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『 オムニバース 』 の現場から 〜 まとめ編 〜 (無料記事)

きむすば劇場 旗揚げ公演『 オムニバース 』は、無事に千秋楽を迎えました。ご来場、ありがとうございました。作・演出を担当しました、小林賢太郎ともうします。

始まりは、木村昴さんからの1本のメールでした。
木村昴さんと浅沼晋太郎さんによる舞台公演の、作・演出のご依頼をいただいたのです。メジャー作でご活躍されているお二人の舞台に、小林賢太郎を選ぶとは、意外だな、と思いました。僕はどちらかというと、サブカルチャー畑から勝手に生えてきたコント屋ですからね。そんな僕に声をかけてくれたことが、とても嬉しかったです。

まずは、会って話を聞かせてもらうことになりました。
木村昴さんが、僕のスタジオにやってきました。第一印象は「声がいい熊」。こんなこといいな、できたらいいな、という思いの丈を語ってくれました。彼が求めていたことは、僕の得意なことでした。だから、みんなみんなみんな叶えてあげたい、って思いました。

『 オムニバース 』の企画が決まってまもなくのこと。僕は、浅沼晋太郎さんと、こっそりこんな話をしました。
「昴は、旗揚げ公演のメンバーに、俺たちを選んでくれた。この先のきむすば劇場が超えられないくらいの、最高の旗揚げ公演になるようにがんばろう。これが、俺たちの裏テーマだね」
………なんて。

表現を仕事にして25年ちょい。脚本を書いて、稽古をして、劇場で上演する。このプロセスを数えきれないほど繰り返してきました。そんな中で、この『 オムニバース 』は「濃いぃ」かったです。稽古中、木村昴さんがクラフトコーラの原液をお裾分けしてくれたんですけど、それと同じくらい「濃いぃ」日々でした。お忙しいおふたりですので、限られたスケジュールの中で、薄い時間を過ごすわけにはいかないのです。( 僕のカンパニー『 シアター・コントロニカ 』の稽古には、わりと薄〜い時間があります )

上演期間中、僕は毎日劇場に通います。
本番前、前日の公演で気づいたことを、キャストとスタッフに伝えて、部分的にみんなで練習したりします。
衣装やメイクなど、本番に向けての準備が進む中、木村昴さんと浅沼晋太郎さんは、よく歌を唄っています。ある日、演出家の部屋の斜め前にあるお二人の楽屋から、『 ♪ We Are The World 』の大熱唱が聴こえてきました。発声練習にしては壮大すぎる気もしましたし、ちょっと「うるせえな」とも思いましたが、この二人がいれば地球は大丈夫だなと思いました。
本番。毎日毎日、客席からの笑い声と拍手を、浴びるだけ浴びるお二人。この幸せ者が。

そして迎えた、千秋楽。
いつも僕は本番を観ながら、ノートとペンを持って、気づいたことをメモしています。でも千秋楽の今日だけは、手ぶらで客席に座りました。ワクワクしました。舞台から目をそらさず、最後の『 オムニバース 』を思いっきり楽しみました。全15公演を積み重ねた『 オムニバース 』は、ピカピカに磨き上がっていました。
カーテンコールの、鳥肌が立つような大喝采。僕も手が痛くなるまで、出演者のお二人とスタッフの皆さんに拍手を送りました。

『 オムニバース 』は、これにて終了。僕は次の作品に向かいます。
一緒に頑張ってくれたスタッフの皆さん、お疲れ様でした。
昴、晋太、ありがとう。
突。

小林賢太郎



きむすば劇場 旗揚げ公演『 オムニバース 』
出演:木村昴 浅沼晋太郎
2023年10月25日(水)〜 11月5日(日)
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
配信チケット申込は11月5日(日)まで


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