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♨️タイルの話♨️


銭湯における建材の主役といえば「タイル」
「タイル」の産地といえば「笠原、多治見、美濃」


岐阜は日本で一番のタイル生産地です。2016年に建築家、藤森照信さん設計によるモザイクアートミュージアムがオープンして注目されたこのエリアは、古くから美濃焼など焼物で知られ、多くの主要国内タイルメーカーが周辺に集まっています。

さて実は今、日本のタイル業界は苦境に立たされています。製品チェックで現地を訪れると「タイル産業の今後は厳しい」という話をよく耳にします。日本のタイル生産高のピークは1990年ころ。それ以降減少を続けているそうで、その理由は下記のように考えられます。

1)新建材の開発…ガラスや金属パネル式の建材が広く開発され、簡易施工化、軽量化された建材が人気となった。(反面タイルは工程が多く、手間ががかかり、重いので採用されにくくなっている)
2)原材料の枯渇…地域特有の良質な粘度が採掘されにくくなってきている。
3)輸入製品の人気…中国やイタリアからの輸入タイルの競争力が高い。

特にモザイクタイル絵の生産現場における現実は風前の灯。昭和の時代に内装材として使用されていた「流し台」や「風呂」が「システムキッチン」「ユニットバス」にとってかわってしまった、など需要が低下して生産量は激減。大型モザイクタイル絵となると(多くのタイルメーカーがカタログ掲載しているが、実際の製作は)ごく限られたメーカーしか対応できない状況となってしまっています。

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昭和の時代、モザイクタイルは日本人の生活の中でもっともっと身近なものでした。銭湯の大きなモザイクタイル絵だけではなく、流し台や手洗い器、風呂場はモザイクタイルが主役であったことが、タイルアートミュージアムの展示からも想像されます。あるタイルメーカー社長さんから「当時のタイル生産者はタイルの新しい意匠と可能性を求めて様々なデザイン、パターンの開発にかなり熱心だった。社員の皆んながデザイナーだった」と聞いたことがあります。そしてその記憶、記録をタイルミュージアムで垣間見ることができます。かわいいレトロタイルの数々に、訪れた人たちの多くが感動したことでしょう!

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合理性の高い建材や工法が採用されるのは時代の必然といえますが、今の新建材は概して無機的なイメージが強い。陶磁器タイルも勿論人工素材ですが、私にとってはより味わいのある建材に感じます。タイルはピースによって構成される建材だから、目地によって繋がっています。水を使わない乾式による建設工法がありがたがられ、シームレス(つなぎ目なし)がカッコイイとされる現代の建築界の逆を行く存在と言えるかもしれません。

しかし陶磁器タイルは、だからこその魅力がある素材。上記したタイルの施工性の問題は、そのままタイルの魅力を構成する要因となっています。手間がかかるとは人の手が多く入るということ。人手が積み重なって生まれる微妙な不均一さゆえの「ゆらぎ」が現れる素材。それは味わいを生みだす要素でもあります。上の画像はプレス成形のためのタイル金型ですが、これ自体が味わい深いですよね〜。

タイルのプレス成形についてのリンク

私はまたタイルと目地の関係も好きです。使う部位、機能、合わせるタイルの質感や表現したいイメージによって目地の色と素材を使いわけています。時には目地巾や目地深さも特別に設計指定します。目地次第でタイルの見え方は驚くほど変わります。そのようなタイルと目地の関係要素がさらなる「ゆらぎ」を空間にもたらします。シーム( 目地 )がタイルをシームレスに繋げ、シームレス的素材感覚も持ち合わせる…そんな魅力的な素材、陶磁器タイル。私にとって「懐かしくも新しい」インスピレーションを与えてくれる素材です。

 さて先日、タイルの本場、多治見市美濃焼タイル振興協議会が発行する、東京〜笠原情報誌『みのEDO』さんに、弊社のタイルデザインの取り組みを取材していただきました。


記事がアップされているのでタイルデザインに興味のある方は、ぜひご覧ください。アーカイブも充実しており、タイル好きの方にはたまらないコンテンツになってます。



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