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夏休みの日記 6週目

8月4日(水)夏休み35日目 そんなに眩しくない晴れ

7:00起床。
9:30の新幹線に乗るべく余裕を持って出かけるも、肝心のチケットを予約してあるSuicaを忘れて取りに戻る羽目に。
「あなたはちょっとうっかりなところがあるよね。以前は意外でしたが、だんだん慣れてきました」と親しい人。
そう、私は本来忘れ物をしがちなぼんやりおっとりした子なんですけど、人前では気合と知性で抜けているところを隠していて、しっかり者に見えるでしょう? ふふ……。一人のときは本来の自分に戻ってしまって完全にまぬけです。

・新幹線 10:00〜15:00
東京から博多まで5時間の新幹線移動。新幹線に長時間乗るのも久しぶり。好きなんだよね。
本を読んでうとうとして、サンドイッチを食べてうとうとして、また本を読んでうとうとしているうちに到着。
子供みたいにすぐ眠くなっちゃうのは夏休みのせい。集中して読むつもりだった本には手もつけられずじまい。

・実家(英語) 16:00〜
父方の土地に母が新築した家が今の私の実家。生家は祖母と一緒にだんだん老いている。
以前母にプレゼントしたFireStickTVをおもいのほか活用してくれているようで、AmazonPrimeで観た映画の話をしてくれた。
晩ご飯を食べつつ一緒に『華麗なるギャツビー』を眺めて、時々セリフを復唱して英語のお勉強。
I beg your pardon. という表現を母に叩き込んでいたら「pardonってフランス語なんでしょ」と意外なコメント。元はね。
語幹を覚えれば語尾を派生させることで語彙がどんどんふくらむという英単語のシステムを母はとても気に入っているようで、本質を理解していてえらい。子供たちに英語を教える時、子供が意味を思い出せなかったり知らなかったりする単語が出現するたびに「この-tionは」とか「語頭のcon-は」とかいろいろ話して聞かせていたんだけど誰もが頷きながらさっぱりわかりませんみたいな顔をするばかりでちょっと残念だったことを思い出す。あれ全部母に対してやってあげられれば私も幸福だったのにな。
2人でワインが3本あいた。母娘ともども、ものすごく飲む。

8月5日(木)夏休み36日目 車に乗ると暑いね

9:30起床。
午前中は母と一緒に英語のお勉強。
母はYoutubeの語学チャンネルで簡単なフレーズを勉強している。
私も持って帰ってきた教材をめくって英単語の復習を少しだけした。

・祖母 11:00〜15:00
生家に住む祖母に会いにゆく。
外出もできず人との交流も絶たれて、祖母は驚くほど衰えていた。髪が薄くて直視できない。
数年前に誕生日に口紅を贈った時は「口紅をプレゼントでもらうなんて初めて」と大喜びしてくれて、会いに帰ればそれをいそいそと着けてくれたものだったが、そんなことももうすっかり忘れてしまったみたい。以前は定期的にパーマをかけに通っていた美容室へももう行っていないようで、放置していても髪が伸びないくらいには衰えている。
お昼は埋立地のタワマン街に新しくできたチャラい寿司を予約しておいた。おすしだいすきクラブ活動。
衰えているが、私と母が満腹になるくらいの量の懐石コースをぺろりと食べ切る祖母。この人は小さな体なのにどんなに衰えてもフレンチでフルコースを食べきれる謎めいた胆力がある。どういう生命力なのだろうか。体が弱く、40で死ぬだろうと言われていた人が95まで生きている。
私の結婚がどうとかはもう話題にのぼらなくなった。昔話しかしない。私が小学生だった頃、一緒に出かけたバスツアーの写真を手帳に入れて持ち歩き、毎日眺めているのだという。あの人の思念のなかでは私はもう成長していないのかもしれない。
まあいい、構わない。老人は幸せな夢を見ていてくれればいいと思う。
祖母と母と寿司を食べながら携帯電話越しに私は遠くの他者と私の人生を謳歌する。

・病院 16:00
父には会えないらしい。入口で母が看護師さんから洗濯物を受け取る。
「お変わりなくお元気ですよ」と看護師さん。寝たきりで正常な認知も叶わない状態の元気ってなんだろう。

