秋桜と紅葉 #シロクマ文芸部
「秋桜になれるかな……」
前を歩く彼の背中に、私はそっとつぶやいた。
彼は振り返りもせず歩き続ける。
聞こえなかったようだ。
私は少しホッとして、そして少しがっかりした。
私の姉であるさくらの結婚式に参列した帰り。
秋晴れの雲ひとつない天気の中、紅葉がきれいな道を彼と一緒に歩いていた。
さくらと彼は小学校の同級生。
近所に住んでいたこともあり、さくらは彼とよく遊んでいて、私も時折り混ぜてもらっていた。
私は兄ができたようで嬉しく、一緒に遊ぶのをいつも心待ちにしていた。
そ