コーディネーショントレーニングの効果イメージ

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表やスポーツ推進審議会委員、長野県のクラブのアドバイザーなどをしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。総合型地域スポーツクラブのキャリア10年目に入ってます。

 今日は、『コーディネーショントレーニングの効果イメージ』というテーマでお話したいと思います。僕は総合型地域スポーツクラブのキャリア1年目の時にコーディネーショントレーニング(コオーディネーショントレーニング)に出会い、凄く感銘を受けてすぐに勉強をして指導者資格を取り、総合型地域スポーツクラブのコンテンツに取り入れてきました。でもコーディネーショントレーニングには”効果が分かりにくい”という側面があり、特に保護者の納得を得るのが難しいというのを実感してきました。今日はそんな課題を少しでもクリアする為に、一般の人にも分かりやすいイメージを作りに行くお話をしたいと思います。


コーディネーショントレーニングって?

 まず、一応基本的なコーディネーショントレーニングについて簡単に説明しておきます。コーディネーショントレーニングとはコーディネーション能力を伸ばす為のトレーニングのことです。そして、『コーディネーション能力』についてGoogleのAIに説明をさせると、以下のようになります。

コーディネーション能力とは、状況に合わせて体の動きや力の加減を調整する能力です。運動神経や運動能力とも言えます。
コーディネーション能力は、教科書的には以下の7つの能力に分けられています。
定位能力、変換能力、連結能力、反応能力、識別能力、リズム能力、バランス能力。
コーディネーション能力は、乳幼児期から12歳くらいまでに最も成長が期待できます。のりもの遊びは子どもの興味を誘い、コーディネーション能力を高めるのに効果的です。
コーディネーション能力の例としては、次のようなものがあります。
球技で、ボールを操りながら、敵の位置、味方の位置を素早く把握し、先を予測しながら、正確にパスを出す、パスを受ける
サッカーで「相手のボールを奪うこと」が目的だとしたら、それに合わせて、相手との位置関係や空間、スピードを認知し、相手の動きに対して自分の動きを変化させて目的を達成する
コーディネーション能力は、約40年前に旧東ドイツのスポーツ運動学者が考え出した理論です。

Google

 Google先生の説明でほとんど大丈夫なのですが、一つ、僕がしたいイメージの話をするには大事な要素が抜けています。それは、『コーディネーション能力とは脳神経系に依存するもの』ということです。体を動かす為の指令の神経伝達物質を脳が出して、それが体中の神経を通って動かしたい筋肉を動かす。その脳神経系を鍛えるのがコーディネーショントレーニングなんですね。これが非常に重要です。


体の中に神経の”道”を張り巡らせる

 さて、ここから自分の体にたくさんの”道”があることをイメージしてください。僕たちが体を動かそうとする時、脳みそがまず筋肉に伝えたい”指令書”を作ります。そしてそれを”伝達隊”に託します。脳みそから指令を託された”伝達隊”は、その”道”を通って動かしたい筋肉まで走っていきます。基本的に何らかの動きをする時には順番に、あるいは同時的に、複数の筋肉を動かすことになりますから、”伝達隊”はいくつもの筋肉に指令を伝えなければなりません。あっちに行き、こっちに行き。そういうことが体内でめちゃくちゃ高速で起きていることをイメージしてください。

 いわゆる、「運動神経がいい」と言われる人は、この伝達が速い人だと思ってください。きっともっともっと複雑な話ではあるのですが、今日はあくまでもイメージを作ることを優先します。”運動神経がいい人”は、脳みそを出発した”伝達隊”が筋肉に指令を伝えるのが速い人です。

 では、なぜ”伝達隊”が到達する速さに差ができるのか、ということですよね。それは、要因は2つあります。

 1つ目は、”道”を通る速さ。正確には、”道”が分断されている部分を”伝達隊”はジャンプしなければいけないのですが、そのジャンプする速さに差がでます。ここは、たくさんジャンプをすればするほど速くなることが分かっています。ジャンプするというイメージが入ると理解がまた難しくなり過ぎるので、今日はもう忘れましょう。”伝達隊”が同じ道を何度も通ると、その道が広くなり、キレイに整備され、速く走れるようになるとイメージして差し支えないと思います。

 2つ目は、近道をするのか、遠回りをするのか、という違いです。運動神経が良い人の体にはたくさんの”道”があり、”伝達隊”が最短距離を行くことができるから速いのですが、運動神経が悪い人は、そもそも”道”がなかったり、あっても遠回りをしないと行けないような”道”しかなかったりして、遅くなってしまうんですね。あるいは、そもそも”伝達隊”が本来到達したい筋肉に着くことができず、代わりに違う筋肉に伝達して別の動きで代替しようとしたりします。

