COVID-19情報:2023.08.30

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文はJAMA系列から3編です。
1篇目は、AMI(Acute Myocardial Infarction)で入院したメディケア患者において、COVID-19の大流行が治療および転帰における格差の増大と関連していたかどうかを調査することを目的とした研究です。この研究では、病院でのCOVID-19負荷はNSTEMIの治療や転帰の悪化と関連していましたが、人種や民族に関連した不公平はパンデミック中に有意に増加することはありませんでした。
2編目は、南オーストラリア州の学生における連続6年間の幸福度の傾向を調べ、社会人口統計学的特性の影響を探ることを目的とした論文です。国勢調査の年次データを用いたこの縦断的分析では、特に2020年以降、学生の幸福度に低下傾向がみられました。
3編目は、パルスオキシメトリーによる酸素飽和度の過大評価とCOVID-19療法の投与の遅れ、入院期間、再入院のリスク、および院内死亡率との関連を調査することを目的とした研究です。このコホート研究において、パルスオキシメトリーによる酸素飽和度の過大評価は、人種に関係なく、COVID-19療法の実施の遅れと再入院の高い確率をもたらしました。

報道に関しては、コロナワクチン集団接種が割高についたとのことです。これは、各種の接種ブローカーが動いていたため仕方のなかったことかと考えました。
国際でみると、中国が入国時のコロナ検査を撤廃したようです。
また、「首相官邸が主導、最大300人規模で対応 感染症危機管理庁」は必読です。

高橋謙造

1)論文関連    
JAMA
The COVID-19 Pandemic and Associated Inequities in Acute Myocardial Infarction Treatment and Outcomes

*AMI(Acute Myocardial Infarction)で入院したメディケア患者において、COVID-19の大流行が治療および転帰における格差の増大と関連していたかどうかを調査することを目的とした研究です。
本研究は、2016年1月~2020年11月にAMIで入院した患者のメディケアデータを用いた横断研究です。患者はヒスパニック、非ヒスパニック黒人、非ヒスパニック白人に分類され、COVID-19を有する入院患者の割合の関数として、人種および民族と転帰との関連を中断時系列を用いて評価しました。2022年10月から2023年6月までのデータを用いています。
主な曝露は、パンデミック期間中の医療中断の代理として、週単位でのCOVID-19を有する入院患者の病院の割合とし、主要アウトカムは、血行再建術、30日死亡、30日再入院、自宅退院以外としました。
AMIによる入院患者合計1,319273例(女性579,817例[44.0%];黒人122,972例[9.3%];ヒスパニック117,668例[8.9%];白人1,078,633例[81.8%];平均[SD]年齢77 [8.4]歳)が組み入れられました。非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI:non–ST segment elevation MI)患者全体では、死亡率と非自宅退院の調整オッズはそれぞれ51%(調整オッズ比[aOR]、1.51;95%CI、1.29-1.76;P<0.001)と32%(aOR、1.32;95%CI、1.15-1.52;P < .001)、パンデミック前に入院した患者と比較して、病院でのCOVID-19負荷が高い週(30%以上)に入院した患者では、血行再建術のオッズはそれぞれ27%(aOR、0.73;95%CI、0.64-0.83;P<0.001)減少しました。NSTEMIの黒人患者では、COVID-19による病院負担が10%増加するごとに、死亡のオッズが臨床的に重要でない7%増加しました(aOR、1.07;95%CI、1.00-1.15;P = 0.04)が、白人患者と比較して再入院や自宅退院以外の退院の増加や血行再建率の低下はみられませんでした。ヒスパニック系のNSTEMI患者では、白人と比較して、COVID-19の病院負担に基づく有害転帰の増加の差はみられず、病院でのCOVID-19負荷の増加は、STEMI全体あるいは人種・民族グループ別の転帰や血行再建術の使用率の変化とは関連しませんでした。
この研究では、病院でのCOVID-19負荷はNSTEMIの治療や転帰の悪化と関連していましたが、人種や民族に関連した不公平はパンデミック中に有意に増加することはありませんでした。これらの所見は、病院でのCOVID-19の負担が大幅に増加した場合にAMIで入院した患者に対して、COVID-19の流行に関連した転帰を緩和するためのさらなる努力の必要性を示唆しているとのことです。