・メール 17:00〜19:00
やっと読み終えた本の感想を伝えがてら、最近もやもや考えていたことについてメールをしたためる。
文章ではあんまり上手に書ききれなかった。文章で断言するにはあまりにも繊細な前提が多すぎるもやもや。
すべてはきちんと現在の親密さに繋がるのだけれど、多分私の方が言葉を濁してしまうだろう。

・『YESTERDAY』ほか 18:00〜23:00
母と映画を眺めながら晩酌。この夜は(主に私の飲み過ぎにより)ワインが4本あいた。
ビートルズの存在が消えた世界でビートルズの曲を発表してスターダムをのし上がるインド系の男の映画を流し、知ってる歌がいっぱいで楽しいね〜と和気藹々。ラストのラブロマンス展開はやや不服だったが、お茶の間に流すにはいい映画だった。
ポールはまだ歌っているんだよというのを母に教えたくて「NEW」の動画をYoutubeで流すも、曲がすでに7年も前のものであることを知って愕然。嘘でしょ。NEWはとてもいい歌なので3回流した。

一度Youtubeを開いてしまってはもうBTSを流すしかないので(そうなの?)母親にBTSを見せて「かわいいでしょう!かっこいいでしょう!ほら!」と同意を強要しまくる。広義のDVだなあ。
IMFの韓国経済への介入が1997年で、それ以降芸能のソフトパワーへの産業シフトがあったのだ、2000年代の韓流ブームを皮切りに韓国の芸能は世界を席巻するレベルにまで至ったのだよ、と蘊蓄。
母の韓国嫌いが炸裂しそうになったので「国家としての韓国をいくら嫌ってくれても構わないが、個々の韓国人はかならずしも悪人ではないでしょう」と諭すと「それはそうだと思ってる」と鎮まってくれた。
20代前半のころはこのあたりの話題(戦争責任論争)が出たらもう大げんかになって収拾がつかなくなってその場で翌朝の飛行便を予約して無言で家を去って東京に帰っていたものだったが、私も母も大人になりました。

母が寝たあともだらだらと一人で飲み続け、深夜3:00に就寝。

8月6日(金)夏休み37日目 ドライブ日和

8:30起床。9:00から会議のため。
むくみすぎて原型をとどめていない。

・会議 9:00〜10:00
眠そうだねと画面の向こうの元同僚に笑われ、そりゃ眠いっすよと理不尽にキレる。
抱えていた大きな案件の引き継ぎがとにかくひたすら終わらない。母がアイスコーヒーをそっと差し入れてくれた。

・エステ 14:30〜16:00
母がお世話になっているというフェイシャルエステの店に連れて行ってもらう。
施術で肌のトーンがかなり上がって、なるほど角質の……なんだっけ……古い角質がちゃんと剥がれず肌にとどまってる状態がくすみなんだって。お掃除してもらって新しい細胞がお目見えしてペカーッ!!
皮膚をましにするためにはとにかく皮膚科に行っておけばいいのかと思いきや、肌質を改善するためにはそれでは足りないらしい。美容は難しいな。
エステティシャンのお姉さんと話すと、私よりも母のことをよく知っている。
これからもうちの母をよろしくお願いします、という感謝の気持ちを込めてクソたっけえサロン専用クレンジングミルクを購入。こんなに高いのにダブル洗顔いるんだ。へ〜……。

・薪能 19:00〜21:00
志賀島をめざして、また母親とUAを聴きながら海辺の夕日を眺めるデートをしてしまった。

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志賀海神社で薪能を鑑賞。神事への参加って初めて。境内が舞台になっていて、松明が焚かれていい雰囲気。
翁のあとの脇能のわだつみは、能に親しまない市民たちを少しでも楽しませるべく能楽師の片山伸吾がかなりアレンジを加えた舞になっていて、アップテンポな謡にのって回転し飜る素早い舞が披露された。幕間にも喋りの上手な能楽師さんによる解説が挟まり、観客をエンターテインし能を親しみやすいものにしようとする努力が垣間見える。厳格な神事としての薪能という感じではなかったけど、これはこれで楽しい。島にツーリングに来ているバイクの轟音が麓からかすかにのぼって、能の謡にまざる。
客層がかなり謎で、一般市民にお能の関係者らしきしっとり老人、区議会議員の妻と長男かな?といった不自然なほどぱりっとした着こなしの二人組など。逆に私たちが何者なんだろうと思われていそうな雰囲気だった。
能の鑑賞を終えて駐車場に降りると、暗い島の空に星が澄んで大きい。

