Lee Konitz

大学生の時は、彼のインタビュー本を何回も読んだし、コピーもした、憧れのレジェンド、Lee Konitz。
彼の訃報を聞いて、ぼんやりとそういえばこんなことがあったなぁと思い出した事がありました。どうせこの記憶もすぐ薄れるんでしょうし、せっかくなので書いてみます。

2018年の11月、僕がNYのDizzy’sというジャズクラブで演奏した時のこと。
サウンドチェック後、楽屋でボーッとしてたら、おじいちゃんが一人とぼとぼと入ってきて一言、「今日は君たちが演奏するのかい?」と話しかけてきました。僕はてっきりお客さんが楽屋に迷い込んだのだと思って、客席はこっちですよと案内しようと近寄ったら、まあそのおじいちゃんがLee Konitzさんでした。
もうちょっとで僕はLee Konitzを楽屋から追い出すところだったんですよね。今思うとゾッとします。

とても優しい方でみんなに気さくに、いろんな音楽の話もしてくれました。
ベースのJohn Patitucciが僕のことを、今日のピアニストだと紹介してくれました。僕も緊張しながら挨拶したら、Leeはちょっと黙って、

「君は結婚してるの?」と聞いてきました。
してませんと僕が答えると、「そうか、早くしなよ。」と一言言いました。
今だに何でそんなこと聞かれたのかも全く分かりませんが、僕の祖母も生前そんなこと言ってたらしいので、多分僕が頼りない顔してたんでしょう。

結局、Leeは僕らの演奏を2セット全部客席で聴いてくれました。
演奏後、楽屋にまたきて「君のピアノ、よかったよ。」と言ってくれました。
僕はいつも正直で辛口な彼のインタビューを見てきたので、いやぁそんなはずない!と思ってしまいましたが、それでも嬉しかったです。励みになりました。
その後も「みんなからの挨拶ばかりで帰れないな」と文句を言いながら、みんなとずっと話してました。
夜も遅かったので、心配したJohn PatitucciがLeeの自宅まで車で送っていったそうです。

その半年後、ボストンで彼のライブも観ることができましたが、ゆっくりと鼻歌を歌う彼は音楽そのもので、友達と食い入るように聴き入ったのを覚えています。

R.I.P.

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