Trends in Well-Being Among Youth in Australia, 2017-2022

*南オーストラリア州の学生における連続6年間の幸福度の傾向を調べ、社会人口統計学的特性の影響を探ることを目的とした論文です。
Well-being and Engagement Collection(WEC)センサスから、南オーストラリア州の公立学校に通う4年生から9年生(n=40,392~56,897/年)の年次(2017~2022年)横断データを縦断的に分析しました。
暦年(2017~2022年)および就学記録からの社会人口統計学的特性(性別、学校学年、親の学歴、家庭で話す言語、居住地域)を曝露とし、主要アウトカムとしては、生徒が自己申告した生活満足度、楽観性、幸福感、認知的関与、感情調節、忍耐力、心配、悲しみ等としました。
6年間(2017年~2022年)にわたり、合計119,033名の生徒(平均[SD]年齢12.1歳、男性51.4%)が本研究に参加しました。ほとんどの幸福度指標は時間の経過とともに低下し、2020年以降は一貫して幸福度が悪化しました。例えば、2017年と比較して、悲しみは2020年に0.26(95%信頼区間、0.25-0.27)ポイント高くなり(標準化平均差[SMD]、0.27)、2021年と2022年も0.26ポイント以上高いままでした(SMD、0.27)。ほぼすべての時点において、幸福度が最も高かったのは、(認知的関与と忍耐力を除く)性別が男性で、学年が早く、親の教育水準が最も高く、家庭で英語以外の言語を話し、地域外および遠隔地に住んでいる生徒でした(満足感、楽観性、感情調節について)。幸福度における社会人口統計学的な差は、時間の経過とともに概ね一貫していましたが、認知的関与と忍耐力を除くすべての指標において、性差が2020年から拡大しました。例えば、2017年から2022年の間に、悲しみは男性よりも女性で0.27(95%CI、0.25-0.29)ポイント増加しました(SMD、0.28)。
国勢調査の年次データを用いたこの縦断的分析では、特に2020年以降、学生の幸福度に低下傾向がみられました。社会人口統計学的格差が最も大きかったのは、性別が女性の生徒、低学年の生徒、親の教育水準が低い生徒でした。すべての若者、特に格差に直面している若者の幸福のために、緊急かつ公平な支援が不可欠であるとのことです。

Clinical Outcomes Associated With Overestimation of Oxygen Saturation by Pulse Oximetry in Patients Hospitalized With COVID-19

