COVID-19情報:2023.10.18

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、JAMAより2編、Natureより1編です。
JAMAの1編目は、オミクロンXBB変種のCOVID-19パンデミック波における、1~4歳のシンガポール人小児のSARS-CoV-2感染に対する一価mRNAワクチンの有効性を報告することを目的とした集団ベースのコホート研究です。1~4歳の小児において、一次mRNAワクチンシリーズを接種することで、SARS-CoV-2感染を予防できる可能性が示唆されました。
2編目は、高流量鼻腔酸素および非侵襲的人工呼吸が、病原体を含むエアロゾルおよびエアロゾル発生と関連するという現在のエビデンスを評価することを目的とした研究です。系統的レビューおよびメタアナリシスでは、高流量鼻腔酸素または非侵襲的換気と、空気中病原体の検出またはエアロゾル生成の増加との関連は認められませんでした。
Nature論文は、モルヌピラビルで治療された患者の一部がSARS-CoV-2感染を完全に治癒しない場合、モルヌピラビルで変異したウイルスが寄与している可能性があるという問題に関して検証した研究です。治療記録の解析から、高いG-to-A分岐とモルヌピラビルの使用との直接的な関連が確認されました。この論文は、JAMA Newsにも引用されています。

報道に関しては、自治体などへのコロナ交付金が問題です。交付金を受けるだけ受けて、焼け太りしていたようですが、会計検査院がすべてを明らかにしました。

高橋謙造

1)論文関連      
JAMA
Effectiveness of Monovalent mRNA Vaccines Against Omicron XBB Infection in Singaporean Children Younger Than 5 Years

*オミクロンXBB変種のCOVID-19パンデミック波における、1~4歳のシンガポール人小児のSARS-CoV-2感染に対する一価mRNAワクチンの有効性を報告することを目的とした集団ベースのコホート研究です。
2022年10月1日から2023年3月31日までの6ヵ月間、1~4歳のシンガポール人小児全員を対象に地域予防接種実施後に実施しました。研究期間はオミクロンXBB亜種が主たる時期でした。主要評価項目としては、SARS-CoV-2確定感染に対するワクチンの有効性とし、ワクチン未接種者を基準群として、ポアソン回帰を用いた確定感染に対する調整罹患率比を報告しました。SARS-CoV-2感染歴の有無で層別化しました。
結果ですが、合計121,628人の小児(年齢中央値[IQR]:3.1[2.2-3.9]歳、男性61,925人[50.9%])が研究に組み入れられ、21,015,956人日の観察に寄与しました。大半の小児(11,705人中11,294人[96.5%])がmRNA-1273 COVID-19ワクチン(Moderna)を接種しました。確定感染に対するワクチン有効性は,ワクチン未接種群と比較して,部分接種の感染症未発症児では 45.2%(95%信頼区間,24.7%-60.2%)、完全接種の感染症未発症児では 63.3%(95%信頼区間,40.6%-77.3%)でした。過去に感染した小児のうち、少なくとも1回のワクチン接種を受けた小児の再感染に対するワクチン効果は74.6%(95%信頼区間、38.7%~89.5%)と推定されました。
今回の研究結果は、1~4歳の小児において、一次mRNAワクチンシリーズを接種することで、SARS-CoV-2感染を予防できることを示唆しています。この年齢層では入院や重症化の発生率は低いが、感染や潜在的な後遺症の予防においてワクチン接種の有益性が期待されるとの結論です。

Generation of Aerosols by Noninvasive Respiratory Support Modalities A Systematic Review and Meta-Analysis

