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「24歳の古書店」になりました。

お久しぶりです。店主の平末です。

今日はご報告と共に、2021年読んだ本の中から特に印象に残った本を3冊紹介できればと思います。


一年に一度生まれ変わるお店。

この度、「23歳の古書店」は「24歳の古書店」へと生まれ変わりました。理由は、店主が24歳になったからです。

実はこの古書店は、設立当初から一年に一度のリニューアルオープンをするという前提で始まっています。店主が25歳になったら「25歳の古書店」ですし、38歳になったら(そこまで続いてたら)「38歳の古書店」になるというわけです。

なぜこの名前かというと、ある意味でこの古書店を僕の人生の足跡として残していこうと思っているからです。

知識や経験は、常に新鮮であり続けることはできません。必ず元々持っていた考えや価値観、自分だけの常識の上に降り積もっていきます。23歳にして初めてちゃんと本に向き合った僕が、そのあとどこへ向かっていくのか。同じ歩幅で皆さんと歩んでいきたいと思っています。

2021年に読んだ本

僕は、23歳にして初めてちゃんと本を読み始めました。本を読むことはずっと苦手だと思っていましたが、ある本に出会ってからいつの間にか「次はどんな本を読もうかな」と考えるようになっていました。

それが、プロダクトデザイナー:深澤直人さんの「ふつう」という本です。去年の暮れに、たまたま手に取った本。そして2021年はこの本に突き動かされるようにさまざまな活動をしてきました。

今日は、僕が今年読んだ50冊近い本の中から特に面白かった本を3冊紹介したいと思います。



1. 「わかりやすい民藝」/ 高木崇雄

この本は、d&departmentから出版されているシリーズの一つで、僕がたまたま出会った「ふつう」もこのシリーズのうちの一つです。

元々工芸品や器などが好きだった僕は、深澤さんの影響で”デザイン”や”民藝”というキーワードに興味を持ち始めました。そしてこの本は、僕にその後の生き方を示してくれることになります。

「民藝」は、器などのモノをさしていう言葉ではなく、どちらかというと「哲学」のようなもの。僕の感覚的には荘老思想などに近いです。その中でも、柳宗悦の哲学はちょうど今の世を機械的・効率的に生きる人々に、「自然に帰れ」と言わんばかりのメッセージ性を含んでいて、程よく心に響いてくるものだと感じました。

非常に哲学的で理解が難しい民藝ですが、この本はそんな民藝を文字通りわかりやすく「工藝風向」の高木さんが解説してくれています。「名も無き物事を繋いでいく」ということの大切さを、改めて考えさせられます。


2.「照葉樹林文化」/ 上山春夫編

さて、残る2冊はどちらも70年代の本です。この照葉樹林文化という一風変わったタイトルの本は、spectator「土のがっこう」を読んで知りました。なかなか古い本とあって、メルカリで探すのもやっと。ようやく出会って読んでみると、全てが驚きでした。

まず、70年代というのはちょうど大阪万博が行われたことからも分かるように、日本が最も高度経済成長期の勢いがある頃でした。そしてそれと同時に各地で公害問題や開発の問題が発生し、環境や自然との関わり方に対して警鐘を鳴らす人々が現れた時代でした。

それはまさに、今のSDGsの先駆けとも言える時代。そして今と同じように、これからの未来をどのように歩んでいくのかを考えるため、日本人のルーツや原風景について多くが語り合われた時代だったのではないかと思います。その語り合いをそのまま編集して出来上がったのがこの「照葉樹林文化」という本なのです。

日本という国土がいかに世界的に見ても珍しい環境であるかということ。「照葉樹」という珍しい区分で植生を見たときに、農耕が始まる前の日本人がどのような生活をしていたのかを、採集・半栽培・栽培といったいくつかの段階に分けて農耕につながっていくという仮説が展開されていたりします。

ちょうど僕が、民藝的なものの見方を獲得した時だったので、そもそも「日本人らしさ」とは何かとか、より遠いルーツについて興味がありました。元々地理が好きな僕は、土や自然環境が文化・社会に目に見える形で影響を残しているという説が多角的に議論されているこの本に、すごく魅力を感じました。


3.「気流の鳴る音」/ 真木悠介

大学の友人に教えてもらった本。なぜこの本を選んだのか。

僕は今年、一貫して大切にしていたのが「自然との共生」です。2021年が始まる時にはまだ「人間の世界」にいた僕は、年の暮れにはもはや人間界を飛び越して、地球の有機物も無機物も、全てが生きていて平等なんだと思うようになっていました。菌、岩石、雑草、どれかが欠けても成り立たないこの世界の不思議なエネルギーのバランスに美しさを感じ始めた一年でした。

そんな美しさを知ることができる本が、「気流の鳴る音」。ネイティブアメリカンのドン・ファンという男性の様々な教えの中からいくつかを紹介し、その美しさを感じるまでに4つの段階が存在するという仮説を立てています。

この本の中でいくつも和訳されたネイティブアメリカンの名も無き詩や教えが出てくるのですが、それがあまりに美しいんです。最後に、この本の冒頭で登場し、僕の心を洗ってくれた詩を紹介したいと思います。


美が前にある
美がうしろにある
美が上を舞う
美が下を舞う
私はそれにかこまれている
私はそれにひたされている
若い日の私はそれを知る
そして老いた日に
しずかに私は歩くだろう
このうつくしい道のゆくまま



24歳の古書店は、これからもマイペースではありますが更新していければと思います。これまでに読んだ本の中にも、まだまだ紹介したい本もあるので、追々ご紹介できればなと。

それではまたお会いしましょう。

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