COVID-19情報:2023.09.1

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、JAMA系列より3編です。
1編目は、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種とCOVID-19単独接種の反応原性および免疫原性を比較することを目的とした研究です。COVID-19ワクチン、インフルエンザワクチン、またはその両方を接種した医療従事者を対象としたこのコホート研究では、COVID-19ワクチンの単独投与と比較して、同時投与は免疫反応の大幅な低下や有害事象の頻発とは関連しておらず、これらのワクチンの同時投与を支持するものであったとの事です。
2編目は、SARS-CoV-2感染と、1型糖尿病発症に先行する膵島自己免疫の発症との間に時間的関係があるかどうかを明らかにする事を目的とした研究です。1型糖尿病の遺伝的リスクが高い幼児において、SARS-CoV-2感染は膵島自己抗体の発現と時間的に関連していました。
3編目は、COVID-19肺炎に対する標準治療にアバタセプト、セニクリビロク、またはインフリキシマブを追加した場合に有益かどうかを検討することを目的とした研究です。入院患者におけるCOVID-19肺炎からの回復までの期間は、アバタセプト、セニクリビロク、インフリキシマブでプラセボと比較して有意差はなかったとの結論です。
予防的意義の高さ、実用性を示した1編目、小児の1型糖尿病発症に関連した重要な知見が得られる2編目、そして治療に関する実用的な知見を示した3編目とJAMA系列はいつもながら秀逸な論文を掲載してくれています。

報道に関しては、XBB対応ワクチンを米FDAが承認したようです。
また、同じく米国では、コロナ危機対策終了と前後して貧困率が大幅上昇したようです。 
これは他山の石と考えるべきで、日本もうかうかしてはいられません。
また、必読は、東京新聞の「今なにしてる?「内閣感染症危機管理統括庁」 9月1日ひっそり発足 「第9波」でも情報発信は危機感薄く」です。想定内の出来事といえばそれまでですが、のんびりとしたお役人組織になっているようです。ここにも、国民の税金が注ぎ込まれていることを忘れてはなりません。

高橋謙造

1)論文関連      
JAMA
Immunogenicity and Reactogenicity of Coadministration of COVID-19 and Influenza Vaccines
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2809119
*COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種とCOVID-19単独接種の反応原性および免疫原性を比較することを目的とした研究です。
この前向きコホート研究では、イスラエルの大規模3次医療センターで、インフルエンザワクチンInfluvac Tetra(アボット社製)(2022/2023年)、Omicron BA.4/BA.5適応2価ワクチン(ファイザー社製/バイオンテック社製)、またはその両方を接種した医療従事者を対象としました。ワクチン接種は2022年9月に開始し、2023年1月までデータを収集しました。ワクチンは全従業員に提供され、同時接種または別々に接種されました。副反応アンケートが送付され、血清学的サンプルも採取されました。
反応原性解析対象の主な結果は、ワクチン接種後の症状であり、デジタル質問票により評価しました:あらゆる局所症状、発熱、脱力感または疲労感、あらゆる全身症状、およびそれらの期間。免疫原性解析のアウトカムは、ワクチン接種後の抗スパイクIgG価でした。
この研究は2つのコホートを含み、2つの別々の解析を行いました。反応原性解析には588人が含まれました(アンケート回答者649人のうち):COVID-19ワクチン単独群85人(年齢中央値[IQR]、71[58-74]歳、56[66%]女性)、インフルエンザワクチン単独群357人(年齢中央値[IQR]、55[40-65]歳、282[79%]女性)、同時投与群146人(年齢中央値[IQR]、61[50-71]歳、81[55%]女性)。免疫原性解析には151人が参加しました:COVID-19ワクチン群74人(年齢[IQR]中央値、67[56-73]歳、女性45[61%])および併用投与群77人(年齢[IQR]中央値、60[49-73]歳、女性42[55%])。COVID-19単独接種と比較して、全身症状のリスクは、併用投与群でも同程度でした(オッズ比、0.82;95%CI、0.43-1.56)。共同投与群の幾何平均力価は、COVID-19ワクチン単独投与群の0.84(95%CI、0.69-1.04)倍と推定されました。
COVID-19ワクチン、インフルエンザワクチン、またはその両方を接種した医療従事者を対象としたこのコホート研究では、COVID-19ワクチンの単独投与と比較して、同時投与は免疫反応の大幅な低下や有害事象の頻発とは関連しておらず、これらのワクチンの同時投与を支持するものであったとの事です。

