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【農】アミノ酸の種類

概要

地球上のほとんどの生物はタンパク質をつくるためにアミノ酸を体内で作るか体外から摂取する必要があります。人間は全てのアミノ酸を体内で作る事ができないので野菜や動物、魚の肉を食べアミノ酸を摂取しますが、植物は窒素・リン酸・カリウムの基本元素があれば全てのアミノ酸を合成し成長する事ができます。

アミノ酸の種類

タンパク質を構成する20のアミノ酸

タンパク質を構成するアミノ酸は主に20種類以上あります。
その他にタンパク質合成後に修飾を受けて作られるアミノ酸やタンパク質を構成しない遊離アミノ酸などもあります。

  1. Isoleucine イソロイシン
    イソロイシン、ロイシン、バリンの総称をBCAA(Branched Chain Amino Acid: 分岐鎖アミノ酸)といいます。
    タンパク質構成アミノ酸、疎水性で溶解度はあまり高くない。食品では魚(マグロ)、豚肉、鶏卵などに含まれています。

  2. Leucine ロイシン
    ロイシン は、アミノ酸の1種であり、側鎖に イソブチル基を持つため、疎水性アミノ酸に分類される。また、非極性側鎖アミノ酸で分枝鎖アミノ酸に分類される。略号は Leu あるいは L である。白色結晶となることから、ギリシャ語で「白い」を意味する leucos にちなみ命名された。

  3. Valine バリン
    バリン は、α-アミノ酸の1種で、側鎖にイソプロピル基を持つ。2-アミノイソ吉草酸とも呼ばれる。吉草根が名前の由来である。 ロイシンやイソロイシンと同様に、疎水性アミノ酸、非極性側鎖アミノ酸に分類される。L-バリンは20のタンパク質を構成するアミノ酸のうちの1つで、必須アミノ酸である。バリンを多く含む食品として、カッテージチーズ、魚、鶏肉、牛肉、ラッカセイ、ゴマ、レンズマメが挙げられる。

  4. L-Histidine ヒスチジン
    タンパク質構成アミノ酸、成長に重要。
    食品では魚(鰹、まぐろ)、肉類(鶏肉、豚肉)、チーズなどに多く含まれる。

  5. L-Lysine リジン(リシン)
    タンパク質構成アミノ酸、成長に重要。
    食品では魚(かつお、まぐろ)、肉類(鶏肉、豚肉)、チーズなどに多く含まれる。穀物(米、小麦、とうもろこし)には少ないが、豆類には豊富に含まれる。
    アルギニンとの拮抗作用によってヘルペスウイルスの増殖を抑制するとされている。

  6. L-Methionine メチオニン
    タンパク質構成アミノ酸、硫黄を含んでおり独特のにおいを持つ。疎水性で溶解度はあまり高くない。
    食品では魚(かつお、まぐろ)、肉類(鶏肉、豚肉)、鶏卵、野菜ではほうれん草、ブロッコリー、にんにくなどに多く含まれる。
    同じく硫黄を含むアミノ酸であるシステインやカルニチン、タウリンの生合成に必要であり、脂質代謝に重要とされる。

  7. L-Phenylalanine フェニルアラニン
    タンパク質構成アミノ酸、食品では豆類(大豆、小豆、そらまめ)、ナッツ類(落花生、カシューナッツ)などに多く含まれる。
    フェニルアラニンはフェニルアラニン4-モノオキシゲナーゼ酵素によりチロシンへ変換される。チロシンからドーパ、さらにはドーパミン、エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)などが生合成される。

  8. L-Threonine スレオニン(トレオニン)
    タンパク質構成アミノ酸、魚類、肉類、野菜ではえだまめ、そらまめなどに多く含まれる。

  9. L-Tryptophan トリプトファン
    タンパク質構成アミノ酸、水に難溶。
    大豆や大豆から加工された食品、魚類、かつお節などに多く含まれる。
    ナイアシン(ニコチン酸)やセロトニン、メラトニンなどの前駆体として重要なアミノ酸。

  10. L-Asparagine アスパラギン
    タンパク質構成アミノ酸、水にやや難溶。
    魚(鰹、まぐろ)、肉類(牛肉)、乳製品のほか、名前の由来であるアスパラガス、じゃがいもなどに多く含まれている。アスパラギン酸とアンモニアからアスパラギンシンテターゼにより生合成される。

  11. L-Aspartic acid / Aspartate
    アスパラギン酸

    タンパク質構成アミノ酸、魚(かつお、まぐろ)、肉類(鶏肉、豚肉)のほか、アスパラガス、アボカドなどに多く含まれている。アスパラギン酸はオキサロ酢酸とグルタミンから作られる。またオルニチン回路においても必要なアミノ酸である。窒素やエネルギーの代謝に関係し、エネルギー源として最も利用され易いアミノ酸のひとつ。

  12. L-Alanine アラニン
    タンパク質構成アミノ酸、水に易溶で甘味をもつ。魚(鰹、まぐろ)、肉類(鶏肉、豚肉)、また穀類、豆類などにも多く含まれる。アラニンはピルビン酸とグルタミン酸に変換され、ピルビン酸から糖質(グルコース)が作られる。グリコーゲンの分解を促進するグルカゴンというホルモンを分泌する作用も知られている。

  13. L-Arginine アルギニン
    タンパク質構成アミノ酸。落花生、大豆、肉類(牛肉、鶏肉)、卵黄、うなぎ、にんにくなどに多く含まれる。
    NO(Nitric Oxide: 一酸化窒素)の前駆体である。アンモニア解毒に関わるオルニチン回路の構成成分アミノ酸でもある。