なんだか盛りだくさんで疲れてしまって、少しお酒を飲んで25時には寝た。

8月7日(土)夏休み38日目 雲が嘘みたいにもこもこ

9:00起床。
起きて母が朝食に作ってくれたサラダを食べつつ、本の感想メールを著者に書き送る。
本当におもしろい本で、夏休みの前半に読み終えて感想を伝えよう伝えようと思いながらずっと手をつけられずにいたのだが、ようやく書き終えて送信できた。清々しい達成感。

・カレーのアキンボ 12:30〜15:30
実家から1時間近く車を走らせ、佐賀のカレー屋へはるばる赴く。
何年も前からずっと行ってみたかったレストランで、カレーを主軸としたコースを提供してくれる完全予約制のお店。佐賀の、とても公共交通機関では辿り着けないところにあって、車で連れて行ってもらえて助かる。店主は穏やかで朗らかで物腰やわらかで陽気、なのだが圧倒的な自信をもっていることが伝わってくる強度の持ち主だった。

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1皿目はスパイスに漬け込んだゴーヤと焼いた胡瓜の冷製。ゴーヤは苦味と辛味、そして塩味がうまく調和しており、ほとんど味をつけていない胡瓜がその刺激をやわらかく受け止めるのが見事。鮮やかな緑色のオイルで合わせてあったが、何オイルかは舌ではわからなかった。

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2皿目も冷製。馬刺しの底には無花果を軽くソテーしたものが敷いてある。「これだけだと甘くなりすぎてしまうので」、スパイスとオイルに漬けたエゴマを塩のアクセントとして飾ってあった。ここで馬がでてくるのが地産地消へのこだわりを思わせる。

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うまく撮れなかったけど、3皿目はかなり絶妙な配合で母も私も大喜びした一品。バターナッツ南瓜のペーストに焼き茄子、上はチェダーチーズだったはず(こんなに白いのにチェダーなの?と思った覚えが。チェダーじゃないかも)。スパイス類で調味。チーズのまろやかさが素材を結んでめっちゃフーゲ。ヘクタールで食べたい。写真がうまく撮れなかったけど、器もすごくよかった。

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4皿目鰤カマ。スープにスパイスが効いてる。

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5皿目のキーマカレーは牛。挽肉じゃなくてちゃんと叩いてある。

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6皿目は野菜のカレー。どの野菜も丁寧に調理してあって、ラタトゥユの下ごしらえを思わせる。レンズ豆のマッシュと玉ねぎを赤くつけたもの、レモンライスと混ぜていただく。混ぜれば混ぜるほどうまい。混ぜる文化最高。

デザートのプリンはカラメルを八丁味噌で作ってあって、新鮮な生クリームを使用したプリンベースとすごくマッチした。初めて食べる味にびっくり。コーヒーもすごく美味しかった。

広い平屋の一軒家を改装した店内は風が吹き抜けてとても明るい。コースのみ、お酒はなしで白湯が供されるのがとてもカレーっぽくていい。すごく素敵なお店だった。また行きたいな。お店のInstagramはこちら

・ワクチン接種 16:30〜17:00
東京であまりにも予約がとれないので帰省にかこつけて実家の近くのクリニックに電話したところ、枠が余っているということで住所地外接種届を出して打ちに行った。接種券を忘れたのだが「あっ遠くから帰ってきたんだね〜!とりあえず打っていきな〜次回持ってきてね!」と軽く受け入れてもらえて田舎らしさをありがたく享受。
接種券も保険証も忘れてしまって接種できなかった東京の友人のことを思う。東京のそういう殺伐としているとことは少し嫌い。