*高流量鼻腔酸素および非侵襲的人工呼吸が、病原体を含むエアロゾルおよびエアロゾル発生と関連するという現在のエビデンスを評価することを目的とした研究です。これまでの感染制御ガイドラインでは、高流量鼻腔酸素および非侵襲的人工呼吸を、特別な感染予防・制御対策が必要なエアロゾル発生手順として分類してきたことがこの研究背景としてあります。
情報の収集対象としては、2023年3月15日までのEMBASEおよびPubMed/MEDLINE、ならびに2023年8月1日までのCINAHLおよびClinicalTrials.govの系統的検索を実施した。
研究の選択としては、高流量鼻腔酸素(high-flow nasal oxygen)または非侵襲的人工呼吸でサポートされている患者または健常ボランティアを対象とした観察研究および(準)実験研究を選択した。
データの抽出と統合に関しては、3人の査読者が、独立した研究のスクリーニング、バイアスリスクの評価、およびデータの抽出に関与しました。観察研究のデータは、サンプルレベルと患者レベルの両方でランダム効果モデルを用いてプールされました。モデル選択の影響を評価するために感度分析を行いました。
主な転帰は、空気サンプル中の病原体の検出とエアロゾル粒子の量でした。
結果は、24件の研究が含まれ、そのうち12件は患者、15件は健康なボランティアを対象とした測定でした。COVID-19患者152人を対象とした高流量鼻腔内酸素吸入時の合計212検体におけるSARS-CoV-2検出に関する5件の観察研究が、メタ解析のためにプールされました。高流量鼻腔酸素と病原体を含むエアロゾルとの関連は認めらませんでした(陽性サンプルのオッズ比は、サンプルレベルでは0.73[95%CI、0.15-3.55]、患者レベルでは0.80[95%CI、0.14-4.59])。2件の研究では、非侵襲的換気中のSARS-CoV-2検出を評価しました(72人の患者から84の空気検体)。非侵襲的換気と病原体を含むエアロゾルとの関連は認められませんでした(陽性サンプルのオッズ比は、サンプルレベルでは0.38[95%CI、0.03-4.63]、患者レベルでは0.43[95%CI、0.01-27.12])。健康なボランティアを対象とした研究では、高流量鼻腔酸素または非侵襲的換気によるエアロゾル粒子産生の臨床的に関連する増加を報告したものはありませんでした。
この系統的レビューおよびメタアナリシスでは、高流量鼻腔酸素または非侵襲的換気と、空気中病原体の検出またはエアロゾル生成の増加との関連は認められませんでした。これらの知見は、高流量鼻腔酸素または非侵襲的人工呼吸をエアロゾル発生手技として分類することや、これらの手技を受ける患者に対する感染予防および制御の実践を区別することに反対するものであるとの結論です。

Nature
A molnupiravir-associated mutational signature in global SARS-CoV-2 genomes

*モルヌピラビルで治療された患者の一部がSARS-CoV-2感染を完全に治癒しない場合、モルヌピラビルで変異したウイルスが寄与している可能性があるという問題に関して検証した研究です。複製中のSARS-CoV-2ウイルスゲノムに突然変異を誘発することによって作用するモルヌピラビルにおいて、ほとんどのランダム変異はウイルスにとって有害である可能性が高く、多くは致死的であるため、モルヌピラビルによる変異率の上昇はウイルス量を減少させるというのがこれまでの理解でした。
系統的なアプローチにより、G-to-AおよびC-to-T変異の割合が高いことで区別される、特定のクラスの長い系統分岐が、モルヌピラビル治療が導入された後の2022年の配列にほぼ限定的に、またモルヌピラビルが広く使用されている国や年齢層で出現することを見出しました。モルヌピラビルによる治療歴のある患者のウイルスから、好ましいヌクレオチドコンテキストを持つ変異スペクトルを同定し、その特徴がこれらのロングブランチに見られるものと一致することが示されました。最後に、治療記録を解析し、これらの高いG-to-A分岐とモルヌピラビルの使用との直接的な関連が確認されました。
**この論文は、JAMAのNewsにも引用されています。
Changes in SARS-CoV-2 Sequence Linked With Antiviral Usehttps://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2810576

