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地球の磁場を「見る」渡り鳥の眼の秘密

大空を自由に旅する渡り鳥。彼らはなぜ、迷子にならないのだろうか?
人生の迷子である私にとって、その理由には興味が尽きません。

渡り鳥が迷うことなく大空を旅できる秘密は、彼らの”眼”にあるようです。

彼らは地球の磁場が見えるらしい。何の目印もない海上を、迷わずに進める。そんな鳥たちが見ている世界がどんなものなのか、一緒に探っていきましょう。

磁場が見える?鳥たちの驚くべき能力

地球を旅する渡り鳥たちは、どうやって自分たちが進むべき方向を見つけているのか。この問題は研究者たちを長きに渡って悩ませてきました。最近の研究で、ようやくその謎を解明する手がかりが見つかっています。

鳥たちは地球の磁場をたよりに、自分たちの進むべき道を決めている可能性が浮上したのです。

具体的には、磁場を「見ている」といいます。彼らの目には、Cry4というタンパク質があり、この物質が磁場を見る手助けをしているんだとか。私達人間には見えない「磁場」をどうやって見ているのか、どんな見え方をするのか、気になりますよね。

鳥の目が磁場を感じる秘密のカギ

Cry4とは特殊な視覚タンパク質で、鳥たちの眼に存在します。このタンパク質は、光を感知するタンパク質の一種であり、特に青い光に敏感です。このCry4が鳥たちが地球の磁場を"見る"能力に密接に関与していると考えられています。

というのも、鳥たちは青い光が利用可能な状況下でのみ地球の磁場を感知できることが、これまでの研究で示されているからです。これは、Cry4のような光に反応するタンパク質が、鳥の磁場感知能力に必要な視覚メカニズムを提供していることを示唆しています。

また、鳥の眼の中でCry4が最も豊富に存在する領域は、特に多くの光を受け取る部分であることも明らかになっています。これは、鳥の磁場感知が光に依存しているという事実と一致しています。これらの情報から、Cry4が鳥の磁場感知に重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられます。

キンカチョウとヨーロッパコマドリの研究

鳥たちの磁場感知の謎を解明すべく、世界中の研究者たちが鳥の行動と生理学について詳しく調査しています。ここでは特に注目すべき二つの研究、スウェーデンのルンド大学によるキンカチョウの研究と、ドイツのカール・フォン・オシエツキー大学オルデンブルクによるヨーロッパコマドリの研究についてご紹介します。

キンカチョウの研究では、Cry1, Cry2, Cry4という3つの光受容タンパク質が、鳥の脳、筋肉、眼にどのように分布しているかを調査しました。その結果、Cry4が一日の間にわたって一定のレベルで”眼”に存在し続けることがわかりました。他のタンパク質が日々の生活リズムに従って分布が変化する中で、Cry4が一定のレベルを保つのは、おそらく磁場感知に関係していることを示唆します。

一方、ヨーロッパコマドリの研究では、コマドリが渡りの季節にCry4の発現が増えるという興味深い結果が得られました。渡りの際は磁場感知が重要になるため、Cry4がその能力と関連しているという証拠とも言えるでしょう。

これらの研究結果は、鳥たちが地球の磁場を感知する能力と、視覚タンパク質Cry4との間に密接な関連性があることを示しています。

まだ解明されていない謎

Cry4が鳥の磁場感知における大事な要素である可能性が強く示唆されているものの、実はまだ確定的な答えは出ていません。Cry1やCry2といった他の光受容タンパク質も、磁場感知能力に関与している可能性が指摘されています。

Cry4が確実に磁場感知のためのタンパク質であると確定するには、更なる研究が必要とされています。たとえば、Cry4の機能が損なわれた鳥が磁場をどのように感知するのかを観察することや、Cry1やCry2が磁場感知にどのように関与しているのかを明らかにすることなどです。

鳥が磁場をどのように'見る'か

では、鳥は具体的にどのように磁場を「見る」のでしょうか?私たちは他の生物の視界を完全に理解することはできませんが、一部の研究に基づいて強い推測を立てることができます。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の理論・計算生物物理学グループの研究者たちは、鳥の視界に「磁場フィルター」が存在すると予測しています。


こんな感じに見えるらしい(https://gigazine.net/news/20180413-birds-can-see-magnetic-fields/)

鳥が地球の磁場をどのように感知しているのかについての新たな理解が深まる一方で、まだ解明されていない部分も多く存在します。しかし、継続的な研究によって一歩ずつ、謎を解明していることも事実です。

地球の磁場を'見る'鳥たち

渡り鳥が大空を迷わず旅することができるのは、磁場を見ているからという説を解説しました。しかし、まだ明らかになっていない問いも多くあります。例えば、Cry1やCry2のような他のタンパク質が磁場感知にどのように関与しているのか、Cry4が機能しない鳥ではどのような影響があるのか、などです。

渡り鳥たちのナビゲーション能力とその背後のメカニズムを解明すれば、人生の迷子たるわたしも進むべき方向がわかるのかもしれない・・・。(そんなことはない)

この研究の最新情報を心待ちにしている。

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