・飲酒 18:00〜24:00
接種後でも普通に飲む。ワイン1本弱と梅酒ロック3杯。


8月8日(日)夏休み39日目 移動、市場

7:30起床。
母の作ってくれていたお味噌汁を飲んで荷造り。
血縁の実家を離れ、もう一つの実家へ向かう。

・グリーン車 9:30〜12:30
家族の夫が予約してくれていた新幹線席に乗り込んだらグリーン車だったのでびっくりした。すぐにありがとうとメッセージ。
昨晩うまく眠れず、コーヒーを飲んでいるのに乗車後すぐに寝落ちしてしまう。リクライニングが深くて快適な眠り。2時間半のあいだに新しい仕事のための本を2冊読み切る予定だったのだが、降車駅のアナウンスで目を覚まして慌てて下車。

・市場 13:00〜14:00
市場で私の帰省中にみんなで食べたいご馳走の材料を買い出し。野菜、野菜、野菜、野菜、ラム肉、鴨肉、野菜、イカ、タコ、ムール貝、野菜、野菜、果物、チーズ、野菜……
家族の夫が作ってくれるかっこいい料理のことが、子も妻も私もだいすき。今回も豪快に肉を焼いてくれるらしい。わくわく。

・遅いお昼ごはん 15:00
ムール貝のパスタ、おじさん、脳天、頬肉(だっけ?)、馬刺しユッケ/妻が買っておいてくれた美味しい美味しい白ワイン

・自転車 16:00
子が生まれる前に妻が愛用していた自転車を譲り受けることに。白くて可愛い。
運搬用の袋や特殊な空気入れ、六角レンチなどのミニ工具セット、ライト、スマホ取り付け装置などの一式を夫が整えてくれてありがたい。組み立てのレクチャーもしてもらった。東京駅から乗って帰ることに。

・晩ごはん 19:00
無花果のソテーの上に寝かせた鴨のロースト(テクスチャー役に砕いたアーモンド)、花ズッキーニのチーズリゾット、ズッキーニのサラダ、バターナッツ南瓜のポタージュ/Mikkeler - Windy Hill、Nomcraft Brewing - Smashing Watermellon

・うまうま期 23:00
夜も更けて、何に憚ることもなくうまうま期到来。
犬の匂いがするサラミ、犬の匂いがしないサラミ、チーザ/Louis Julian - Louge 2020
ルイ・ジュリアンはデキャンタージュしたほうが当然うまいだろうと使えそうなサイズの容器をキッチンから適当にとってきたところ、どうもミキサーの部品だったらしく、妻のツボに入って笑いが止まらない。ミキサーの部品はその日からデキャンタと呼ばれるようになった。


8月9日(月)夏休み40日目 台風のとどろき

9:00起床。
妻は早々に目を覚まして家を掃除してくれていたようだ。私が起きるのと同時に夫も起きてくる。子は朝から超元気。

・お昼ごはん 12:00
じゃがいもと空心菜のジェノベーゼ、ゴーヤと鯖と梅干しの和え物(feat. 田中庭園)、バターナッツ南瓜のポタージュ

田中庭園に「あなたのレシピを参考にしたら美味しくできました〜!ありがと〜」という夫婦のビデオレターを送る。夫婦は田中のファンなのでめちゃくちゃ照れていてかわいい。田中から「こちらこそありがとう」というビデオレターが返ってきたので夫婦に見せたらたいそう喜んでいた。みんな仲良くしてくれてうれしい。

・台風さんぽ 13:00
酒を切らしてキレた私が台風真っ最中にもかかわらず「雨が止んだからちょっくらカルディまで買い出しに行ってくらぁ!!!」と叫ぶと「みんなで行こう!!!」と家族。吹き飛ばされそうになりながらカルディに到着してみると「感染者が出たので臨時閉店します」との貼り紙。カルディ狭いもんな……。めげることなく近所の酒屋に向かい、無事ナチュールのロゼをゲット。
こどもは両手を両親に繋がれて嬉しそうに歩きながら「もし◯◯ちゃんが飛ばされちゃったら、もしママが飛ばされちゃったら、もしパパも飛ばされちゃったら、……」と状況想定に余念がない。私や私の母の名前まであげて心配してくれている。慎重なところ、両親にそっくりね。

