総合型地域スポーツクラブの魅力
一般社団法人たかぎスポーツクラブのマネジメントをしています、上杉です。
今回はシンプルに、最近私が新たに発見した「総合型地域スポーツクラブの魅力」について、皆さんに共有させていただきます。
3つの特性
ズバリ言ってしまいますが、私が今のところ気付いている総合型地域スポーツクラブの魅力は、以下の3つに集約されると思っています。
1.多様性
2.主体性
3.流動性
「多様性」と「主体性」は、たぶん教科書などでも一般的に言われていることだと思いますが、最後の「流動性」は、少なくとも私は総合型地域スポーツクラブ関連の本では見たことがなかったと思います。
そして6年目にして気づけたのには訳があって、「流動性」は「多様性」と「主体性」があってこそ生まれるものだからです。
やっと私たちのクラブでも、多様性と主体性がある程度実現されてきたということなのだと思います。
ひとまず、これらの特性を一つ一つ確認してみたいと思います。
「多様性」
総合型地域スポーツクラブの定義としても使われるのが、この「多様性」だと思います。
主な中身は、「多世代」「多種目」「多志向(多目的)」です。
「多世代」は、同じ年代の人ばかりのクラブではなく、色々な年代の人が活動しているクラブということです。
「多種目」は、例えば『サッカークラブ』というように一つの種目だけやるクラブではなく、サッカーもあればテニスもあって、陸上競技もあるというように、色々な種目があるクラブということ。
「多志向」は、競技志向や娯楽志向、健康志向などのように、色々な志向や目的で活動しているクラブということです。
これらの「多様性」がなぜ魅力的なのかというと、まず選べるメニューが多いということです。
選択肢の多さは、ほぼイコール豊かさだと思っているので、たくさんの種目や志向から自分に合った活動を選べるのは、シンプルに魅力といっていいと思います。
ただ、「多世代」については注意が必要で、「多世代」というのがそれ自体が魅力になるかというと、そうとは言えないというのが正直なところです。
「多世代」が魅力になるのは、「何歳になっても続けられる」か、「親子や三世代で一緒に活動できる」がある場合だと思うからです。
例えば、ここに多世代を実現しているこんなクラブがあるとしましょう。
こんな素晴らしい分布のクラブがあれば、まさに多世代型といえますね。
しかしその内情を詳しく見てみて、こうなっていたらどうでしょう。
年代でやってる種目がバラバラです。
そうなると、やりたい種目を生涯に渡ってそのクラブでやれるわけではありません。
また、たまたま親がバレーボールが好きで、子どもがサッカー好きとかなら、親子で同じクラブでの活動を楽しむということはできるかもしれませんが、それもなかなかの奇跡でしょう。
逆に、最初のグラフの会員分布が、全てサッカーの会員だとしたら?
一つの種目しかないことになりますが、子どもからお年寄りまでがサッカーをプレーしていることになり、つまりは、ずっとサッカーを続けていける環境がそのクラブにはあるということになり、さらには親子でのプレーなどの可能性もかなり高く、これは素晴らしい魅力といえます。
このように、「多世代」そのものが魅力ということにはならず、「多世代だからこそ実現できる何か」が魅力となります。
「主体性」
主体性とは、自らがやりたくてやっているかということだと捉えています。
総合型地域スポーツクラブの主体を考えると、大きく2つに分けられるかと思います。
一つは、会員主体。
これは、クラブの構成員である会員が意思決定の権利を持ち、やりたいことを実現していくクラブの形です。
会員がやりたいことをやっているクラブということですね。
もう一つは、事業主体。
これは株式会社のフィットネスクラブが分かりやすいと思うのですが、経営の意思決定は株主が行い、クラブの利用会員は何も決められません。せいぜいが、会員満足アンケートに答えて、その声を聞いてもらうくらいです。つまり、企業などの事業体がやりたいこと(例えば儲けたいとか)をやり、会員はお客さんとしてそのサービスを買うようなクラブです。
会員は、クラブ活動を気軽に楽しめる一方、クラブの方向性や内容を決めることはできません。
私は総合型地域スポーツクラブは、基本的には会員(住民)主体の方がいいと思っています。
