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【39冊目】徳川時代の宗教R.N.ベラー著池田昭訳

【諸々】

・翻訳が非常に上手なのかとても読みやすかった、がとても難解だった。

・ベラーが30歳のときのハーバードの博士論文。アメリカ人でありながら、日本社会をここまで概観できるものかと驚いた。

・数か月かけてじっくり読まないと理解できない箇所が多数あった。最初~P100くらいとP300~終わりにかけて、具体的事象よりは日本観を書いていて非常に面白かったが、数行理解するにも数分かかり、途中で断念。改めてきちんと読み返したい。

・本著は、宗教が資本主義の発展に果たしてきた役割を論じる書としては、「プロ倫」がプロテスタンティズムについて、本著は徳川時代の宗教(朱子学や儒教など)についてアメリカ人の観点から、「日本資本主義の精神」は封建主義?について日本人の観点から書かれた本として、3部作として理解したい。概念として、本著が飛びぬけて難しいように感じた。

【気になったところ抜粋&感想("→"以降)】

①P108 婦女子が、その服従的行為が示す以上に、実際には強い権力を行使していたこと、また時には彼女らは「玉座の陰の権力」をもっていたことは驚くにあたらないのである。

→同感だが、日本にどの程度滞在していたらそのような場面を見ることがあるのだろうか。また、このような面は、現代のような分かりやすさを求めるデジタル化の時代においては理解されないどころか批判の対象である。このような面がでてきたのは、本書解説でも述べられているように、宗教力と政治力を持っているものが異なるということに由来するのではないか。そのような形が変化しているこの時代は、日本人の宗教観が変化していると言ってもよいだろう。そのきっかけは天皇を現人神としたことにあるだろう。

②P195 義務を遂行するさいに行う勤勉は、それが武士の全存在をあらわすものとして非常に高く評価された。室鳩巣はいっている。

一日生きるならば、一日の義務を果たせし死なしめよ。一月生きるなら、一月の義務を果たせしめ死なしめよ。また、一年を生きるなら、一年の義務を果たせしめ死なしめよ。

→本書では、「仁」から生まれ様々な思想を経てこの思想が生まれたと述べる。確かにその通りだろう。5Pを割いて記述している思想の変遷を追っていくためにどれだけの系統的知識が必要なのかと思うが、そのように系統立った知識があって始めて気づくことだろう面白い視点である。

③P242 真宗は実際のところ日本では西欧のプロテスタンティズムに最も類似性をもっていて、その倫理が、プロテスタントの倫理に最もよく似ているからである。

→主に禁欲主義的な点に着目して本論が展開される。もし本論が正しいとするならば、宗教学の世界で、プロテスタンティズムと真宗の類似性、とくにその発生の背景にあるものについて調査することは、貨幣資本主義社会に生きる我々が生きるうえで、特に貨幣収入を得ている労働者にとって有用な調査分析となり得るのではないだろうか。そのような研究は、このような分野においては社会に対して比較的即効性のある研究となろう。

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