SARS-CoV-2 Infection and Development of Islet Autoimmunity in Early Childhood
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2809621
*SARS-CoV-2感染と、1型糖尿病発症に先行する膵島自己免疫の発症との間に時間的関係があるかどうかを明らかにする事を目的とした研究です。
2018年2月から2021年3月にかけて、欧州の多施設共同研究であるPrimary Oral Insulin Trialに、遺伝学的に定義された1型糖尿病リスクが10%を超える生後4~7ヵ月の乳児1050例(女児517例)が登録され、2022年9月まで追跡されました。
主なアウトカムは、連続検体における追跡調査での複数(≧2)の膵島自己抗体の発現、または単一の膵島抗体と1型糖尿病の発現。抗体発症率および膵島自己抗体発症リスクを解析しました。
同意が得られた生後6ヵ月からの追跡抗体測定に参加した885名(女児441名)を対象とし、SARS-CoV-2抗体は、中央値18ヵ月齢(範囲6~25ヵ月)で170人の小児に発現しました。膵島自己抗体は60人の小児に発現し、このうち6人はSARS-CoV-2抗体陽性と同時に、6人はSARS-CoV-2抗体陽性後の診察で膵島自己抗体が陽性でした。SARS-CoV-2抗体陽性時の膵島自己抗体発症の性・年齢・国別調整ハザード比は3.5(95%CI、1.6-7.7;P = 0.002)でした。膵島自己抗体の発生率は、SARS-CoV-2抗体のない小児では100人年当たり3.5(95%CI、2.2-5.1)であり、SARS-CoV-2抗体のある小児では100人年当たり7.8(95%CI、5.3-19.0)でした(P = 0.02)。SARS-CoV-2抗体を有する小児における膵島自己抗体リスクは、SARS-CoV-2抗体発現の低年齢(18ヵ月未満)と関連していました(HR、5.3;95%CI、1.5-18.3;P = 0.009)。
1型糖尿病の遺伝的リスクが高い幼児において、SARS-CoV-2感染は膵島自己抗体の発現と時間的に関連していました。

Abatacept, Cenicriviroc, or Infliximab for Treatment of Adults Hospitalized With COVID-19 Pneumonia A Randomized Clinical Trial
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2807333
*COVID-19肺炎に対する標準治療にアバタセプト、セニクリビロク、またはインフリキシマブを追加した場合に有益かどうかを検討することを目的とした研究です。
COVID-19肺炎で入院した患者を対象に、標準治療に追加する免疫調節薬を検討するマスタープロトコールを用いた無作為二重マスクプラセボ対照臨床試験です。米国およびラテンアメリカの85の臨床研究施設の95病院から3つのサブ試験の結果が報告されています。14日以内にSARS-CoV-2感染が確認され、肺病変が認められた18歳以上の入院患者を対象に、2020年10月から2021年12月の間に無作為化を行いました。
介入は、アバタセプト(10mg/kg、最大用量1000mg)またはインフリキシマブ(5mg/kg)の単回点滴静注、またはセニクリビロクの28日間経口投与(300mgの負荷投与後、150mgを1日2回投与)です。
主要エンドポイントは、28日目までに回復するまでの期間とし、8段階の順序尺度を用いて評価しました(得点が高いほど健康状態が良好であることを示します)。回復の定義は、参加者が序数スケールで少なくとも6点を獲得した最初の日としました。
3つのサブスタディで無作為化された1971人の参加者の平均(SD)年齢は54.8(14.6)歳、1218人(61.8%)が男性であった。主要エンドポイントであるCOVID-19肺炎からの回復までの期間は、プラセボと比較してアバタセプト(回復率比[RRR]、1.12 [95% CI、0.98-1.28]、P = 0.09)、セニクリビロク(RRR、1.01 [95% CI、0.86-1.18]、P = 0.94)、またはインフリキシマブ(RRR、1.12 [95% CI、0.99-1.28]、P = 0.08)に有意差はありませんでした。全死因28日死亡率は、アバタセプト群11.0% vs プラセボ群15.1%(オッズ比[OR]、0.62[95%CI、0.41-0.94])、セニクリビロク群13.8% vs プラセボ群11.9%(OR、1.18[95%CI、0.72-1.94])、インフリキシマブ群10.1% vs プラセボ群14.5%(OR、0.59[95%CI、0.39-0.90])でした。安全性の転帰は、二次感染を含め、3つのサブスタディすべてにおいて、積極的治療とプラセボ間で同等でした。
入院患者におけるCOVID-19肺炎からの回復までの期間は、アバタセプト、セニクリビロク、インフリキシマブでプラセボと比較して有意差はなかったとの結論です。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     

