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【35冊目】物理学とは何だろうか 下巻朝永振一郎著

【諸々】

・上巻では物理学のなかでも目に見える力学の話であったが、下巻ではそれらに共通するものは分子のふるまいであるということ、そしてそのふるまいのいづれにも量子力学が共通しているとのことを示し、物理学とは何かを比較的わかりやすく概観している。

・それだけではなく、それら物理学の発展というものが、現象の観察→一般化→理論の構築→数学的理論の構築、となされていくが、数学的な解を得るのが難しい問題(未解決問題と言われるようなもの?)が出てくる。それを解決するための方法として、近年では物理学に統計学の考え方が用いられるようになってきたとのこと。広範な事象を証明するための数学を解くのではなく、まずは閉じた集団での数学を解くことで開いた集団での数学を解くことに繋がる。

・上記のような、物理学やそれを支える各学問分野についての興隆や立ち位置を認識しておく、ということが物理学者にとってはとても重要なことではないかと感じる。まあ物理学者に限ったことではないが。

・一種の論文を読んでいるような感じで、「P〇〇に記載した通り、」と伏線?が回収されるところが他の著者とは異なっていて面白い。最後の方は病床で書かれた文章であり、物理学者としての晩年に書かれた本ということもあろうが、何を書くべきかということを非常に考えて書いたのだろうというのが伝わってくる。

・ゲーテの著書を頻繁に引用している。曖昧なものを一般化するのが科学だが、曖昧なものを表現するのが文学であり、その曖昧さを排除されることに対する恐れや嫌悪をゲーテはうまく表現しているとのこと。

【気になったところ抜粋&感想("→"以降)】

①P132 閉じた集団の整合性がエルゴード定理により保証されるなら、開いた集団についても整合性が成立することは証明されているのです。そしてこの証明をもとにして、閉じていない分子集団の理論をくみ上げることもすでになされています。

→簡単に言うと、ある一つの事象を長時間観察したときに得られた原則は、他の場面でも同じであるとのこと(だと思う)。これは社会科学においても同様だと思うんだけどそういうことを言っているのではない?

②科学の進歩には2つの方法があるという記述

→1つは、物理学のように実験をして、それを観察することで一般的法則を発見する方法。2つ目は、地球物理学のように、実験をせずに事象をただ観察することで一般的法則を発見する方法。前者の方は、ほぼ全ての事象に共通するものは量子力学であることが分かってきた。前者の根本法則を量子力学が解明し、その発展に減速が感じられたとき、後者が発展してくるだろうとの認識を述べてあった。

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