鉄道開業150周年記念Suica駅で投げ売り。入念なルール作りも虚しいファンビジネスの難しさ。
鉄道開業150周年記念Suicaが今、投げ売りされているみたいです。これまでのところ鉄道グッズショップトレニアート、赤羽駅のNewDays、新小岩駅みどりの窓口など店頭での発売が確認されています。
【注釈】2023年2月現在完売したところも多いです
投げ売りとは言ってるんですけど値下げはされてません。ただ当初JRE MALL限定、自宅配送限定というルールを作ったものの、この鉄道開業150周年記念Suicaが、想定以上に売れ行きが不振なのでルールを崩してでも売れる所で売ろうという方針に転換したんじゃないかという訳です。
これは記念きっぷというビジネスの難しさというか限界というか当てが外れてしまったのかもというのが、今回のテーマです。
今回の話のきっかけになったのはおそらく2014年12月に発売された東京駅開業100周年記念Suicaだと思います。当初は15000枚限定で無記名式として通常のSuicaと同じく1枚2000円として東京駅で発売されたのですが、初日に購入希望者が殺到し発売中止されました。その後インターネットや郵送での通信販売に切り替えるも生産が追い付かず、ヤフオクでは数万円での出品が相次ぎ、大幅な配送遅れもあって結局売れたのが2015年2016年になってしまったと。発売枚数も当初の15000枚を大幅に超えて170万枚に達したそうです。
そこで今回の鉄道開業150周年記念Suicaはその教訓が活かされて色々と改められました。この仕組み作りに関してはJR東日本、よく考えたなと思います。
自社サイトJRE MALL限定
会員登録必須
支払いはクレジットカードかJRE POINTの2択
3枚1組15000セット限定
2022年6月より受注開始、10月以降登録の住所宛てに順次発送
さらにSuicaやJRE MALLの会員規約も改定して、転売や代理購入の禁止、購入時残額をゼロとして、Suica自体の有効期限を2023年3月末までにすると。これは資金決済法での払戻し規定を回避すると共に、このSuicaの所有権を購入者にあると明確化しました。
というのもSuica等のICカード、ユーザーにはサービスの利用権しかなくてカードの所有権は無いんですよね。だから読み取り不良とかで再発行すると持ってるカードを回収して新しいカードにするしかない。すると新しいカードは通常デザインになっても何ら文句は言えない。でもカードを交換、再発行しないとサービス継続は出来ない、チャージ残額も使えない訳です。これはTカードのキャラクターデザインのカードでもありましたよね。
なのでこの鉄道開業150周年記念Suicaはお金を支払うSuicaとしての機能は期限付きとしながらも、カード自体の所有権は末永く購入者が持てるというのを明確化したところは、なかなかよく考えたなと思う訳です。要は記念きっぷ記念Suicaというよりは期間限定でSuica機能が付いた記念品、コレクションというなかなか上手い位置付けなんですよ。
もう1つは価格設定です。というのも乗車券はそもそも価格が届け出運賃と決められてて、特別デザインの記念品だろうが実際に使おうが発売価格は決まってるんです。そして記念きっぷとして入場券とか初乗り運賃で1枚160円とかにしても結局磁気券でも硬券にしても発売窓口とかの人件費含めると確実に原価割れしていまうんです。だから記念入場券も10枚セット1600円とか30枚セット4800円とかある程度のまとめた形で売るしかない。
そして模型とかクリアファイル、鉄印帳等多くの鉄道グッズとは違って券面額が決まっていて自由な価格設定ができないし、中古の車両部品のようにオークション方式での発売も出来ない。そして記念Suicaはこの条件クリアしてるんですけど、きっぷだと発行駅、発売日、発行番号とか記念品の通信販売としては色々と制約があるんでコストダウンどころか手間しか増えないのです。
最近だと観光列車とかイベント列車も乗車券指定席ではなく旅行商品として発売することも多く、きっぷや旅程表とは別に列車に乗ってからノベルティ、記念品としてきっぷを模したデザインの乗車証を配布するケースも増えてきました。
そして先ほども言ったように鉄道グッズも博物館以外でも売ってる場所が増えて、文房具や雑貨なども含めジャンルが幅広くなってきて、キッズ向けから上級者も唸る逸品まで新しい市場が開拓できているのに比べると、発売窓口も減ってて価格も決められてて、さらに輸送約款に基づきもし実際に使うとしたら、というルールの運用まで決して柔軟とは言えない記念きっぷって、もう正直ビジネスモデルとして行き詰ってるのかなって思ったわけです。
今回の鉄道開業150周年記念Suicaは15000セットって限定数が結構強気だったのかな?1500セットでも良かったかもしれません。ちょっと欲張りすぎたかなと思うところもあります。
15000円って価格は…模型とかコレクションやってると格安の部類に入ってしまうんだろうけど、マニアとまでは行かないライト層が手を出すのは難しいですよね?でも前回の東京駅開業100周年のときは2000円でもパンクした訳だから、やっぱり妥当だったのかなとも思います。
もちろんこの価格と限定数のさじ加減はファンビジネスには難しい所で、例えばアイドルのグッズ販売もコンサートチケット代と並ぶ貴重な収入源であると同時に、価格が相応で数が少なければあっという間に売り切れてそれから転売祭りになってファンのモラルが…って叩かれて、逆に価格が高い&数が多ければ売れ残って、ファンを金づるにしてるとか、あー遂に人気も落ちたか…って叩かれる。
だからファンビジネスって売れても売れなくても敵だらけの難しい世界なんですよね。
という訳で、記念きっぷって価格が決められててもう原価とか人件費を考えるとコスト面で割に合わなくて、しかも無記名制だから転売の温床になってたりと問題は多かったんで今回の鉄道開業150周年記念Suicaはこの点では革新的だった。しかし販売数が苦戦して、15000枚しかない限定商品というはずが15000枚もあるのかよ、ってなってSuica機能の有効期限2023年3月までには、このやり方だとおそらく売れ残るだろうっていうお話でした。
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