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     

海外     

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID

国内        

海外       

4)対策関連
国内      
危機管理統括庁「専門家と連携カギ」 感染症会議最終日:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA180WW0Y3A011C2000000/
*「第10回日経・FT感染症会議(主催・日本経済新聞社、共催・英フィナンシャル・タイムズ)は18日、9月に発足した政府の内閣感染症危機管理統括庁の司令塔機能などについて議論した。新型コロナウイルス禍の経験を踏まえ、行政と専門家での連携を求める意見が相次いだ。同会議は同日午後に3日間の議論を集約し提言をまとめ、閉幕する。」

福島県、冬に備えコロナ病床整備 通常医療への移行も踏まえ
https://www.asahi.com/articles/ASRBJ6SW0RBBUGTB00D.html
*「今回は冬の感染拡大を想定し、酸素吸入などが必要な中等症以上の患者のためのベッドを「セーフティーネット」として確保するため国が示した方針に沿う対応。過去最大の流行だった昨年12月ごろの「第8波」の入院患者760人を基準に、入院患者が253人未満なら確保病床0床、608人以上になったら137床まで増やす4段階で変動させる=表。従来の465床より大幅に減るが、入院対象は限定。軽症者らでも入院が必要と判断されるケースがあれば、コロナ専用の確保病床でなく一般病床で受け入れる。」

木下博勝医師、患者にマスク着用を呼びかけ…まさかの展開「逆ギレされる方がいる」医療現場の現状に嘆き - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20231018/spp/000/006/070000c
*「「最近やっと、Yahooニュースでも話題になって来ましたが、状況は悪くなるばかりです 咳止めは無くなる一方です」と、新型コロナ第9波による薬不足の現状を吐露。「大人は、錠剤は元より、漢方薬も品薄で、このまま冬に突入します。つまり、風邪のシーズンです。子供も、粉やシロップが品薄になってきています。現場で、患者さんから怒られる様子が想像出来ます」とため息をついた。」

海外       

5)社会・経済関連     
不登校・虐待・薬の過剰摂取…「グリ下」の若者の悩みに寄り添う弁護士や経営者ら
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231017-OYT1T50150/
*「学校や家庭に居場所がない少年少女が今も大阪・ミナミの「グリ 下(した)」に集まっている。コロナ禍で閉まっていた飲食店が再開した後も、悩みを抱える人たちの「居場所」となっており、そんな若者を支援する動きが出ている。警察や行政もトラブルに巻き込まれないよう対策を強化している。」

コロナ交付金、112億円不適切 自治体調達マスクなど―意向確認せず未使用・検査院
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023101801055&g=cov
*「新型コロナウイルス対策のために国が創設した「地方創生臨時交付金」で2020、21年度に自治体が実施した事業について会計検査院が調査したところ、18府県で計約112億円が適切に活用されていなかったことが18日、分かった。配布先への意向確認を行わずに緊急調達したマスクが、倉庫に保管されたままになるなどしていた。検査院は内閣府と総務省に対し、保管物品の活用策を検討するなどの改善を求めた。」

検査機器21台、ほぼ利用されず 新型コロナのゲノム解析―検査院
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023101700901&g=cov
*自治体購入のコロナ対策物品6億円分が未使用 会計検査院が地方創生臨時交付金を調査
https://www.sankei.com/article/20231018-SZLI5DGCYJNETDO54RGNVJGMMU/
*コロナ検査機器 3割未使用、交付金で配備 6億円分…検査院指摘
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231018-OYT1T50025/
*「新型コロナウイルスの感染経路特定や、変異株の発生動向を監視するため、国の交付金で民間検査機関などに「次世代シーケンサー」と呼ばれる全遺伝情報(ゲノム)解析機器を整備した事業で、2020~21年度に18道府県で整備した63台のうち、8道府県の21台がほぼ利用されていなかったことが17日、会計検査院の調査で分かった。検査院は厚生労働省に対し、機器の有効な活用を求めた。」

尾身茂氏手記から読み解く、新型コロナの科学の光と影:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK102S00Q3A011C2000000/

米ファイザー、23年4割減収 コロナ特需の反動大きく:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16BWM0W3A011C2000000/


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