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カフカの文章の魅力「夢の形式」

皆さんこんにちは、高島健一郎です。
10/21に上演されるシン・リーディング・コンサート「カフカの手紙~ウィーンの恋~」Note連載第二回目。
今回はカフカの文章の特徴としてよく挙げられる「夢の形式」について僕なりに綴っていきます。

「夢の形式」とはどうゆうことかというと、僕たちが眠っているときに見る夢には、現実ではあり得ない事が起きているのに、自分がその状況をすんなり受け入れていることがよくあります。

具体的な例を挙げると、知り合いではないはずの友人同士が仲良くしている夢。
最近知り合った友人と、古い友人が同じ場所にいて、なぜか昔からの友人同士のように話していて、明らかにおかしな状況なのに夢の中の自分はその状況をすんなり受け入れている。

こういった不思議な状況がカフカの小説の中ではよく起こります。
彼の最も有名な作品の「変身」では、ある朝起きたら主人公は虫になっているんですが、虫になった自分をわりとすんなり受け入れて、そのまま会社に行こうとします。

…これ、実際ではあり得ないですよね(笑)
朝起きて虫になっていたら会社に行くどころではないし、パニックでしばらく現実を受け入れられないと思います。
でもこれがもし仮に眠っている間に見た夢だとすると、わりとあっさり受け入れるかもしれません。場合によっては出かけようとするかもしれません。

変身の主人公は家族を養うために会社に行く事が重要な義務であるという潜在意識があるため、虫になっているにもかかわらず会社へ行こうとします。
夢だとこういった潜在意識に基づいた行動を取る事がよくあります。

ちょっと脱線しますが、僕が夢の中でたまにやる高等テクニックがあります。
「こうなったらいいな」という展開に夢を自分で進行していきます。

‥これ、出来る方いらっしゃいますか??
僕もいつも出来るわけじゃないんですが、たまに成功します。
例えば気になっている女の子とデートをしていて、会話も弾んで、雰囲気もすごく良くて、デート大成功!みたいな展開に「半分夢だと分かっていながら」自分で夢のストーリーを展開させていくんです。

多くの場合クライマックスになる前に完全に夢から覚めてしまって、「あー、もうちょっと夢の中にいたかった!」となるんですが(笑)

ちょっと脱線しましたが、カフカの文章も夢なのか現実なのかわからないような描写がよく出てきます。
そして、もし日常で起こったらものすごく驚くような状況でも、登場人物が「それは当然の事ですよ」というような反応をするので、だんだんと無機質な感じになって、読者が不思議な異世界の中へと入り込んで行きます。
これがカフカの文章の特徴として言われる「夢の形式」です。

この「夢の形式」の面白い点は、そんな夢の中にいるかのようなカフカの不思議な文章の中から、僕たちが何気なく過ごす日常の中で見落としてしまっている情景や、会話の中に隠された人間の無意識の意図や感情が見えてくるところです。

よくある自然現象や人間の会話の中に、カフカには見えている世界があって、その世界を文章で表現されると、僕らもどこか潜在意識のようなレベルで感じている事なので「わかる!」と共感してしまうんです。

カフカが恋人に宛てた「手紙」も、現実に目に見えている世界だけではなく、カフカには見えている世界によって文章が綴られています。

さて、今回は僕なりにカフカの文章の魅力の一つである「夢の形式」に関してお話させていただきました。
次回はもう一歩踏み込んで、カフカの作品の本質に迫ります。

カフカの作品がなぜ現代において多くの人の心を惹きつけるのか、それを知るには彼が生まれたオーストリア=ハンガリー帝国という特殊な場所と時代背景を紐解いていく必要があります。
次回はこのオーストリア=ハンガリー帝国に焦点を当てて、この時代のチェコ・プラハに、ドイツ語を話すユダヤ人として生きたカフカの人生を辿ります。

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


高島健一郎


【公演概要】

シン・リーディング・コンサート 「カフカの手紙 ~ウィーンの恋~」
高島健一郎(脚本・翻訳・歌) / 藤川有樹(ピアノ) / 狩野翔(リーディング・声優)

公演日 2024年10月21日 (月)
開場 / 開演 18:30 / 19:00

会場名 すみだトリフォニーホール小ホール
住所 〒130-0013 東京都墨田区錦糸1丁目2−3

席種 全席指定
料金 前売:¥6,200(税込) 当日:¥6,500(税込)

チケット受付URL
https://eplus.jp/kafka24/

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