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肥薩おれんじ鉄道おれんじ食堂乗車記。レストラン列車がアツい理由。

以前しなの鉄道のろくもんに乗った訳ですが、久々にエンタメ要素の高い列車に乗りに行こうかなと思って目についたのが肥薩おれんじ鉄道のおれんじ食堂。



1.今は三セクこそネット予約で完結

以前なら第三セクター鉄道は全国の駅で買えるJRに比べて格下感が強かったものです。しかし時代は変わりました。

何と言っても公式ウェブサイトで予約可能になったことです。
JRの観光列車の多くは指定席扱いで乗車券+指定席券の2種類が必要な反面、2020年代になってオンライン予約、シートマップでの座席指定ができる列車が増えてきましたし、支払いもクレジットカードで駅でのきっぷ受取作業もありません。言わばチケットレスそのものです。


2.簡素な新八代駅で"チェックイン"

今回のおれんじ食堂サンセット2号は新八代→川内と言う旅程です。出発はJR新八代駅在来線改札に15時から受付と言われましたが…


在来線改札

2004年の九州新幹線暫定開業でもリレーつばめ号は対面乗換えだったこともあり、在来線改札は新幹線から少し離れた寂しいところ。駅員不在でシャッターが閉じられています。


受付がオープン
これが乗車票

そこにおれんじ食堂専用受付がオープンし、予約者の名前を告げると手続きできます。改札ならぬチェックイン、乗車券というかパスポートを模したチケットが発行されますが、以降ほぼ顔パスで認証されます。

この日は金曜日とあって乗客は6人、次の八代駅で2人来るだけなので途中座席の移動は全く構わないと言われてしまいました。土日には満席になることも多いらしく、やはり金曜日は狙い目。ちなみに金曜日は貸切限定になる日もあります。


3.車内座席は2車両4タイプ


ウェルカムボード

15:28に八代行きJR普通列車が出た後に改札に案内され、熊本側から列車がやってきます。

2号車
1号車

列車は2両編成で座席は4〜8人掛けの大テーブル席と海側カウンター席、向かい合わせの海側ボックス席、山側横向き席の4種類。JRとは異なり予約サイトでシートマップで選択できますし、利用人数の下限もありません。

初期には1号車がコースメニュー付きダイニングカー、2号車が運賃+座席指定料金で乗車のみのリビングカーと言うクラス分けがあったそうですが、現在は全席がコースメニュー付き旅行商品になっています。

今回は物珍しさで山側横向き席を選びましたがこの中では不人気らしく自分1人だけ。乗車率も低かったので移動も提案されました。


ばんぺいゆジュース

15:38新八代駅出発。反対ホームで熊本方面の列車を待つ高校生に手を振り、ウェルカムドリンクを頂けます。
個室型の寝台特急では得られない、オープン席ならでは。

そう、写真の通り飲み物や食事にはグランクラス顔負けの制震シートが敷かれているので安心感は高いです。


4.駅巡りツアーも面白い

もちろんおれんじ食堂のメインは食事な訳ですが、15時半出発で4時間に及ぶディナーコースは長い。

そこで前半は車窓の案内から途中駅での下車ツアーが中心です。駅により改札外含めた散策ができたり、現地の人による案内、お土産の配布や物販もあります。


日奈久温泉
プレゼント引き換え

日奈久温泉。JR時代は日奈久駅でした。駅の南西に温泉街があるそうですが、そこまでの寄り道はできないので雰囲気だけでも、と言う感じです。


停車駅案内が紙芝居
上田浦
旧海水浴場跡

上田浦。ここは駅から改札を出て散策ツアーがありました。
乗務員さんによると以前は海水浴場があったものの、南側にたのうら御立岬公園が整備されたこともあり今は苔むす寂しい海岸になったようです。


席に戻ると

そしてツアーを終え席に戻るとテーブルがセットされていました。ここはやっぱりレストラン列車。こういう演出は流石です。

料理については次のチャプターで。



水俣駅
内装だけ水戸岡デザイン
時刻表もウッドデザイン

水俣駅。JR九州でお馴染み水戸岡鋭治氏のプロダクトは肥薩おれんじ鉄道にもたくさんあり、この水俣駅は外観は往年の姿のまま、内装だけ氏の世界観を象徴するデザインに改められています。


薩摩大川付近

5月の鹿児島は日没が19時過ぎ。
海側の席へ移動を促されました。

西方駅

西方駅で最後の長時間停車。ここで後続車の通過待ちで、ちょっとした撮影会に。台湾鉄道南廻線仕様の特別塗装車両。



川内駅
改札経ずにJR鹿児島方面へ乗り換え可能

終点川内には19:33到着。実に4時間の長丁場でしたが車窓に料理に飽きることはありません。

5.往年の食堂車にはないコースの演出

テーブルセット

そしてこの列車の目玉コンテンツであるディナーコース。
時間がたっぷりあるので流れ作業的な進行ではなく、車外散策の間にテーブルセットされたり、長時間停車の間に食材積み込みや盛り付けが行われていたり、高級旅館や結婚式場のように絶妙な進み具合なのです。


アミューズ

アミューズは姫エビと薩摩サーモンのマリネ。地元で養殖されているようです。


停車中に盛り付けるのね
オードブル

ジビエのパテと全粒粉パンバルサミコソース。オリーブやルッコラも地元産だそうな。


スープ

グリーンピースと低温熟成ベーコンのポタージュ。矢継ぎ早に出てくる訳ではなく、車外散策や景気の良いポイントの紹介を挟んでいます。


魚料理

東シナ海産鯛のソテーサフランソース。野菜のアクセントが見事


肉料理

鹿児島黒毛和牛ラムイチステーキ蜂蜜黒酢ソース。柔らかい希少部位だそうです。


デザート

日没シーンに出てくる水俣紅茶アイス、出水茶のパンナコッタ、パウンドケーキでこぽんコンフィチュール、出水いちごのタルトレット。最後まで贅沢なメニューばかりでした。


6.お土産も物凄い量に

この手の観光列車では乗車証明書や観光案内など記念品が配られることは想定していましたが、その量が想像の遥か上だった…


お土産用紙袋

出発時に配られたのは案内書、沿線マップそしてお土産用紙袋。途中駅で記念品の配布があることも事前情報で知ってたけどさ…


その量が半端ない

これが随分と多い。しかもガラス瓶のジュースもあるので重たい。有料販売のグッズやお土産品もあるんだけどそれも買ったら以降旅程がだいぶ重苦しくなりそうです。

結論、景色も周辺散策も料理も絶妙なバランスで楽しめる列車です。事前にウェブサイトで訪問場所や料理の内容もある程度分かるし、そのままオンライン予約&クレジット決済ができます。
食事と景色のハイライトがバッティングしないので双方は集中して楽しめます。

往年の特急列車の食堂車が乗るまで営業時間がわからない、混雑具合もわからない、車両の移動が大変、料理も文字だけの大雑把な情報だけ、降りる駅までに食べ終えるかヒヤヒヤ…こうしたネガ要素が全くないのが現代のレストラン列車なのだと実感しました。

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