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『 オムニバース 』 の現場から ~ メインビジュアル編 ~ (無料記事)

都内のスタジオで、僕が作・演出を担当する舞台『オムニバース』の、メインビジュアルの撮影がおこなわれました。

東京には、なんやかんやで月に一回くらいは訪れます。かつては住んでいた東京ですが、今では出張です。
来るたびに思うこと。自分と関係ない店がいっぱいある。食品業者の車をよく見る。コインパーキングの値段がえげつない。街全体の消費電力が凄そう。誰かしら知り合いがたまたま近くにいる。これが、僕にとっての東京のイメージ。

首都高を走っていたら、電光掲示板に「芝公園入り口付近 見物渋滞」って出てたんです。見物? 東京タワーを? しばらくすると、情報どおり渋滞になりました。反対車線で、事故処理がおこなわれていました。これを見物して渋滞になっていたのか。なんだか東京らしいなと思いました。
そんな渋滞も、わりとあっさり抜けまして、スタジオには遅れることなく到着しました。

いきなり、おびただしい数の衣装が目に飛び込んできました。僕が描いたラフスケッチをもとに、きっちり期待を超えるスタイリストさんの仕事量がそこにありました。この時点で、僕の演出家としての心は大興奮。「これはいい作品になるぞ!」って、気持ちが高鳴りました。

メイクルームに顔を出したら、ご出演の浅沼晋太郎さんがすでに現場入りしてました。
「おはようございまーす」
軽く挨拶を交わす、大学の先輩と後輩。ああ、今日もすごくいい声だ。
ほどなく、木村昴さんも到着。
「よろしくお願いします!」
と、握手。ああ、今日も放たれる、ものすごい生命力。まぶしいぜ、きむすば。

現場ではいつも、丁寧にコミュニケーションをとることを心がけています。カメラマンさんに演出意図を伝え、撮影プランを確認。スタイリストさんと一緒に、狙いにハマる衣装をセレクト。出演者にポーズや表情などを説明。こういうとき、僕は基本立ちっぱなしです。役者さんへの立ち方の指示も、自分の体を使って説明します。パーマセルテープをバッテンにした目線のバミリも、僕が調整します。こういう地味な裏方仕事が、作品のクオリティに響くのです!

『オムニバース』はオムニバス作品集です。出演者のお二人には、いくつもの役を演じていただきます。というわけで、今回のメインビジュアルのアイデアは、お二人に何種類もの衣装を着ていただいて、それをコラージュする、というもの。
撮影は、おひとりずつ。衣装を着て、カメラの前に立ち、いくつかのポーズで撮影。終わったら、次の衣装に着替える。その数なんと、10パターン。

当日のスケジュール表に、少し驚いたことがありました。なんと出演者のお二人、撮影の合間に取材を受けることになっていたのです。隙間を縫うように働く、売れっ子声優のフットワーク。作品の存在を広く伝えてくれる出演者の活躍ぶりは、つくる立場の僕にとって、本当に頼もしいものです。

撮影はスイスイ進み、予定より早く終了。とってもいいのが撮れました。
控え室でおいなりさんを食べていたら、浅沼晋太郎さんからの報告。僕もよく知る後輩の劇作家が近くにいるらしく、今からここに遊びに来るとのこと。これです、これ。誰かしら知り合いがたまたま近くにいる。東京狭い! そしてほどなく現れた後輩の劇作家と、ひとしきり近況報告などの雑談を楽しみ、本日のミッション、クリア。
帰りの車の中から見る、美しい東京の夜景。やはり消費電力が凄そうでした。

出演者のお二人に会うと、いつも元気とやる気をもらえます。脚本、丁寧に執筆中です。がんばります。きむすば劇場 旗揚げ公演『オムニバース』、どうぞお楽しみに。

きむすば劇場 旗揚げ公演
『オムニバース』
出演 木村昴 浅沼晋太郎
作・演出 小林賢太郎
2023年10月25日(水)〜11月5日(日)
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

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