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[道具について]目打ちと菱錐とポンチ

道具を作るのもまた職人です。
ここでは、手にする度に背筋の伸びる素晴らしい道具と
制作の中で変わっていった道具を紹介します。

制作する中で些細な作業性の悪さを軽視することは
作品の質を確実に下げます。
道具を自分が使いやすくなるまで手を掛けた、手に馴染む道具を紹介いたします。

*目打ち
制作ではヨーロッパ目打ちと呼ばれる縫い目のマーキングをする道具を使用します。東京浅草にある岩田屋工具店の目打ちを使っています。
1寸(30.3mm)の間に15本、または14本の目が入る目打ちで、非常に細かい縫い目が特徴です。ステッチの感覚は2mmほどです。 
(現在も13本目までは生産可能とのこのです。)
この目打ちは職人が高齢のため現在は製造できない品物で、過去に制作したものの中から販売していただきました。
一生涯大切に使っていきたい品物です。

箱出しでは使用せず先端を加工してマーキングする形状を整えています。
革を貫通させる必要はないので、マークの視認性を高められるように先端を加工しています。

岩田屋工具店 ヨーロッパ目打ち

*菱錐
縫い穴を開けるための道具です。
目打ちでマークした穴を針が通るように、菱錐で開けながら縫い進めていきます。
両手は常に針か菱錐があって、縫製している間は針と同じくらい握りしめることになります。重心のバランスが良くて気に入っています。
錐の先端は縦長の潰れた菱形になっていて、必要最小限の大きさの縫い穴を開けることができます。
錐先端の形状は箱出しの状態から切削・研磨して大幅に変えています。
刃幅はちょうど針の2本分、これ以上狭いと針が通りにくくミスの原因になります。また、これ以上広いと縫い穴が糸に対して大きすぎ、縫いやすくはなりますが美しくない縫い目になります。

持ち手はシェラックフレークをアルコールで溶かした溶液を作って何度も塗り重ねています。
表面に光沢が生まれ、手に程よく引っ掛かるようになります。程よく滑り、程よく突っ張ってくれる使いやすい持ち手になりました。

岡田鞄道具展 菱錐 Round Type3


*釘締めポンチ

日本製の釘締めポンチを何度も探してようやく見つけることができました。
釘締めポンチは自作の金具を真鍮釘で取り付けるときに使います。
先端の仕上げが直接仕上げに反映されるので、綺麗な球状に先端を加工し、研磨剤で磨き上げています。

日本製釘締めポンチ
真鍮釘を通した状態
真鍮釘を適切な長さにカットした後、
釘締めポンチでたたいて断面を丸めて広げ、金具を固定。

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