海外     
米FDA、XBB対応ワクチン承認 ファイザーとモデルナ製
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN11CQW0R10C23A9000000/
*米、改良版ワクチン認める 新型コロナ、秋接種
https://www.sankei.com/article/20230912-2A2XKRNISRLQNCAFDUMNZP5O6Q/
*「XBB」対応のコロナワクチン モデルナ社製も承認 秋接種で使用
https://digital.asahi.com/articles/ASR9D56XSR9DUTFL012.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*「ファイザーとモデルナの新たなワクチンは12歳以上の人を対象に承認した。6カ月から11歳の子供の利用についてはFDAが緊急使用許可を出した。去年承認した2社のコロナワクチンは使えなくなる。早ければ数日後には接種を開始できるという。」

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID

国内        

海外       
米貧困率が大幅上昇 コロナ危機対策終了で―国勢調査局
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023091300309&g=cov
*「米国勢調査局は12日、低所得層への公的支援策などの効果を考慮した2022年の貧困率が12.4%と、前年(7.8%)から大幅上昇したことを明らかにした。新型コロナウイルス危機で導入した経済対策の終了が響いた。実質収入も物価高で減少し、バイデン大統領が掲げる「低所得層の底上げと中間層の拡大」が、なおも道半ばであることを浮き彫りにした。
 児童税額控除拡大の打ち切りにより、18歳未満の子供の貧困率は22年は12.4%と、過去最低だった21年の5.2%から倍以上へ急拡大し、「コロナ前の水準に戻った」(国勢調査局関係者)格好となった。」

4)対策関連
国内      
今なにしてる?「内閣感染症危機管理統括庁」 9月1日ひっそり発足 「第9波」でも情報発信は危機感薄く
https://www.tokyo-np.co.jp/article/276985
* 「「本領を発揮するのは有事の際になります。今のような平時では、縁の下の力持ちでしょうか…」
 12日、感染症危機管理統括庁の担当者は「こちら特報部」の取材にこう答えた。「有事」に感染症対応の司令塔として、政府内の調整と企画立案を一元的に担うことになる。政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の事務局として、重大な感染症発生時の国の措置をまとめた「政府行動計画」の見直しに取り組むのが主要な業務という。
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そんな中、司令塔役の統括庁は機能するのか。「メンバーは充て職や兼任ばかり。形だけつくってやった気になって、また緊急事態宣言を発令するような場合に機能するのか疑問だ」と、NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長が厳しく指摘する。」

海外       
米共和党、コロナ規制反対で過熱 大統領選の各候補、浸透狙う
https://nordot.app/1073876215121363845
*「24年米大統領選で民主党から政権奪還を狙う共和党の候補の間で、新型コロナ対策を巡る規制反対のアピール合戦が過熱している。共和党が地盤とする保守層が重視する「個人の自由」を訴え、浸透を図る狙い。米国の感染者数は秋の到来を前に再び増加傾向にあり、バイデン民主党政権は警戒する。」

5)社会・経済関連
リーダー格に懲役5年求刑 元国税職員らのコロナ詐欺
https://www.sankei.com/article/20230913-LC7MLQ6HYNM5NDHBP73PFSN734/   
*「警視庁はグループで約200人分、計約2億円の不正受給に関与したとみて捜査していた。
起訴状によると、松江被告は東京国税局元職員=詐欺罪で有罪確定=や大和証券元社員=同=らと共謀し、令和2年7~8月、新型コロナの影響で収入が減ったとする虚偽の申請をし、給付金計700万円をだまし取ったとしている。」  

見逃し指示疑い、第三者調査へ 熊本県、コロナ助成金不適切受給
https://nordot.app/1074520603604091294

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