会員主体は、自分達で考え、自分達で決め、自分達で動きます。
これは飲食で例えるなら『バーベキュー型』といえます。
一方の事業主体は、自分達はサービスを買うお客さんです。これは『レストラン型』です。
たまたま素晴らしい腕前の料理人がいて、市場的にも経営が成り立つ環境にある地域はレストラン型でもいいでしょう。
しかし地域によってはレストランのクオリティを生み出せないうえに、お客さんのパイ自体も少ないというところもあるでしょう。そういうところではそもそもレストラン型の経営は難しくて、誰もやりません。
ところがバーベキュー型なら、集まった人数で、好みの具材を焼いて自分達で食べればいいので、誰でもできます。面倒なだけです。
ただ、面倒な分、達成感や充実感は得られますし、自分で作った感があれば、クオリティの低さは感動で覆せます。
(焦げたソーセージさえも美味いのがバーベキュー)
これが私が会員主体(バーベキュー型)を推奨する理由です。
人口が少ない地方のクラブは、ここを目指さざるを得ない場合も多いのではないでしょうか。
「流動性」
最後に「流動性」です。
流動性の高いクラブでは何が動くかというと、「ヒト」「モノ」「カネ」です。
「ヒト」は主に、会員とコーチが流動します。
多様性と主体性の高いクラブでは、会員はやりたいことを豊富なメニューから選んだり、新しく生み出したりしていくので、同じところに留まりません。
レベルが上がって競技クラスへ行ったり、やりたいことが変わって他の種目へ移ったりします。
複数の種目をやる会員も増えてきます。
会員があちこちに流れるんです。留まらない。
さらに、コーチも留まりません。
陸上のコーチがテニスの選手達に走り方の指導をしたり、テニスのコーチが幼児向けにコーディネーションの指導をしたり、コーチにとっても対象者や種目がたくさんあるので、一つのことに留まりません。
プレイヤーが複数やってよければ、コーチだって複数種目のコーチやってもいいはずですからね!
すると他種目の価値観やノウハウ、用具の活用方法なども同時にクラブ内を流動することになります。
これが「モノ」の流動です。
実際に他種目の用具を使えるということもありますし、複数種目やっている会員の情報(技術レベルや性格など)もコーチ間で共有できます。
目に見える「モノ」と、目に見えない「モノ」が「ヒト」と一緒に流動する感じです。
「カネ」については、特定の種目に予算を貼り付けるのではなく、ある程度柔軟に動かすことで、一時的に赤字になった種目を、その時に好調な経営状況にある種目が助けることができます。
単一種目のクラブなら潰れるところが、総合型地域スポーツクラブの流動性があれば、それを回避できるんです。
仕組み的なところでいえば、サッカーで入って、テニスに移る場合、総合型地域スポーツクラブなら既に支払った入会金や会費を振り替えることができるので、「カネ」の流れを作ることで「ヒト」も流れやすくなります。
(これがそれぞれのクラブへの入会・退会という手続きとなれば、入会金や会費がそれぞれに必要になったり、手間や気を使うこともあるでしょう。)
つまり、「やりたいことをやる」という主体性を、この流動性が後押しできることになり、「色々できる」という多様性も強化されていきます。
多様性・主体性が強化されると、当然さらに流動性も高まり、素晴らしい好循環がクラブに生まれるはずです。
「多様性」・「主体性」・「流動性」の高いクラブ
ここまで来ると、指導者がプレイヤーを奪い合う姿などはなく、他種目をリスペクトする姿勢が染みつき、さらにクラブ経営も安定していくと思います。
なぜなら、クラブをやめる可能性がかなり低くなるからです。
ある種目をやめても、「じゃあ次はどこに“移ろうかな”」、あるいは「どんな活動を作ろうかな」となり、クラブ自体の退会にならなくなっていくはずだからです。
クラブの持続可能性が高まれば、基盤や組織文化が健全に育成されていき、ますます幸福度の高いクラブライフが実現されることでしょう!
と、私は信じて理想のクラブ像を描いています。
総合型地域スポーツクラブが目指すのは、こんなクラブなのではないでしょうか。
総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5