 コーディネーショントレーニングでやろうとしていることは、この”道”をできるだけたくさん作る作業です。”道”をたくさん作っておいて、あらゆる筋肉に、速く脳からの指令を伝達する。そういうことなんですね。”道”がたくさんあれば近道を選びたい放題になるよね、ということなんです。


新しい”道”が作れるのは子どもの時期だけ

 さて、ここでスキャモンの成長曲線のグラフを出しておきましょう。

 これは人体の各器官の発育が完了するまでを表したグラフですが、神経系型に注目してください。今日で言うところの”道”がこれにあたります。他の器官よりも低年齢で急速に発育し、10代半ばには発育を完了していることが分かりますよね。これは、今回の”道”でイメージすると、私たちの体の中の”道”は、10代半ばまでに完成してしまい、増設工事は受け付けません、という状態になるということです。残酷なことに、なんと僕たちの体は、20代に入るともう新しい”道”を作ることはできないんです。それどころか、ほぼ小学生くらいまでに”道”を作っておかなければ、中学・高校生ですら新しい”道”を作るのはかなり難しくなるということなんですね。何歳でも成長できると僕たちは色々な意味で言いますが、こと神経系について言えば、10代で成長は終わり、なんです。これが事実です。

 ただ、僕たちが生涯に渡って使う”道”を、10代に全て作って置けなんて、ちょっと難しいですよね。スポーツについてだけ考えれば、将来サッカーをやるのか、バスケをやるのか、テニスをやるのかなんて、分からないわけじゃないですか。いくら子供の頃に「プロのサッカー選手になるんだ!」と言っていても、中学生や高校生になって種目を変える人なんてたくさんいます。その時に、慌てて”バスケに必要な道”を作ろうとしても、実は結構手遅れで、それまでに作っておいた”道”を何とか使って体を動かすということになります。たまに、特定のスポーツはめちゃくちゃ上手なのに他のスポーツは全然できないという人がいますが、恐らく高確率で子どもの頃に一つの種目だけをやり、しかも特定のプレーを集中的に練習していた人だと思います。特定の”道”は広くてキレイですが、他の”道”が全然作られていないというパターンです。広くてキレイな”道”だけを使って生きていければハッピーですが、他の目的地へ行きたくなった時のリスクが大きいんですね。

 こう考えると、とにかく子供の時期にたくさんの”道”を作っておいた方がいいということが分かると思います。”道”さえ作っておけば、後から使えるんです。もちろん、使わない”道”はやがて老衰と共に閉じられていくことにはなりますが、最初から作っていない”道”が後から作られることはないのですから、これはもう、なるべく子どもの時期に”道”を作っておいた方が絶対にいいと、僕は考えています。だからコーディネーショントレーニングなんです。長い人生の中で選べるスポーツの選択肢が、格段に広がります。


選択できる”道”は多い方がいいに決まっている

 ちょっとここで私の話をさせてください。まず私は、親のおかげで運動能力が結構高い人間に育つことができました。うちはたぶん結構な放任主義の家で、僕はとにかく自由に過ごしていました。(※それなりに強制や禁止もあったと記憶しているから、極端な放任ではない) たくさん外遊びをして、たくさん家でテレビゲームをして、たくさん勉強をしました。自由遊び以外でやったスポーツとしては、剣道・野球・水泳(※これは泳げなかったから)・テニス。このあたりが10代半ばまでにやったスポーツです。自由遊びを入れれば無数のスポーツをやったと思います。それこそ、今ではパルクールなんてカッコいい名前が付けられていますが、塀や屋根まで登ってしまうような鬼ごっこは僕たちにとっては日常でした。(※1983年生まれ。東京都三鷹市育ち。本当はやっちゃダメだけど、昔はそれを何となく禁止しつつも許容してくれる社会の土壌・雰囲気があった気がします)

 そんなわけで僕は物心ついた時にはすでに自分に運動に関する有能感がありましたし、それは今でも続いています。だからこそ今でも新しいスポーツにチャレンジして、指導までしようと思えます。
 実は先日、うちのバドミントンのチーフコーチに言われた言葉があって、それがコーディネーション能力を言い得ているなと思いました。

