもいい女で困っちゃう" という歌詞に合わせてスマートフォンのカメラの画角を移動させるというフォーマットで一躍ブレイク。難しい振付が必要なく、女性なら誰でも参加しやすい(男性の投稿も一部ある)こともあって日本以外にも波及、インフルエンサーにも幅広く受け入れられてバズった楽曲となった。楽曲使用は146.7K件を記録し、総再生回数は14億回を突破したとも報じられている。

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@mananchos

金髪になるエフェクトすごい

♬ 全方向美少女 - 乃紫

 しかしこの楽曲、リリース前には既に総再生回数が4億8千万回を突破しているのである。それはなぜか。それは2023年11月24日、既に以下のような投稿がなされていることに起因している。

@noa_aburasoba

自己肯定感ブチ上げる曲作ったよ

♬ 全方向美少女 - 乃紫

 この段階では曲名も公開されておらず、公開されていた部分もこの部分のみ。のちに11月28日の投稿ではハッシュタグに「#全方向美少女」が登場し、12月6日の投稿では以下のようなコメントと共に振付指南が行われた。

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 これを受けて翌日12月7日にはインフルエンサーのMINAMIの投稿もあり、振付込みでブレイクに拍車をかけることとなり、12月中盤になるとさらに伸びていった。この流れで12月22日の投稿にて、翌年1月5日のリリースを発表、元動画にもコメントでその旨が書き込まれた。リリース日前日の投稿ではリリースのお知らせが改めて出され、そしてリリース日以降最初の更新となった1月10日付のTikTok Weeklyでは初登場2位を記録。最新更新まで3位以内に入り続けるヒットとなっている(1位も2週記録)。

例2:Nozomi Kitay & GAL D「Moshi Moshi feat. 百足」

 同じく2024年1月にリリースされたNozomi Kitay(ノゾミ・キテイ)がビートメイカーのGAL D、ラッパーの百足を迎えてリリースしたHIP HOPナンバー。Sped Upバージョンのサビ部分を流し、歌詞に合わせた振付がつけられてブレイク。楽曲使用は80Kを突破している。

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 この楽曲のリリースは1月24日だが、それより前、「全方向美少女」より前の10月29日に「#未発表曲」というタグで投稿が見つかる。そして11月15日にはSped UpバージョンがTik Tokで公開された。

 この2日後に元ローカルカンピオーネのKOHが振付で取り上げ、その効果もあり広がりを見せるように。その少し前の11月8日にはデモ音源をSoundCloudにて公開(本人のインスタグラムストーリーより)し、リリースに向けて11月22日の投稿などで繰り返し発信を行った。

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 1月10日の投稿では "すでに10000件以上も 投稿してくれてほんまにありがとう" とコメントし、リリース前からの盛り上がりを報告、その翌日にはSped Upバージョンのデモ音源をSoundCloudにて公開(本人のインスタグラムストーリーより)した。1月20日の投稿にて "来週リリースに決定" とコメントし、1月22日の投稿ではラッパーの百足が客演していることが明かされ、リリースを迎えた。そして1月31日にはSped Upバージョンも配信され、この両バージョンが共に集計される初めてのチャートにて初登場3位を記録。4週連続で4位以内にチャートインしている。

例3:音田雅則「fake face dance music」

 前2曲とは異なりリリースは2023年7月。ビルボードのチャートには2週(しかも隔週)でのランクインと数字は伸び悩んだ印象もあったが、YouTubeでの再生回数は2317万回(2024年3月1日現在)を記録し(別バージョンやTopicの動画も含めると更に700万回ほど増える)、ショート動画での再生回数も51万回を記録している。既にこの前に「ウエディング」という1000万回再生を記録したヒット曲もあるので前例2つとは若干違う立ち位置でもあるが、新常識フォーマットの中でも重要な位置を占めていると考えて取り上げる。この楽曲はエフェクトを使った自身の「盛れ」を演出する動画や、KOHの振付などでも話題になった。

@0808sakura

リクエスト多かったやつしてみたよ

♬ fake face dance music - Sped Up Ver. - 音田 雅則
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 この曲については、既に2月2日に「オリジナル曲」として投稿されていた。その後動画の内容を変えながらヒットした "あなたにこの心をハイジャックされた" 部分をBGMに何度か投稿を行った。いずれも原曲のスピードであったが、じわじわブレイクしていた中でのKOHの投稿(6月9日)以降はSped Upバージョンの使用もよく見られるようになった。この影響もあったのか、6月17日の投稿で7月11日リリースが発表になったのち、8月15日にSped Upバージョンの29日リリースが発表となった。

リリース前からの盛り上げ策

 SNSに曲の一部を先行公開し、"フルまだですか" のコメントが溢れる中で、じらして曲のリリースを発表する。CM部分しか制作しておらず、好評のためフルを急遽制作したヒット曲が90年代などにはよくあったがそのパターンともいえるだろう。"フル待ってます!" などのコメントをするようなファンとはリリース前のカウントダウンの投稿を行うなどして一緒に盛り上げつつ、曲の一部だけでも(時にSped Upも用いて)広げる。「〇〇が歌っている歌」という知識がないままでも曲の一部を広げ、仮にリリース後の高順位に繋げられれば業界関係者の目にも留まりやすい。また好評であることがリリース前から期待できていればリリースのしやすさにも繋がるだろう("フル聴きたいの要望が多かったらリリース早まる可能性あり" など度々歌手本人がコメントで言及している)。
 TikTokという短い時間で届けるフォーマットならば、"曲のワンフレーズだけ切り取っても、強烈に一瞬で記憶に残る" ような工夫が多くされているのはユーザーなら気づくところであるが、それを曲のリリースに結び付けることが、もしかしたら既に新常識(令和のTikTok向けに再定義されてはいるが
)となっているのかもしれない。

引用等

歌詞 歌ネットより
Billboard JAPAN TikTok Weekly Top 20
日テレNEWS
音楽ナタリー
THE MAGAZINE

TikTok
 乃紫(noa)
 Nozomi Kitay
 音田雅則Otoda Masanori
 水野舞菜🦥🤍
 🦄💙MINAMI💙🦄
 aespa official
 🌸桜🌸
 KOHKUN
 





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