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カフカの手紙を舞台化するにあたって

皆さんこんにちは、高島健一郎です。
こちらの記事にお越し頂きありがとうございます。

2024年10月21日(月)にすみだトリフォニーホール小ホールにて、カフカがウィーンにいる恋人へ宛てた手紙を元に脚本を書き、同時代にウィーンに生きたフーゴー・ヴォルフ、ロベルト・シュトルツ等の音楽と共に新たなスタイルのリーディングコンサートを上演する運びとなりました。
ピアニスト・藤川有樹さん、声優・狩野翔さんという素晴らしいアーティストのお二人と共演させて頂きます。

こちらの公演に興味を持って頂いた方が内容をイメージしやすいように、そして公演をより深く楽しんで頂くためにNoteに公演に向けた僕の想いを綴っていこうと思います。
第一回目の今回はなぜカフカという作家の手紙とヴォルフやシュトルツといった作曲家の音楽を組み合わせたコンサートを上演する事になったのか、お話ししていきます。

きっかけは四年ぶりにドイツで演じて歌う仕事が決まったため、ドイツ語のリハビリを主な目的としてドイツ文学を原語で読んでみようと思ったことがはじまりでした。
トーマス・マンの「トニオ・クレーガー」、「魔の山」、その後カフカの「変身」、「断食芸人」、「判決」、「最初の苦悩」、「城」等を読みました。
途中からはそれぞれの作品の内容に熱中してしまい、もっぱら日本語訳で読んでいましたが、その後なんの気なしにカフカが恋人に宛てた手紙をドイツ語で読んでみたところ、これを日本語で朗読しながら同時代の音楽を組み合わせたコンサートが出来たら面白い、と思いはじめました。

ちょうどその頃、自分の人生において何か新しいことに挑戦するべきタイミングだと思っていたときで、最初は上演するかどうかは別にしてドイツ語の勉強も兼ねてカフカの手紙を日本語に訳しながらストーリーを構成していきました。

今の僕の主な活動は、ウィーンやドイツで得た経験を日本でのコンサートやSNSでアウトプットしていくというものです。
そういった活動を通して僕はいつも、ただコンサートで歌うだけではなく何かもっとその音楽が生まれた時代の空気感や世界観をクリエイティブな形で伝えられる方法はないだろうかと考えていました。

リサイタルのような僕の歌に焦点を当てたコンサートはまた違った趣旨があるので良いのですが、それとは別に何か既存の曲や舞台作品だけではなく新しいものを生み出したいという欲求が少しずつ強くなっていました。

もう一つ大きな理由があり、なぜ今この現代においてクラシック音楽を演奏するのか、という事を演奏家は常に考えるべきだと思っていて、既存の作品をただ上手に演奏する事を目的にするのではなく、現代を生きる僕らがそれらの作品の魅力を新しい方法で表現する努力をしていかないと、大切な作品がいずれ時代の波に飲まれ忘れ去られてしまうという危機感があります。

僕が心から愛し、専門的に勉強し経験を積んだオペレッタも、本場のドイツ語圏ですら、ずいぶん前からOperette ist tot(オペレッタは死んだ)と言われるほど人気がなくなっています。
世界で最も規模の大きなオペレッタの祭典であったメルビッシュ湖上音楽祭も、今ではミュージカルの音楽祭になりました。
かつてはオペレッタの殿堂と言われたウィーンのフォルクスオーパーも、オペレッタは集客が弱いため親子で鑑賞出来るミュージカルの上演が増えています。

こういった時代の流れの中で自分に出来ることに挑戦してみたいと思い、お世話になっているプロデューサーの方にこの企画を話してみたところ、面白そうだからやってみようと言って頂き実現する運びとなりました。

ロベルト・シュトルツの音楽はオペレッタやウィーン歌曲の華やかな美しさ、そしてフーゴー・ヴォルフの歌曲はシューベルトからシューマンの流れを汲むドイツリート特有の陰鬱な美しさがあります。
どちらも世紀末ウィーンが放つ死の香りを漂わせた光と影の美しさを持っていて、カフカの文章と組み合わせたときに特別な空間が生まれる予感がしています。

次回は僕が感じるカフカの文章の魅力を綴っていきます。
長くなりましたが最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


高島健一郎


【公演概要】

シン・リーディング・コンサート 「カフカの手紙 ~ウィーンの恋~」
高島健一郎(脚本・翻訳・歌) / 藤川有樹(ピアノ) / 狩野翔(リーディング・声優)

公演日 2024年10月21日 (月)
開場 / 開演 18:30 / 19:00

会場名 すみだトリフォニーホール小ホール
住所 〒130-0013 東京都墨田区錦糸1丁目2−3

席種 全席指定
料金 前売:¥6,200(税込) 当日:¥6,500(税込)

チケット受付URL
https://eplus.jp/kafka24/





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