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『 オムニバース 』 の現場から 〜 脚本編 〜 (無料記事)

きむすば劇場 旗揚げ公演『オムニバース』の、作・演出をつとめます、小林賢太郎ともうします。

この作品の脚本を書き始める前に、木村昴さんと浅沼晋太郎さん、お二人に僕のスタジオに来てもらい、じっくりヒアリングをしました。(一緒に餃子を食べつつ)
そういった場を設けたことで、お二人のパーソナルな魅力や、職業柄のエピソードなど、ストーリーづくりの材料を、たくさん集めることができました。
二人の話を聞けば聞くほど、僕は彼らのことを好きになりました。そして「この作品は面白くなる」って確信しました。台本執筆のクオリティは、出演者への興味と愛情に比例するからです。

構想は、テンポ良くまとまりました。
「声優の二人が、もしも声優以外の人生だったら。そんな並行世界を、オムニバスで描こう」

執筆期間中、浅沼晋太郎さんを誘って、マジックショーを観に行きました。彼と僕との共通点は、出身校だけではありません。ふたりとも、マジックが好きなんです。観に行ったのは、超一流のマジシャンのショーでした。マジックの技術が素晴らしかったのはもちろんですが、その所作や言葉づかい、そして、来ていたお客さんの品の良さ、その空間のすべてが美しくて、僕たちはすっかり楽しませてもらいました。
実は、浅沼晋太郎さんを誘ったのには狙いがありました。プライベートな時間を一緒に過ごすことで、彼の演技をしていないときの音域や抑揚を、あらためて耳に録音したかったんです。作戦はまんまと成功。ばっちり『オムニバース』の脚本執筆の参考になりました。

僕は『オムニバース』の脚本を順調に書き進めていったのですが、最後まで書き切る前に、いったん筆を止めて、木村昴さんに会いに行くことにしました。聞きたかったことがあったんです。
木村昴さんは、もう、これでもかっていうほど成功しています。声優としてはもちろん、TVタレントとして、俳優として、あるいはシンガーとして。そんなに忙しいのに、なんでわざわざ舞台などという大変なことをやるのだろう。これを知りたかったんです。
僕からの質問に彼は、子役時代の頃からの舞台経験の話をしてくれました。そして、
「今のお仕事は、どれもやりたいことですけど、舞台は帰ってくる場所なんですよ」
こんなふうに言ってくれました。
そのときに僕は、この『オムニバース』という作品のラストを、どうやって締めくくるか決めました。同じく舞台を愛する人間として「こうすれば彼の思いに応えられる」という角度が見えたんです。

こうして、台本が書き上がりました。
出来たてほやほやの台本を読んだ木村昴さんは、
「『オムニバース』すげえ! 早くお客さんに観せたい!」
って言ってくれました。とても嬉しかったです。僕も、同じ気持ちでした。




きむすば劇場 旗揚げ公演『 オムニバース 』
出演:木村昴 浅沼晋太郎
2023年10月25日(水)〜 11月5日(日)
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

配信チケットを、スタジオコンテナオンラインストアにて販売します。
申込期間: 2023年10月6日(金)~ 11月5日(日)


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