*パルスオキシメトリーによる酸素飽和度の過大評価とCOVID-19療法の投与の遅れ、入院期間、再入院のリスク、および院内死亡率との関連を調査することを目的とした研究です。多くのパルスオキシメーターは有色人種において酸素飽和度を過大評価することが示されており、この現象は臨床的な影響を及ぼす可能性があり、酸素飽和度の過大評価とCOVID-19投薬のタイミングおよび臨床転帰との関係は依然として不明であるという背景があります。
このコホート研究は、2020年3月から2021年10月の間に機能的動脈酸素飽和度(SaO2)測定が1回以上行われた米国の186の急性期医療施設でCOVID-19のために入院した患者を対象としました。患者のサブセットは、2020年7月1日以降に入院し、パルスオキシメーターの飽和度(補助酸素なしでSpO2レベルが94%以上)に基づくCOVID-19治療が直ちに必要でなかった事例です。
自己申告による人種および民族、10分以内の同時SaO2とパルスオキシメーター飽和度(SpO2)の差、COVID-19療法の必要性が当初認識されなかった(SpO2レベルが94%以上にもかかわらず最初のSaO2測定値が94%未満)事例を曝露としました。
主要アウトカムはパルスオキシメーターの測定誤差(SpO2 - SaO2)の程度およびCOVID-19療法の必要性が認識されなかったオッズと人種および民族との関連を線形混合効果モデルを用いて決定しました。治療の必要性が最初に認識されなかったことと、治療(レムデシビルまたはデキサメタゾン)を受けるまでの時間、院内死亡率、30日再入院、および入院期間との関連は、混合効果モデルを用いて評価しました。すべてのモデルで、人口統計、臨床的特徴、および病院部位を考慮し、人種および民族による効果修飾は交互作用項を用いて評価しました。
SpO2とSaO2を同時に測定した患者24,504例(平均[SD]年齢63.9[15.8]歳;女性10,263例[41.9%];黒人3,922例[16.0%]、ヒスパニック7,895例[32.2%]、アジア系2,554例、ネイティブアメリカンまたはアラスカンネイティブ、ハワイアンまたはパシフィックアイランダー、またはその他の人種または民族[10. 4%]、白人10,133人[41.4%])では、パルスオキシメトリーは白人患者と比較して、黒人患者(調整平均差、0.93[95%CI、0.74-1.12]パーセンテージポイント)、ヒスパニック(0.49[95%CI、0.34-0.63]パーセンテージポイント)、およびその他(0.53[95%CI、0.35-0.72]パーセンテージポイント)のSaO2を過大評価しました。COVID-19療法が直ちに必要でないSpO2-SaO2ペアを同時に有する患者8635人のサブセットでは、黒人患者は白人患者と比較して、COVID-19療法の適応をマスクするパルスオキシメトリー値を有する可能性が有意に高いことが明らかになりました(調整オッズ比[aOR]、1.65;95%CI、1.33-2.03)。COVID-19療法の必要性が認識されていない患者は、人種にかかわらず、COVID-19療法を受ける確率が10%低く(調整ハザード比、0.90;95%CI、0.83-0.97)、再入院のオッズが高くなりました(aOR、2.41;95%CI、1.39-4.18)(交互作用のP=0.45およびP=0.14、それぞれ)。COVID-19療法の必要性が認識されていないことと、院内死亡率(aOR、0.84;95%CI、0.71-1.01)または入院期間(平均差、-1.4日;95%CI、-3.1~0.2日)との関連は認められませんでした。
このコホート研究において、パルスオキシメトリーによる酸素飽和度の過大評価は、人種に関係なく、COVID-19療法の実施の遅れと再入院の高い確率をもたらしました。黒人患者では治療の必要性が認識されていない可能性が高く、集団レベルの健康格差に影響を及ぼす可能性があったとのことです。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     
コロナワクチン集団接種が割高に 22年度、個別の1.8倍 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA18AKI0Y3A810C2000000/
*「財務省は2022年度に地方自治体が大規模会場で実施した新型コロナウイルスのワクチン集団接種に関して、診療所などでの個別接種よりも割高だったとの調査結果をまとめた。1回あたりの単価がおよそ1万8000円で個別より8割ほど高かった。
集団接種には大勢に速やかに接種できる利点がある。感染が急拡大した局面では、各地の医療機関だけでは接種に時間がかかる恐れがあった。自治体などの集団接種によって21年6月には1日100万回接種を実現し、重症化や感染拡大の防止につなげた。
足元では接種率は下がっており、財政上は無駄が生まれやすい状況になりつつある。財務省は23年度の接種回数が22年度よりさらに減るとみて、個別接種への切り替えを進めるよう求めていく考えだ。」

冷凍保管するワクチン3万4673回分、ブレーカー落ち廃棄…滋賀県守山市 
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230829-OYT1T50272/

海外     

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     
オミクロン株派生型、通称「エリス」が米国で主流に 入院患者が増加 
https://mainichi.jp/articles/20230829/k00/00m/030/013000c
*「米国で新型コロナウイルスによる入院患者数が増加傾向にある。米疾病対策センター(CDC)によると、オミクロン株の新たな派生型「EG・5」(通称エリス)が主流となり、米政府が公衆衛生上の緊急事態宣言を解除した今年5月中旬前の水準に逆戻りした。秋から冬にかけての感染拡大が懸念されている。
 CDCによると、8月12日までの1週間で入院患者数は21・6%増加し、過去3年で最低水準だった6月下旬から倍増した。ただし、入院患者数は、オミクロン株の流行ピーク時だった2022年1月の1割未満にとどまっている。」

Long COVID

国内    
新型コロナ対応引く尾身氏「首相に3点お願いした」 面会後に明かす 
https://www.asahi.com/articles/ASR8Y5JFQR8YULFA00Z.html?iref=pc_special_coronavirus_top
退任の尾身氏「感染症に強い社会へ努力を」 岸田首相と面会 
https://mainichi.jp/articles/20230829/k00/00m/040/200000c
*「対策推進会議」議長退任の尾身茂氏、首相からねぎらい受け「肩の荷が下りた」 
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230829-OYT1T50148/
*「総理に3点お願いをした。
 人間、誰しも「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ということがある。平時に、この3年間の教訓を生かして、しっかり危機に対する準備をしておくことが非常に重要だと思う。
二つ目は、必要な疫学情報が、迅速に自治体間、あるいは国と自治体の間で共有されなかった。これは非常に日本にとってのハンディキャップだった。
三つ目は、日本の医療の質は世界でもトップクラスと言われていた。しかし、医療逼迫(ひっぱく)が起きた。急激に来た医療のニーズにどう応えるか、今からしっかりと頭の体操をしておいた方がいいと、この3点を申し上げて、感謝を申し上げた。」
*言っていることは正しいですが、JCOHがコロナ患者の受け入れをしなかったのも頭の体操の結果でしょうか。