・おやつ 15:00
日本の伝統芸能桃モッツァレラ。望月万里さんの器によく映える。

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・プレイタイム 14:00〜19:00
こどもに請われるがまま、体力の限り遊びたおす。ブロックで家を建て、おもちゃの魚を釣り、絵本を読み聞かせ、ブタちゃんとメーメーちゃんでこんにちはし、風船をトスしあい、蹴りあい、ボールを転がしあい、一緒にごろごろし、Permission to Danceを踊りまくり、最終的に紐の端と端をもってリビングをぐるぐる駆け回る。40分走り続けたが意外と体力がもったので安心した。
妻も夫も同い年で、私は彼らのこどもの名前をつけさせてもらった立場だけれど、一緒に遊んでいると姉妹のように思えてくる。大人にたいしては言わないようないじわるを言いたくなるし、大人にたいしてはやらないような可愛がりをしたくなるのだ。
親が抱くような愛情は彼女にたいして持っていない。なんかおるな、と思う。なんかおって、そのなんかは私の人生の一部なんやな、と思う。

・晩ごはん 19:00
ラムチョップのグリル、おばけマッシュルームとホワイトアスパラガスを添えて、海老・イカ・蛸のマリネサラダ/L'Amour du Risque Pet'Nat de Peybonohomme

こどもは疲れてご飯もそこそこに即寝落ちしてた。かわいい。

・『ロミオ+ジュリエット』 21:00
千裕さんにお借りしたまま観れていなかった若きディカプリオ出演の『ロミオ+ジュリエット』のDVDを持参し、家族と視聴。
現代的な舞台設定とシェイクスピア原文の台詞とのミスマッチがやたらそそる。若きディカプリオのキスシーンがとにかく美しい。キスってこんなに綺麗なんだ。
映画を流しながら、夫はさっき肉を食べ終えたラムの骨でフォンをとっている。本当になんでもできるな。
観終えて、夫が「まあ、内容は駄作寄りやんな」と言うので、君の歯に衣着せぬその感じが好きだよとニコニコしながら「それな」と全力で同意した。
お供は妻の作ってくれたチアシードとココナッツミルクのデザート。

・うまうま期到来 23:00
なんとなく『大豆田とわ子と三人の元夫』の第1話を見て、みんなでふ〜んと頷く。
ちょっとお酒に強くなってきたらしい夫がこの時間にビールを開けようと言いだしたので、変わったなあと思う。
Fair State Coop - Serious Leisure、志賀高原ビール - "SHOUBU" no Miyama Blonde

シリアスレジャーのほうは見た目もピンク色で、グァバやグレープフルーツの味がしっかり残っている。志賀高原のSHOUBUは実際に原料に菖蒲が使用されていた。IPAとして申し分ない出来。


8月10日(火)夏休み41日目 あつあつの晴天

夜中は魘された。9:00に起床。
同じく夜中魘されたらしいこどもの面倒を見るべく叩き起こされた夫婦はソファでぐったりしている。夫は二日酔いらしい。
こういう時こそ私が家事を担いたいのだが、教わるところから始めねばならず足手まといがもどかしい。
こどもは超げんき。せめてこどもの相手をして夫婦の負担を軽減しようと努める。ブロックで愛の巣を作る。

・ブランチ 11:00
大量のミニトマトで作ったソースで甘いパスタ。とても美味しい。
副菜はゴーヤとツナと玉ねぎの和え物。昨日の鯖のやつの変奏。これもおいしい。

・ニトリ 12:00
夫婦の新居のカーテンを買いにニトリへ。
レモン柄のかわいいカーテンを買おうとするも、既成のものと窓のサイズが合わず断念。悲しい。
新しい暮らしには細々といろんなものが必要になる。醤油差しとか、どんぶりとか。

・よそゆきのライフ 14:00
もともと今日東京に戻る予定でいたが、もっと一緒にいたいので延泊することにして、今夜の晩ごはんのための肉を探す。
豚と鶏を買った。それから適当なワインと、私の大好物のサーモン。明日の朝に食べるパンも。

