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④即興のコミュニケーション劇へ

レッスンは半年たって辞めることになります。新しく根気のある初心者が来たんです。そしたら、半年前と同じメニューになりました。次の週もです。
で、何となく、行かなくなったんです。来なくて良いと言われているようでした。
僕が行かなくなってその3ヶ月後、そのレッスンはなくなってました。後は独学です。
プロフィールにも書いてなかったんで後から知ったんですが、フランクはマイケル・ジャクソンのスリラーのバックダンサーだって後から知りました。キレキレだったしなぁ。今どこにいるんだろう?


話が脱線してしまったのですが、この後、変化が訪れます。


2006年、まだ写真スタジオで働いている時、給料も、とても低くかったので、土日はストリートで踊って、ご飯代を作っていました。

ある時、いつもダンスを練習していると、チームメイトにダンスコンテストがある事を知らされます。
ダメ元で、出てみることにしました。開催が会社の無い日曜日だったので。

自分は就職して社会人だし練習時間だって満足に作れないし、評価されはしないだろうと思っていました。

結果を先に言うと、そのダンスのコンテストに出場して、優勝します。

その時のダンスの審査員には、

「あなたのダンスには物語やストーリーを感じました。1本の映画を見ているようでした」

「一人で15分くらいの作品できたら、お仕事を上げるよ」

と評価されたことを覚えています。

ダンスコンテストには、はっきり言って僕よりも技術が上手い人もいたんです。
嬉しかった。上手さでは無いところで評価してもらえたんです。


それもあって、ストリートでも、表現が豊かなパフォーマンスへと変化していきました。

こう書くと、パフォーマンスでは何か伝えてるんですか?と聞かれるかもしれないので先に言うと、「特に無いです」と答えます。

無い

何も伝えて無いです。

これは、後から気付いたことなんです。表現を学び始めてから、自分は何も伝えてない事に。

どう言う事なのかと言うと、僕はパフォーマンス中にKERAとして動いている時は、反応をしているだけなんです。

落としたものを拾って欲しいなぁ、疲れたなぁ、手伝って欲しいなぁ、こうして欲しなぁ、お願い!前に来て!、ここ拍手欲しい!、、、、など。

そのリアクションを様々に紡ぎあげて、ショーとして表現してるんです。

紡ぎあげるとは、どう言うことかというと、僕がアクションをした後、観客がリアクションをしてくれて、そのリアクションに合わせて僕がリアクションをし続けるんです。これが切れてしまった時、終演です。

なので、基本の流れはあるものの、即興のコミュニケーション劇なのです。そこに意図的に伝えるものは無いんです。

ただ、持ち帰って欲しいものはあります。

楽しかった、凄かった、なんか良かった、、と言う良い思い出です。

僕はそれを持ち帰ってもらう為に、前もってネタを増やし、練習し、頭も身体も30分前後の間、全力を尽くします。

コミュニケーションは発信者と受信者がいて成り立ちます。コミュニケーションって楽しいものなんです。それが突然、道端で行われる、、、、ワクワクしかありません。

一人でショーをやっているようで、みんなが居ないと成り立たないエンターテイメントは、大道芸の特権です。ステージは無くていい。無いほうがいい。アイドルでもないし、憧れて欲しいとも思わない。隣に住んでいる、やたら面白い不思議なお兄さん、で良い。

映画の寅さんとか釣りバカ日誌のハマちゃん、チャップリンって、憧れはしないけど、隣にいたら面白そうって思いませんか?コミュニケーションで紡がれる面白さ、哀愁劇。好きだな、僕は。

技を見せるのは、僕にとって手段にすぎません。目的は皆さんの日常にちょっと”良い思い出”を加えること。そして、なんか元気出た!って思ってくれたら嬉しいんです。

大道芸って、お金を投げ銭として入れるのも、みんなの自由なんです。いいな、って思えば入れてくれれば良いし、違うなって思えば入れる必要はないんです。お金すら、コミュニケーションの一つ。僕は激しく踊った後「ご飯食べたい!」って言って、「好きなの食べなよ!」ってみんなが入れてくれれば、僕は「ありがとう、食べるね!ついでに家の家賃も払う(笑)」ってコミュニケーション。

そんな大道芸の中で、何かを感じてもらえたら、それは貴方のもの。僕は意図的に”こう感じてほしい”と伝えないこと、答えがないことが大事なんです。みんなが僕の表現の中で何かを感じてくれたことは、貴方の人生の中で積み上げてきた感受性のおかげです。だから、貴方だけのもの

当たり前のことかもしれないけど、コミュニケーションの本質だと僕は思います。

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さて、脱線しましたが、ダンスで優勝した後、こうして表現の世界の扉は思わぬ方向に開いていきます。



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