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[フルオーダー]ナイフシースの制作

少し前になりますがフルオーダーでナイフシースの制作依頼をいただきました。

渓流釣りという実用的な使用環境でお使いになるので装備に引っ掛かりにくい装飾を排したシンプルなデザインを念頭に制作しました。
末永くお使いになれるように芯材はヌメ革とステンレスを用いた特殊な制作となりました。

下記に簡単ですが行程を記します。



・仕様の確認
装備に引っ掛かりにくい。納刀した状態でベルトに取付した際に少しグリップが上がるように。腰ベルトに平行する形で取り付けられる。などなど、、
本格的な渓流釣りの経験からしか得られない仕様をお伺いしながらデザインを考えました。
仕様を伺ううちに自然とデザインが決まっていきました。
要望が形を決定していく、まさに用と美の作品となりました。

土佐打ちのダマスカス鋼の美しい刀身を軸に、仕様を反映させた型紙を引きました。
簡単な試作を行い、サイズ感や安全性といった実用部分と美しさのデザイン部分を決定していき、本型紙を切り出しました。

・制作

革はどうしても長く使うと柔らかくなり、おそらく腰ベルトに沿うように変形することが予測できました。
ですので、ナイフの刃がある部分すべてに芯材を入れて、安全に納刀できるように制作しました。
ヌメ革を積み重ねてブロック状にしたあと、求める形状に切出小刀と豆カンナで成形していきます。

ステンレス板の形に切削されたヌメ革

前述の成形したヌメ革と成形したステンレス板をカシメて芯材とし、シース本体に貼り付け外周のステッチをもって一体させました。

芯材の革は削り込み、納刀しやすいように斜めにすいています。

腰ベルトとナイフシースをつなぐベルトは腕時計のストラップの要領で制作しました。
金具の当たる部分とナイフシースとストラップ部分の取付裏にも力布として伸び止めテープを仕込んでいます。

革→伸び止めテープ→金具→革(金具分のスペーサーとして)→革

ボタンが表面に浮かび上がらないようにボタンの形に漉いた革を挟み、削って調整した後、革を貼り仕上げました。

細かなこだわりを積み上げて細部ができあがりました。

納刀しやすいように入り口を斜めに漉き、仕上げ革を貼りこんだ。



・完成



使っていただきながら経過を見て手を加えていけるのがオーダーの良いところだと感じます。

フルオーダーの場合、お話を伺って設計しても想定外のことや使ってみないとわからないことも多くあり、経過観察しながら学びを積み重ねていくしかありません。
実用品ですのでいつも以上に緊張した制作となりました。
フィードバックをいただきながら手を加えていってさらに良いものを作っていくことができるのもフルオーダーの魅力と感じます。

オーダーいただき本当にありがとうございました。

Kenya

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