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けれちゃんの繁殖 その3

光りかがやく星を失わなかった。

望みというのは、完璧な形ではなくとも、おおむね半分は叶うものだ。
望んだ全てが望んだ通りの形で叶わなかったからといって落胆することはない。求めて手に入らなかったものは必要のないものだ。求めたうちの半分だけ手に入ったとしたら、それは望み方を間違えていたのかもしれない。

自分の望み——自身の意志の下にあるかに見える望みが、自分にとっても間違っている可能性を知ること。そしてあるべき形を受け入れること。たとえ望み方を間違えたとしても、世界は、正しい形、望むべき形、本当に望ましい形で必要なものを与えてくれる。そのようにできている。

人生はまったく自然に、あるがままに導かれる。

光りかがやく星を失わなかった。それは私の人生に必要なものであった。それは私の望んだ形ではなく、私にとって最も望ましい形で、私に与えられることとなった。最も望ましく、最も美しく、しかも永遠性を帯びた最良の形で。

私の生はすでに私の手を離れている。
私の生は私として切り離されたものではなく、「世界として」、世界の一部ではなく世界そのものとして、唯一のあるべき様相をとって、正しくも誤りもせず、在る。
私は全であり全は私である。ここにあるのはただそれだけ。

「帝国を築くこと」——帝国を築くことで生じる帝国は、望ましい形で私に与えられたものあるいは者、によって構成された、私がそこに君臨するべき帝国、私がそこに在るべき帝国、私だけがそこに在りうる、至上の美しさを誇る、私の帝国なのだ。

(これだってきっと欲望なのだが、自制を失い暴走する情動に身の支配権を明け渡すような類の粗野で無垢で原始的なものでは決してありえない。ここもまた一つの、他には何もないが品性だけがある場所なのだろう。もしくは、他には何もないが愛だけがある場所。他には何もない場所で幸せに暮らすこと。甘美な靄を湛えた選択。二人きりのことを、あるいは一人きりであることを、誰も誰も害せないのだから。)

星は私の傍で私を煌々と白く照らすだろう。私は私のもとに在るその星を愛し続けるだろう。
ようこそお越しくださいました。あなたが私とともに在る美しい生を、私はずっとずっと望んできました。
私を見つけてくれてありがとう。お返しに、心の限りあなたを愛しましょう。
私の愛をうけて、どうか永く永く発光していてください。