  14. L-Cysteine / Cystine
    システイン・シスチン

    タンパク質構成アミノ酸、硫黄を含んでいる含硫アミノ酸の1つであり独特のにおいを持つ。疎水性で難溶。肉類(特にレバー)、魚類、鶏卵、野菜ではにんにく、たまねぎ、ブロッコリー、芽キャベツなどに含まれる。メチオニンからシスタチオニンに変換され、その後システインとなる。システインは生体にとって解毒及び抗酸化作用に重要なグルタチオンの構成アミノ酸の一つである。
    日本では湿疹、蕁麻疹、薬疹、中毒疹、尋常性瘡などの医薬品で使われている。

  15. L-Glutamine グルタミン
    タンパク質構成アミノ酸。結晶は安定だが、水溶液中では不安定である。肉類(牛肉、鶏肉)、牛乳、チーズ、卵黄などに多く含まれる。 特に筋肉に多く含まれる。
    グルタミン酸とアンモニアから生合成される。逆にグルタミンが分解するとグルタミン酸とアンモニアを生じる。

  16. L-Glutamic acid / Glutamate
    グルタミン酸

    タンパク質構成アミノ酸。海藻や小麦粉、サトウキビなどに多く含まれている。アラニン、アスパラギン酸、セリンが作られる際に必要なアミノ酸であり、また、グルタチオンやγ-アミノ酪酸(GABA)の原料ともなる。
    グルタミン酸とアンモニアからグルタミンが生合成される。
    うまみ成分であるグルタミン酸ナトリウムの原料として使われている。

  17. Glycine グリシン
    タンパク質構成アミノ酸、水に易溶で甘味をもつ。
    最も構造が単純で小さなアミノ酸であり、光学異性体(D/L体)はない。うになどの魚介類やゼラチン(コラーゲンタンパクが変性したもの)に多く含まれる。コラーゲンを構成するアミノ酸の約1/3をグリシンが占める。
    グリシンはセリンから作られ、グルタチオン、ポルフィリン、クレアチンなどの原料となる。
    食品としては、甘味料や日持ち剤としても利用されている。

  18. L-Proline プロリン
    タンパク質構成アミノ酸、水に易溶で甘味をもつ。穀類のほか、ゼラチンや動物の皮などに多く含まれる、コラーゲンの主要構成アミノ酸の一つであり、コラーゲン中のプロリンの約半分は水酸化されたヒドロキシプロリンとして存在する。

  19. L-Serine セリン
    タンパク質構成アミノ酸、大豆や大豆から加工された食品、大豆以外でも豆類に多く含まれる。繭糸に含まれるタンパク質・セリシンにも多く含まれる。

  20. L-Tyrosine チロシン
    タンパク質構成アミノ酸、水に難溶。
    チーズ、大豆などに多く含まれる。タケノコの水煮や納豆にしばしば白く析出して見られるのがチロシン。

その他のアミノ酸

  • L-Hydroxyproline / Oxoproline
    ヒドロキシプロリン

    タンパク質構成アミノ酸であるが、タンパク質中に組み込まれたプロリンのγ炭素原子にヒドロキシ基が結合した、つまり翻訳後に水酸化されることによって作られる修飾アミノ酸である。
    ゼラチン、肉類(すじ肉など)に多く存在する。
    コラーゲンに特徴的なアミノ酸であり、約10%をヒドロキシプロリンが占める。
    日本国内では化粧品に使用されている。

  • L-Ornithine オルニチン
    非タンパク質構成アミノ酸。しじみ、えのき、チーズなどに含まれている。
    アンモニア解毒に関わるオルニチン回路の構成成分として重要なアミノ酸。

  • L-Citrulline シトルリン
    非タンパク質構成アミノ酸。
    スイカやニガウリなどに多く含まれ、ヒト体内にも存在する。
    アンモニア解毒に関わるオルニチン回路の構成成分として重要なアミノ酸。

  • GABA γ-アミノ酪酸
    非タンパク質構成アミノ酸。
    発芽玄米の成分として有名であり、その他にも野菜、茶葉、発酵食品に多く含まれている。グルタミン酸から生合成される。

アミノ酸を含む代表的な植物

ブドウ(シャインマスカット)
ブドウの果汁にはアミノ酸が多く含まれています。シャインマスカットを含む多くのブドウ品種の果汁に含まれる主なアミノ酸はアルギニンになります。シャインマスカットの栽培方法にもよりますが、他に多く検出されるアミノ酸はギャバ・アスパラギン酸・アラニンと言われています。

トマト
トマト青枯病はトマトの病害で最も深刻とされている病害として知られています。トマト青枯病菌は土壌病害であり接ぎ木やクロルピクリンなどで対策を行いますが、収穫バサミや靴裏の土壌付着による土壌移動などでも発生を助長する要因となっているため防除困難な病害とされています。トマト青枯病の発生抑制にアミノ酸の一種であるヒスチジン、アルギニン、リシンなどが関与しているとの研究報告があります。これらのアミノ酸を与えたトマトはエチレンの生産量を増加させることでトマト青枯病への抵抗性を高めるとのことです。

イネ
無菌条件下で栽培したイネの幼苗はグルタミン・アスパラギンを直接吸収し、吸収量は無機態窒素と比べて同等以上であることが近年の研究でわかっています。特にグルタミンに関してはイネの根端に多く蓄積していることが明らかになっています。

チャ(やぶきた)
チャの生育促進と品質向上にはアミノ酸が関与していることが明らかとなっています。チャの主要品種である“やぶきた”の培養細胞にアミノ酸を処理したところ、アラニン・グルタミン・グリシン・テアニン・ギャバを栄養源としていることが近年の研究で解っています。

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