・プレイタイム 15:00〜18:00
夜中に叩き起こされて寝不足の夫婦がお昼寝に入ったので、出番だと張り切ってこどもの相手。
私もちょっと返すべきメールがあって、ブロックで大々的に遊ぶのが難しかったので、テーブルの隣の席に座ってもらって絵本を読んだりお絵描きしたり。両腕の、PCを打っているときにテーブルと接着する箇所に盛大な湿疹ができていて(何時間も打ち続けてできた汗疹なのかもしれない)、そこに貼るべく絆創膏を探したが見当たらず、困ったな、痛いなと顔をしかめていたらこどもがお気に入りのすいかのシールを絆創膏がわりに患部に貼ってくれた。本当にやさしい子。ありがとね。
折り紙で遊びたいというので、Youtubeで折り方動画を見ながらうさちゃんとちいちゃいハンドバッグを作ってあげたら大喜びしてくれた。
こどもにはまだまだ表象の能力が備わっていなくて、何かに似せて何かを描いたり作ったりすることができない。これができるようになってしまったら、似せようとしてばかりになって自由な発想やオリジナリティを失ってしまうのかもしれない。
現に私がそうだった。「それらしく」作るのがとにかく得意な子供で、写生大会で見たままを描けばいつだって金賞を受け、たいして感動していないくせにそれっぽく書き綴った読書感想文で県大会を通過し、猿真似のピアノでたくさんの拍手をもらった。親や祖父母や先生に褒められることだけが動力源で、「表現の大人っぽさ」だけが課題だった。子供はガキっぽくなければそれだけで褒められる。
こどもはそういう、「褒められる」という結果を目的に賤しい行為に走らないで済む人生を送ってくれるといいなと思う。
昨日のプレイタイムにこどもに甘やかしで買い与えた(Amazonで)絵本が届く。こどもは欲しいと言ったことすら覚えていないみたい。それでいいのだ。
私と妻と夫がそれぞれに新しい絵本を読み聞かせる。そのうち理解するだろう。絵本には乱暴な「お兄ちゃん」が登場するけれど、きっと第一子であるこどもには「お兄ちゃん」の理不尽のことはわからないままだろう。こどもが「お姉ちゃん」になることはあるだろうか。できれば、私の森生のお姉ちゃんになってほしいな。

・晩ごはん 19:00
鶏もも肉のソテーにきのこペーストのソース、ズッキーニときのこのラム出しシチュー、海老イカ蛸マリネのサラダジェノベーゼ仕立て、炙りサーモン/なんか可愛いエチケットのビオワイン(スペイン)

妻は卵が大好きらしい。可愛い。ぜんぶあげるわ。

・『映像研には手を出すな!』20:00
もう2年ほど前だったと思うが、『映像研』がおもしろいというのをそこかしこで見かけて気になっていて、あれおもしろいらしいねと話したら夫が「みよう」と全話見せてくれた。確かにおもしろい。
創作の製作過程にはやっぱり胸が踊ってしまう。と同時に、仲間がいる彼女たちが羨ましくて仕方ない。
相手の力量を信じて本気を出してぶつかり合うみたいなの、青春でやってみたかったな。ずっと個人主義で生きてきたから、ああいうのを見せられると眩しくてつらい。
ある意味でいまやっている家族はあの3人に近いのかもしれない。それぞれの役割を果たしながら和を死守する関係。青春とはまた違うけど、満ち足りている。

・コンビニ 22:00
妻が「無性にコンビニに行きたい」と言うのでためらいなく立ち上がる。昨日の昼間の私の「カルディ行ってくる」と同じノリである。
コンビニに着くや「予算500円で一番いいものを買えた人が勝ちね」とゲームを持ちかけ、それぞれに離散。全員マジでどうでもいいものを買っていたが、アイスは最中で揃っていた。家族ですね。

・うまうま期 23:00
毎晩うまうま期がくるの怖い。帰省ボーナスですかね。
三者三様に買い揃えた最中アイスをみんなで三等分して味わう。楽しいなあ。おいしいを分け合えるのってすごく嬉しいな。

三種のもなかのキメラ。

夫が『蟲師』のエグ回を勧めてくれたので酒を飲みながら妻と見る。筍を産んだエピソードで泡を吹く妻。かわいい。
久しぶりに『蟲師』の物語を見ると、こんなにも作り込まれた立派な漫画がこの世にあったのだな、と感嘆する。アニメにも映画にもなったけれど、もっともっとたくさんの日本人に読まれてほしい。若い子に読んでほしい。柳田國男とかと一緒に置いてほしい。手塚治虫の『火の鳥』と一緒に、公共図書館にも買ってもらうべき漫画だと思う。講談社がんばって。