年会費は実は会員のメリットの為にある。

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をしたり、スポーツ推進審議会委員をやったりしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。この季節は本当にメンタル注意!(※出会いと別れに振り回され過ぎない!)
 今日は、『年会費について改めて考える』というテーマでお話したいと思います。多くの総合型地域スポーツクラブで取り入れられている年会費という会費システム。1年間クラブに所属する権利のようなものにかかる費用が年会費ですが、これがあると誰にとって、何がいいのか。これを改めて考えていきたいと思います。


 なるべく具体的に話をしていかないと意味がないと思うので、現在僕が代表を務めているふじみスポーツクラブを例にお話します。設立してまだまだ3年の若いクラブです。

 ふじみスポーツクラブを設立して1年目の時には、年会費の設定はありませんでした。月会費(いわゆる月謝)と保険料のみをいただいて、何とか運営をしていたという感じです。あえて年会費を設定しなかった理由は、はっきり言って「どれだけ安定的に活動ができるか分からなかったから」です。移住者がゼロから立ち上げたクラブで、会場の確保なども探り探り。行政もいきなり支援をするつもりがないということが分かった時点で、ふじみスポーツクラブはかなり不安定な状態でのスタートとなりました。年会費というのは何かの対価を得る為の費用ではない(※ただただ所属する為の費用)からこそ、安定的な活動がちゃんとないと取ってはいけない会費だと僕は思っています。また、年会費が入会のハードルになってしまう側面はどうしてもあるので、1年目はそこをできるだけ低くしてクラブの認知を獲りたかった。それが年会費を設定しなかった理由でした。

 年会費を設定したのは2年目からです。一人4,000円の年会費をいただくようにしました。これは3月末までクラブに所属することができる費用としての会費で、翌4月にはまた年会費がかかる仕組みとなっています。これを導入した理由は、『コストの回収』が主な理由でした。
 1年目はとにかくお金がありませんでしたから、とにかくコストをかけずに運営を行いました。それこそ用具を持って色々な会場を移動するのがこの仕事なのですが、移動にはできるだけ自転車を使っていましたが、段々と持ち運ぶ用具が多くなってくるとそれは不可能となり、自家用車を使うようになりました。我が家に自家用車は1台しかありませんから、子どもが2人いる家庭の車を仕事で使われてしまうと困るのは家族ですから、このやり方はずっと続けられるものではなかったでしょう。2年目からは軽の箱バンをリースで調達して使っています。1年目にはなかったコストですね。
 会費の回収にも1年目はお金をかけていませんでした。全て、会費袋に現金を入れて現場に持って来てもらうというやり方でやっていました。これは本当はすぐにやめたかったやり方です。現場でのお金のやり取りは、僕が最もやりたくない作業の一つ。みんながスケジュールを守って、現場に来る時間も守って持って来てくれればいいのですが、みんなが同じ日に持ってくるわけではないから毎回のようにお金を受け取ってチェックする作業が発生してしまうし、遅刻とかがあると、もう受け渡しもままなりません。現場にマネジャーがいるならまだしも、コーチ一人で現場を回してもらわなければならない現状では、このやり方も持続可能性が高いとは到底思えませんでした。「お金が入った封筒がない!」などといった事故も絶対におきますしね。僕たちが使っているのは色々な人で使う公共施設ですから、そういった事故のリスクも格段に上がります。これをふじみスポーツクラブは、アプリでクリアしました。それがSgrumですね。Sgrumというアプリを使って、会員にはクレジット決裁またはコンビニ払いで会費を支払ってもらうようにしました。クラブは請求を出せばあとはSgrumが回収してクラブの口座にまとめて振り込んでくれるのを待つだけ。(※たまに滞納している人に連絡するけど、遅れている人レベルにはSgrumから自動でアラートを出してくれる) このアプリの利用料や会費の集金にかかる決済手数料がコストとしては生じることになり、それらを回収する為に導入したのが年会費なんですね。僕としては、むやみやたらにコストアップをさせたわけではなく、「このやり方はずっとは絶対にできない」と判断したものにコストをかけて運営の改善を行ったつもりです。

 さて、コストの回収としての年会費という立ち位置だけだったら、実は他の手段で収入を上げれば事足りるという考え方もできます。例えば、月会費の値上げですね。実はこっちの方が会員としてもスッキリするだろうなというのは、何となく僕が総合型地域スポーツクラブのキャリア10年間で感じてきたことです。年会費って、今回このように取り上げているくらいに、普通の人からしたら、「何なの?そのお金」という感じだと思うので(;^_^A 月会費や月謝だったら、何に支払っているか分かりますよね。目の前のコーチへの報酬だったり、道具代だったり、会場代だったり。簡単に想像がつきます。ところが年会費はよく分からない。説明されても、それが目の前にあるわけではないから、うまく頭に入ってこない。それが年会費だと思います。(※悲しいかな)

 月会費や月謝、参加費よりも年会費でコストを回収した方がいいメリットが一つだけ明確にあります。それは、『消費税』です。これもほとんどの人は分からないと思いますが、月会費や月謝、参加費は、その活動に参加して指導を受けたり、用具や会場を使って自分がメリットを得る為に支払われる、つまり対価のある費用として、消費税の課税対象となります。つまりクラブは、月会費や月謝、参加費によって得た収入の10%を消費税として国に納税しなければならないということです。(※消費税は消費者が払うお金ではなく、事業者が国に払う税金なのです。それを消費者から事業者が代金の一部として回収するかどうかは、実は業者次第なんです) 一方の年会費は、先ほど説明した通り、対価のない会費なので、消費税の課税対象になりません。例えば100万円を月会費で得るとクラブには消費税として新たに10万円のコストが課されることになり、またこのコストをどう回収するかという問題が生じるわけですね。結局はこのコストアップも見越した会費設定(値上げなど)をしたり、どこかのコストを削ったりと、会員にもデメリットが生じる可能性があるんです。一方、年会費で100万円を得ても、消費税というコストはゼロです。(※ちなみにふじみスポーツクラブは、まだ年間課税売上が1000万円を超えていない非課税事業者なので、月会費に消費税は含めていませんし、消費税の納税もしていません。1年後、2年後の話ですね。)


 さて、仮に今のふじみスポーツクラブで年会費をゼロにして、その全てを月会費や参加費に転嫁した場合にどういう会費設定になるかをざっくりとシミュレーションしてみましょう。

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

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