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居る。

休日は娘に公園に行こうとよく誘われる。娘は比較的、身体を動かして遊ぶ事が好きなようだ。ボールを投げたり、蹴ったり、縄跳びをしたり、バドミントンもどきのラケットでシャトルを打ったり。身体を動かす技術は同じ年代では人並みといった所ではないだろうか。

娘と公園に行くと自転車で公園をハシゴして友達と遊び回っている長男と出会う時があり娘の相手をしつつ無意識に長男の遊んでいる姿に目が向いてしまう。長男は非常におとなしく、どんなふうにいつも遊んでいるのだろう?と気になってしまう。現在、四年生。友達の輪の中に入る事が苦手なのは幼稚園の頃から。しかし、最近は頻繁に友達が家に遊ぼうといってインターホンを連打し、激しくドアをノックし早く早くと誘いにやってくる。

二年生、三年生の頃は昼休みは教室でひとり自由帳に漫画を書いていると聞いていた。クラスに溶け込めないから漫画を書いているのか、漫画を書きたいから書いているのかその辺は不明だ。その辺を想像してしまうとなんだか切なくなってしまう。
周りに溶け込めない性格は私に似たのかもしれない。私も休み時間は苦痛だった。あの頃は1人でいる事が耐え難く、でも輪の中に入っていけない。1人になる恥ずかしさと恐怖が入り混じった気持ちを抱え、周りにどう見られているのだろうと自意識過剰となり、休み時間が早く経過するのを祈る様な気持ちで過ごしていた。長男よ心境は良くわかるぜ。

公園で遊ぶとなると身体を動かす事になる。長男は運動は大の苦手だ。残念だがキャッチボールはひとつひとつの動作を頭で考えてやってしまってぎこちないし、まともに投げれない。鉄棒は逆上がりはできない。縄跳びはなぜか体幹が斜めになって傾いて跳ぶ。ドタバタ走る。家族で爆笑しながらテレビで見たいつかの運動神経が悪い芸人のさらに上をいき、なかなかハイレベルだ。息子の事をここまで書いていいのか?と父親として思うのだが何せ事実なのだ。

そんな長男。公園で遊ぶことは大丈夫なのか?と余計な心配が頭をよぎる。
その時、見かけたのは、ドッヂボールをしているところ。ドッヂボールに混ざってる体(てい)で端っこにいるだけだ。キャッチする事も無ければ、投げる事も無い。でも時々、友達に羽交い締めにされて標的にされたりしてゲラゲラと笑っている。そして、基本的には端っこにいる。ただそこに居る。居るだけなのだ。おそらくドッヂボールに関しては楽しくないのだろう。でも、少なくとも嫌ではないのか?

しかし、今日も誘われ、断る事もなく出かけて行く。そして、5時のチャイムと共に帰ってくる。手を洗い、うがいをして、鼻歌交じりで夕食までのわずかな時間、お年玉で購入した念願のNintendo Switchを一喜一憂しながら楽しんでいる。
長男にとっては毎日遊びに行く友達ができて少し世界が広がったのかもしれない。そこに一緒に居るだけでも満足なのかも知れない。知らんけど。

親としては心配は尽きないが、鼻歌交じりで過ごしているから良しとしよう。そして、要らぬ苦労はいらないけれども、どうか多難な人生であってほしいと、チョー矛盾した願いをささやかに願っている。

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