「上杉さんは、既に”点”がいっぱい打ってある。だから経験がないものでも、すぐに点と点を結んで動きを作れる」

 実はこの感覚は自分でも持っています。はじめてやるスポーツでも、まったくどうやったらいいか分からないということは、それほどないんです。感覚的な話にはなってしまいますが、たぶんこんな感じでやればいいんだろうというのが割とすぐに分かります。(※もちろん全部じゃない) コーチは”点”と表現しましたが、これが今日僕が言っている”道”と同じであることは疑う余地がありません。これが、自分の中にたくさんの”道”を作っておくことのメリットです。行ったことがない目的地でも、”道”さえ作っておけば、「あぁ、今まで行ったことはなかったけど、あそこね。じゃあこの”道”使えばいいね。なんだ、近所じゃん」となるということです。「えぇ~!嘘~!そんなとこ行ったことな~い!どうすればいいのぉ~」とはなりません。”道”さえたくさん作っておけば。そしてそれができるのが子どもの内だけ、なんです。”道”を整備するのは大人になってからもできますが、新しく作るのは子どもの内だけなんです。


とにかく色々なことをすればいい

 肝心なのは、その”道”の作り方ですよね。僕はここはかなり楽観的に考えています。ただただ色々なことをすればいいんです。僕は何もスポーツばかりをやっていた人間ではありません。先ほども書きましたが、テレビゲームだってたくさんやったし、勉強もしていました。そして僕はそれすらも結果的に、コーディネーション能力の向上に役立ったと思っています。それに昔は今ほど習い事みたいなものが充実していませんでしたし、専業主婦がいる家庭も多かったし、子ども達が外で自由に遊ぶ文化がありました。僕はいわゆる習い事みたいなものを週1以上にやったことがありませんでした。剣道をやっていた時も週1。野球も週1でした。さすがに中学・高校の部活動は毎日レベルであったし、自主的に朝練をしたりもしてどっぷりやっていましたが、小学生まではほとんどが自由時間でした。その自由時間の中で僕はコーディネーション能力を獲得していったと思います。そんな僕だから、コーディネーション能力の獲得に本当は特別なことは必要ないことを知っています。だから難しいことを考えるよりも、とにかく楽しいと思えて、自分からやりたいと思えることを色々やればいいと思っているんです。だから僕がやっているコーディネーショントレーニングでは、毎回違うことをやるし、子ども達が面白がるものを優先させます。面白いと思う経験だけをさせて、あとは自由時間に自分で考えてやって欲しいというのが僕の願いであり、理想です。みんなもっと、自由を大切にして欲しい。自由が人を成長させる。僕はそう信じています。少なくともコーディネーショント能力を向上させるのに、○○をしなければならない、ということは絶対にないです。とにかく色々やればいい。でも大人が無理矢理やらせてはダメ。それは脳みそが喜ばないから。脳みそを喜ばせるという発想も、脳神経系を考える時には重要だと僕は思っています。


総合型地域スポーツクラブはおススメ

 最後にちょっと宣伝っぽくなってしまいますがご容赦ください(笑)
 子どもの時期にコーディネーション能力を伸ばそうとした時に、本当は自由遊びの中で獲得していけるのが理想だと僕は思いますが、なかなかそうできないのが今の社会の姿ですよね。それは実際に僕が親としても感じるところです。

 だから、今は習い事がたくさんあって、複数やっている子どもも本当に多いです。昔では想像できないくらいに、複数のスポーツをやるのが当たり前になってきています。総合型地域スポーツクラブの場合、複数をやるというのがクラブ内でできる点がメリットです。僕がやっている『ふじみスポーツクラブ』は、バドミントン、テニス、バスケットボール、バルシューレ、かけっこ、ストレッチ、ヨガ、コーディネーショントレーニングなどの種目が選べます。どうせ複数やるのであれば、手続きや一貫指導のような観点で、いくつものクラブや教室をまたぐよりも良いでしょう。あとは選びたい種目があるかどうかの問題です。
 とはいえ、時間や金銭的な制約もありますから、コーディネーショントレーニング自体をコンテンツとすることも僕はやっています。それこそ小学生くらいだと、特定の種目だけをガッツリやる気にはなれない子も多いですから、一つの場で色々なスポーツができるというのは一定の人には価値になっています。


 というわけで今日は、『コーディネーショントレーニングの効果イメージ』というテーマでお話しました。もし今日のお話で、コーディネーショントレーニングやりたいなと思った家庭があれば、ぜひご自身の地域の総合型地域スポーツクラブを調べてみてください。大体無料で体験ができると思いますから、全ての種目を一通り試してみるというのもいいと思います!でも絶対に楽しいこととしてやってくださいね!脳が委縮しては脳神経系は上手に育たないと思いますから!

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5