政府、退任の尾身氏に謝意 松野官房長官「コロナで連携」 
https://www.sankei.com/article/20230830-NFSNVS6VCFNPRCVIADKR3T3DUI/

長野県が医療警報、コロナ5類移行後初 お盆で感染拡大 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC295JP0Z20C23A8000000/    

群馬県で定点当たり19.02人 前週比で5.18人増 21~27日 
https://www.tokyo-np.co.jp/article/273574?rct=coronavirus

海外       
外貨稼ぎの北朝鮮労働者、中国から帰国ラッシュ…1週間の隔離と思想教育を徹底 
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230828-OYT1T50181/
*コロナ対策で中国に滞留していた北朝鮮国民 初めて陸路で帰国 対策緩和で 
https://www.tokyo-np.co.jp/article/273253?rct=coronavirus
*「北朝鮮が、新型コロナウイルス流入阻止のため禁じていた外国との人的往来を再開し、中国各地で北朝鮮への帰国ラッシュが始まった。外貨稼ぎのため、国連安全保障理事会の制裁決議を破って労働者を中国に再び派遣するかどうか注目される。」

4)対策関連
国内    
首相官邸が主導、最大300人規模で対応 感染症危機管理庁 
https://www.sankei.com/article/20230830-4SBCVZWATBO3DEOXDGIUX7Q7EY/
*コロナ禍の「反省」生かせるか 危機管理庁、9月1日発足 
https://www.sankei.com/article/20230830-LF7HTOYRWVPWRHAHLGQ7MOBEPQ/
*「内閣感染症危機管理統括庁は、次の感染症有事の際に政府の司令塔となる。平時は38人の専従職員で構成され、有事に備えた行動計画などを立案したり、有事を想定した訓練を実施したりする。中央省庁の準備状況にも目を配る。
有事になると、事前にリスト化し、訓練を受けた各府省庁の職員が加わり、101人に増員される。各府省庁の幹部職員を統括庁と併任させ、最大計300人規模で危機対応に当たる。
首相官邸が主導する形で、各府省庁の総合調整を行い、一元的に対応するため、統括庁のトップの「内閣感染症危機管理監」には、首相を直接支える官房副長官が就く。」

海外    
中国、入国時のコロナ検査を撤廃 30日から抗原も不要に 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM287ZV0Y3A820C2000000/ 
*「中国外務省は28日、海外から中国への入国時の新型コロナウイルス検査を30日から撤廃すると発表した。これまで求めていた抗原検査などによる陰性結果の報告を不要にする。汪文斌副報道局長が同日の記者会見で明らかにした。
中国は1月に新型コロナを封じ込める「ゼロコロナ政策」を終え、入国時に義務付けてきたホテルでの隔離をなくした。4月には搭乗前48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の提出義務を廃止した。
抗原検査かPCR検査による陰性結果の報告もなくし、水際対策をコロナ前の状態に戻す。国内外の人的往来を円滑にし、経済の活性化につなげる狙いがある。」  

5)社会・経済関連
自分の唾を出してコロナ補助金申請 検査事業巡り巨額不正の告発 
https://mainichi.jp/articles/20230829/k00/00m/040/150000c
*「自分の唾を吐き出し、検査をしたことにして政府の補助金をだまし取ろうとする――。新型コロナウイルス感染症が拡大していた時期に、町中のあちらこちらで見かけた「無料検査所」。神奈川県の検査所では、従業員たちによる不正まがいの行為が横行していた。1日で2000万円を荒稼ぎする日もあったという。」

和歌山の看護職員77%が「仕事辞めたい」、コロナ5類移行後も「状況は改善していない」 
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20230829-OYT1T50083/

ゼロゼロ融資返済、正念場に 大阪・京都は23年度が最多 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF177K40X10C23A8000000/

 
   


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