【26冊目】物理学とは何だろうか 上朝永振一郎著
【諸々】
・哲学から自然学が分化独立して物理学となり、そして呪術や魔法の要素が洗い落とされたのが現代の科学である。
・産業革命以降の科学の隆盛を見ていると、科学の発展によって技術が発展してきたのかと思っていたがそればかりではないらしい。
・物理学専攻の学部生向けの本のようだが、物理学を概観するにはそれ以外の人でも読みやすい(数式があるので多少の我慢は必要だが)と思う。
【気になったところ抜粋&感想("→"以降)】
①世界を奥の奥で統べているものは何かと問い、その秘密を知りたい、という人間の持って生まれた知的欲求のあわられが科学であり、人間存在に好都合であるように自然の事物を改変しようとするのがぎじゅつです。
②科学の歴史をたどってみると、事実は逆に、技術上の発明が科学の進展をうながした例が少なくないのです。たとえば望遠鏡の発明がよい例です。
③ワットの話がだいぶ長くなりましたが、それは、彼のやりかたが、それまでの発明家のやりかた、すなわち勘にたよる試行錯誤でなく、非常に理づめに事をはこんだという点を知っていただきたかったのです。
→蒸気機関の興りを発見したのはニューコメンとのことだが、それを産業革命として大きく普及させたのはジェームス・ワットとのこと。そのプロセスは確かに研究者のそれである。
④すぐれた数学者は必ずしもすぐれた物理学者とはいえない、ということが起こるのです。(数学者からいえばその逆も真だ、とおっしゃるでしょう。)数学化された理論の強みは疑えないことであると同時に、その数学化をなしとげるのは数学の腕のほかにいろいろな修練が必要だということを忘れてはなりません。生きいきとした描像を見出すということもその一つです。
⑤現在、科学と技術とがしばしば同一物だと考えられることの背景には、このような科学と技術間の距離の短縮があると思われます。そして二十世紀にあわられたこの新しい傾向は、良きにつけ悪しきにつけ、科学と技術の関係に新しい性格を浮かび上がらせたように思われます。
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